著者
北村 次男 中川 史子 堀内 成人 清永 伍市 乾 久朗
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.628-633, 1970-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1

46才の男. 33才ころより発熱,右下肋痛,黄疸の典型的な胆石発作をくり返えし,内科的な治療により一時軽快していた.約2年前より発作が頻発するようになつた.腹腔鏡と肝生検で肝硬変を発見,炎症症状も残存するためゾンデ療法を主とした内科的治療を行なつたが軽快しなかつた.食餌脂肪源としてトリオクタノインを33%に含有する粉末(以下MCT末と略)を1日120G与えたところ,体重が46.5kgから4カ月目には53.5kgと著明に増加した.胆石発作も3力月間は全く発生せず,その後1カ月に1~3回の発作が見られたが, MCT末投与前に比してその頻度は少なかつた.血清アルカリフォスファターゼ値もMCT末投与7カ月目から正常範囲になつた.この時点で再度腹腔鏡検査を行なつたところ肝硬変は前回とほゞ変らず,同時に行なつた直接胆のう造影により総胆管結石を確認し,その摘出に成功した.
著者
佐々木 陽 堀内 成人 長谷川 恭一 上原 ます子
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.833-839, 1985-07-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

糖尿病患者の予後と発症年齢との関係, とくに最近における若年発症糖尿病患者の予後を明らかにする目的で次の検討を行った. 対象は当センターの登録糖尿病患者1,900名で平均追跡期間7.9年, 35歳未満発症の1型糖尿病12名を除き, 全例が2型糖尿病であった.1) 平均年間死亡率 (1,000対) は対象者全員では男30.79, 女20.10で発症年齢が進むほど高くなるが, 35歳未満発症群では35-44歳群よりむしろ高い値を示した. これに対して, O/E比は全体では1.71で糖尿病患者では有意の過剰死亡を示すが, 発症年齢が若くなるほどO/E比は高くなり, 35歳未満発症群では男4.17, 女9.32に達した.2) 初診時における各種因の分布を発症年齢別にみると, 35歳未満発症群では空腹時血糖値が高く, インスリン治療のものが多い. また, 尿蛋白陽性率も35-44歳発症群よりも高率となっている.3) 発症年齢45歳未満を一括すると腎疾患による死亡が最も多く, 心疾患, 悪性新生物, 肝硬変がこれに次ぎ, 65歳以上発症群とは著しく異なる分布がみられた。また, 腎疾患のO/E比は45歳未満発症群では41.67に達し, 他の年齢群を大きく上回った.以上, 若年発症糖尿病患者は同年代の府民一般に比して死亡リスクが筈しく高く, また腎疾患による死亡がとくに多いなどの特徴がみられた.
著者
佐々木 陽 鈴木 隆一郎 堀内 成人 松宮 和人 荒尾 雅代
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.610-616, 1977-09-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
17

Prediabetesへのアプローチの一方法として, 3歳3ヵ月で発病した小児糖尿病の血縁者で, 祖父母の同胞およびその子孫までに至る61名中55名の検査を行い, その糖代謝およびIRI反応について検討した.1) 糖代謝異常は55名中14名 (25.5%) にみられ著しく高率であった.これを患児の4親等以内の血縁者 (Group I) と5親等以上のもの (Group II) の別にみると, Group Iにやや頻度が高く, とくに0~19歳の若年層で7名中2名に糖代謝異常がみられた.平均血糖値は0~19歳の年齢層を除いて, 両Group間にとくに差はみられなかった.2) 糖代謝の正常な35名についてIRI反応を両Groupで比較すると, 患児と血縁関係の近いGroup Iでは血縁関係の遠いGroup IIに比しIRI反応が低く, またすでに報告したインスリン分泌の指標, IRI面積/血糖面積比も低下する傾向のあることが認められた.以上の結果, 糖尿病患児の糖代謝正常な近親者でもIRI反応が低下しており, prediabetesにおけるインスリン分泌の減退が示唆された.