著者
堀江 義則 海老沼 浩利 金井 隆典
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.9, pp.1630-1640, 2015-09-05 (Released:2015-09-05)
参考文献数
60
被引用文献数
5

本邦におけるアルコール性肝硬変(Al-LC)の全国調査では,近年はアルコール消費量は漸減しているにもかかわらず,Al-LCの肝硬変の成因に占める割合は急速に増加している.糖尿病(DM),高齢,女性はAl-LCの危険因子であり,DM,年齢,男性はAl-LCからの肝発癌の危険因子と考えられる.重症アルコール性肝炎(AH)は禁酒後も肝腫大が持続する病態で,消化管出血,腎不全などの合併症をともなう予後不良な疾患である.重症AHの死亡率は52%と高いが,中等度AHにおいても死亡率は15%あり,早期からの治療介入が必要である.アルコール健康障害対策基本法に基づいた社会全体での飲酒量低減の取り組みが必要である.
著者
堀江 義則 菊池 真大 海老沼 浩利 志波 俊輔 谷木 信仁 褚 柏松 中本 伸宏 金井 隆典
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.538-547, 2016-10-20 (Released:2016-11-04)
参考文献数
28
被引用文献数
2 2

本邦のアルコール総消費量は近年大きな変化はなく,欧米と同等の高い水準で推移している.今回,肝細胞癌(HCC)発症における飲酒の影響について検討した.全国の1496施設に対し,2014年度に診断・治療されたHCC患者についてアンケート調査を行った.7047例のHCC患者の成因は,HBV 13.9%,HCV 54.7%,HBV+HCV 3.6%,アルコール単独によるもの(ALD-HCC)13.9%,非アルコール性脂肪性肝疾患関連4.6%,その他9.5%で,2009年度と比較してALD-HCCの割合が増加傾向にあった.背景因子が確認された333例の初回診断ALD-HCCでは,平均年齢は69.8歳,男性が94%,糖尿病有病率50%,肝硬変合併率85%であった.AFP低値例が多く,66歳以上で肝硬変がない例とChild-PughスコアAの割合が多かった.肝予備能が保たれたまま長期に飲酒し,高齢になって肝発癌が増えたことが予測される.ALD-HCCへの対策としては早期介入による飲酒量の低減が根本的な課題ではあるが,画像診断等により早期にHCCを診断し,治療に結び付けることも今後の課題である.
著者
石井 裕正 横山 裕一 堀江 義則
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.7, pp.877-887, 2000-07-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
61
被引用文献数
1

わが国のアルコール飲料の消費量は依然として増加傾向を示しており,それにともないアルコール性肝障害も日常臨床上,ウイルス性肝障害に次いで重要な疾患として位置付けられる.本稿ではアルコール性肝障害の発症機序に関する最近の知見を,特にアルコール代謝との関係から論じ,さらにアルコールによる肝細胞死を特にアポトーシスの立場から考察を加える.また最近行われた全国規模の調査から疫学的にみたアルコール性肝障害の実態についても言及したい.