著者
堤 涼介 代田 悠一郎 宇川 義一
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.227-233, 2012-08-01 (Released:2014-08-30)
参考文献数
57

経頭蓋磁気刺激法における2つのコイルを用いたpaired pulse stimulationの例として, 大脳半球間抑制 (interhemispheric inhibition: IHI) と小脳抑制 (cerebellar inhibition: CBI) について概説する。IHIは左右のM1にコイルをおき, 片側からの条件刺激を対側からの試験刺激より6 ms以上先行させる条件で刺激を行った場合のMEP振幅が, 試験刺激単独によるMEP振幅に比べ減少するもので, M1間の脳梁を介した抑制機能を評価することができる。CBIは小脳半球と対側M1にコイルをおき, 小脳刺激をM1刺激に5–8 ms先行させる条件で刺激を行った場合のMEP振幅が, M1刺激単独によるMEP振幅に比べ減少するもので, 小脳プルキンエ細胞から歯状核視床皮質路を通る小脳遠心路系の機能を評価することができる。これらの機能は運動制御に重要な役割を果たしており, 様々な神経疾患における病態生理の解明や臨床応用が期待される。
著者
代田 悠一郎 大友 亮 花島 律子 寺尾 安生 堤 涼介 辻 省次
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.356-359, 2012 (Released:2012-05-23)
参考文献数
16
被引用文献数
3 4

セフェピム塩酸塩(CFPM)投与後に意識障害・不随意運動・脳波異常を呈した腎不全症例2例を経験した.脳波検査において,症例1では3Hz程度,症例2では1~2Hz程度の全般性周期性放電ないし全般性律動性デルタ活動をみとめるものの簡単な従命が可能であり,臨床所見と脳波所見の解離がうたがわれた.CFPM中止により症状・脳波所見ともすみやかに改善し,明らかな後遺症も残さなかった.薬剤性の脳症では時に原因薬剤の同定や他の代謝性脳症との鑑別が困難であるが,CFPM投与により生じる意識障害においては脳波所見が原因薬剤の同定に有用である可能性が示唆された.