- 著者
-
横山 裕一
- 出版者
- 新潟大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2010
軽度認知障害(mild cognitive impairment : MCI)は、その14%が1年で、40%が4年で認知症へ転換するといわれ、その予後の違いを予測する因子を明らかにすることが重要である。本研究は、認知障害の時間的推移と、認知症転換への予測因子を総合的に解析し、最終的には認知症への転換を予測するニューラルネットワークモデルを構築することを目的とした。レビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies : DLB)では早期から自律神経機能の障害が出現することが先行研究で報告されており、心臓交感神経機能を評価する目的で使用されているMIBG心筋シンチグラムを用いた先行研究では、DLBの病早期からMIBGの心筋への集積低下がみられることが報告されている。このため、心臓交感神経機能の障害はMCIからDLBへの転換を予測する因子となり得る。しかしながらMIBG心筋シンチグラムは国内では保険適応外であり、検査が非常に高額であるためスクリーニングとしては適さないのが現状である。その代替法を考案するため、心臓交感神経賦活と前頭葉ヘモグロビン濃度変化の関連について、近赤外線スペクトロスコピィNIRO200(Hamamatsu Photonics K.K., Japan)と心臓交感神経機能を反映すると考えられる心拍計R-R間隔変動の最大エントロピー法によるリアルタイム解析(MemCalc/Tarawa, GMS)を用い、健常対照群と患者群における比較研究を行い、その結果を第32回日本生物学的精神学会において発表した。結果としては残念ながら上記代替となる十分な指標は得られず、研究法の改善を今後の課題とした。研究者は、平成23年4月から更に研究を推進するべく大学院へ進学することとなり、本研究費を得る資格を失うこととなったが、今後も認知障害の研究に取り組んでいく所存である。