著者
堂囿 俊彦
出版者
東京都立大学哲学会
雑誌
哲学誌 (ISSN:02895056)
巻号頁・発行日
no.56, pp.1-24, 2014-03-25
被引用文献数
1
著者
堂囿 俊彦
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.55-63, 2018-08-01

<p> 「福祉」 (welfare) の概念は、生命をめぐる問いに対して一定の方向を指し示す、生命倫理学の基礎概念で ある。しかし福祉概念に関しては、①誰の福祉を保障するべきなのか、②どのようにすれば保障したことになるのか、いずれの問いについても充分に論じられてきたとは言えない。そこで本論文では、これら二つの問いを、福祉の根底にある「人間の尊厳」との関わりにもとづき検討した。具体的にとりあげたのは、マーサ・ヌスバウムと、その批判者であるエヴァ・フェダー・キテイの尊厳論である。考察の結果われわれは、二人の尊厳論を相補的にとらえる必要があるという結論に至った。尊厳を内在的価値と見なす点において、ヌスバウムの立場は支持される。しかし尊厳に関しては、ケイパビリティだけで捉えられるのではなく、ケアという関わりを通じて、個別的に判断される必要がある。その意味で、ケアと尊厳のつながりを重視するキテイの立場も、重要な洞察を含んでいる。</p>
著者
堂囿 俊彦
出版者
東京都立大学哲学会
雑誌
哲学誌 (ISSN:02895056)
巻号頁・発行日
no.60, pp.35-61, 2018-03-25
著者
堂囿 俊彦
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.30-38, 2008-09-21 (Released:2017-04-27)
参考文献数
30

平成19年3月23日に出された最高裁判決において、代理懐胎契約によってもうけた子と依頼女性の嫡出関係は認められなかった。しかしそこでは同時に、今後立法に向けた取組が必要であることも述べられていた。従来からわが国では、「人間の尊厳」にもとづき代理懐胎を禁止する立場が示されてきたものの、人間の尊厳の一部をなす公序良俗を検討することによって、こうした立場が説得力をもたず、恣意的な人権の制約につながりうることが明らかになった。今後、生産的な議論を積み重ねていくためには、「人間の尊厳」という言葉を用いることなく、代理懐胎を依頼するカップルや引き受ける女性の基本権を比較衡量すること、そうした基本権を解釈すること、権利の枠組みでは語ることが困難な生命や身体の価値を基本権によるスクリーニングにかけることが必要である。そして、「人間の尊厳」という言葉を今後適切な形で用いるためには、以上のような考察の「結果」にその使用場面を限定していくべきである。
著者
堂囿 俊彦
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.55-63, 2017 (Released:2018-08-01)
参考文献数
14

「福祉」 (welfare) の概念は、生命をめぐる問いに対して一定の方向を指し示す、生命倫理学の基礎概念で ある。しかし福祉概念に関しては、①誰の福祉を保障するべきなのか、②どのようにすれば保障したことになるのか、いずれの問いについても充分に論じられてきたとは言えない。そこで本論文では、これら二つの問いを、福祉の根底にある「人間の尊厳」との関わりにもとづき検討した。具体的にとりあげたのは、マーサ・ヌスバウムと、その批判者であるエヴァ・フェダー・キテイの尊厳論である。考察の結果われわれは、二人の尊厳論を相補的にとらえる必要があるという結論に至った。尊厳を内在的価値と見なす点において、ヌスバウムの立場は支持される。しかし尊厳に関しては、ケイパビリティだけで捉えられるのではなく、ケアという関わりを通じて、個別的に判断される必要がある。その意味で、ケアと尊厳のつながりを重視するキテイの立場も、重要な洞察を含んでいる。