著者
菊地 勝弘 堀江 成人 播磨屋 敏生 近野 好文
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.125-139, 1988
被引用文献数
11

一般に北海道における年平均降雨量や年間の大雨日数は、本州方面に比較して少ない。しかし、北海道胆振支庁管内のオロフレ山系南東斜面では、4月から10月までの7ケ月間の平均降雨量は2,000mm近くにも達し、日降雨量90mm以上の大雨の日も年間4~51回発生し、しばしば災害をもたらし、大雨地域として知られている。近野&bull;菊地(1981)による観測から、この地域の大雨は、その最大降雨量の位置から、山岳型、海岸型、平野型、北西斜面型、その他の5つに分類される。これらのことを更に詳細に調らべるために、この地域にAMeDASその他7ケ所の雨量計に更に独自に16ケ所の雨量計のメソスケールネットワークを設け、1980、81年の2年間、6月から10月にかけて集中観測を行った。雨量計の間隔は約5kmであった。<br>山岳型降雨の場合に限ってみると、最大降雨量は、オロフレ峠(海抜930m)と、白老の滝(海抜380m)付近に現われた。海抜高度が付近の山々に比べて、比較的低い白老の滝付近に最大降雨量が現われる原因を、地形を考慮して考察した。その結果、この斜面の南東側の太平洋からの暖湿気の南東風による移流では、比較的弱い降雨が緩斜面や平坦部で観測されるが、急斜面になる山岳部では強い降雨が観測された。このことから、海岸部から山岳部にいたる沢の形状が水平収束による降雨の増幅をうながしていることが推定された。<br>これらのことを確かめるために数値実験を行った。その結果、単なる上昇流だけでは観測値に達しなかった降雨量は、水平収束の効果を加えることによって、観測値とよい一致を示した。また、山岳部の降雨強度、風速、上層の雲からの降水強度の関係が議論された。その結果、上層の雲からの降水強度が強いほど、また風速が強いほど山岳部の降雨強度が強かった。これらの結果を、数値実験と比較した。山岳部の計算による降雨強度は、上層の雲からの降水強度と風速によって増加した。したがって、もし上層の雲からの降水強度と地上での風速が、かなり正確に得られれば、オロフレ山系南東斜面での山岳部の降雨強度を推定できることが示唆された。
著者
八嶋 建明 堀江 成 斎藤 純子 原 伸宜
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1977, no.1, pp.77-81, 1977
被引用文献数
12

複合金属酸化物を触媒に用いて,シクロヘキサノンオキシムから気相接触転位反応により.ε-カプロラクタムを合成する方法を研究した。各種の複合金属酸化物触媒を検討した結果,シリカーアルミナに担持した亜鉛一タングステン,ビスマスータソグステンの組み合わせが有効であることを見いだした。両触媒の最適調製条件を検討した結果,亜鉛一タソグステンでは,亜鉛対タングステンの原子比が1:2,担体1gあたり全量で1.5mg-atomの金属を担持させ,これを空気中800℃で2時間ずつ焼成したときに最大活性を示し,一方ビスマスータングステンでは,ビスマスとタングステンの原子比が2:1・焼成温座ば700℃のときに最大活性を示した。最適反応条件は・両触媒とも反応温度325℃・W7F3009.hr/molで,ε-カプロラクタムの最大収率は亜鉛-タングステン触媒で87%ピスマスータングステソ触媒で82%であった。