著者
場知賀 礼文
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.147-160,240, 1993-09-30 (Released:2009-11-11)
参考文献数
26

価値と価値志向にかかわる課題は社会学の研究において中心的な位置を占めるものとはいえないにしても、価値が社会学における研究として重要な要素の一つであることは一般的に認められている。本稿では、価値が個人的、社会的に価値志向として重要な意義を有するものであると考える。まず個人的な価値志向に関する基本的な問題は、価値の内面化と統合化、及びこれらの過程に対する現代社会の影響に関してである。次に社会に関する問題は、社会意識の多様化を起す要因とは何か、社会の統合化の度合いとは何かについてである。社会的価値志向の多様化の主要な要因として、宗教あるいはイデオロギー、職業意識、現代文化の三つの要因を検討する。個人的な価値志向については、それが直接に社会的意識の影響を受けなければ、十全に個人の力だけによって形成されるものでもない。このように、価値志向に焦点を絞ることは、同時に個人的バイオグラフィと社会的・文化的現実、及び両者の関係に焦点を当てることである。
著者
水谷 幸正 藤堂 俊英 渡辺 千寿子 場知賀 礼文 藤本 浄彦 小西 輝夫 田宮 仁
出版者
佛教大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

医療技術の進歩と高齢化社会の到来によって、より問題化してきた終末看護に、仏教的叡智を体して対応しうる人材を養成することは、その原理的精神を継承する日本仏教の、またそれを教授指導する仏教系学府の今日的使命の一つであるといえる。そうした認識をふまえて本研究は三期七年にわたる「仏教とターミナル・ケアに関する研究」を先行する基礎的理論的研究とし、さらにその成果をもとに平成5年4月より本学専攻科内に本邦で最初の仏教看護コースを開設した。その就学者には看護僧をめざす僧尼ばかりでなく、第一線の看護、社会福祉、社会教育に携わる人々も含まれることになり、仏教精神を体した日本的ターミナルケアの本格的な稼働が如何に待望されているかを知らしめられることになった。今回の一期二年にわたる研究は当該コースにおける教授指導を通してターミナルケア従事者、特に仏教看護僧の養成に当っての教授法やカリキュラムについて多角的、また統合的な検討を加えて行った。その成果は順次、仏教看護コースの教授の中に活かされ、その充実に資するところとなった。仏教看護コースの修学年限は一ヶ年(二年まで可)であるが、欧米では定着している大学院レヴェルでの教育システムの中で専門家を養成して行くことで、日本におけるターミナルケア従事者の裾野を充実したものに広げて行くことが次の課題となった。またそうした構想の実現を通して、日本社会におけるターミナルケア従事者、仏教看護者の受け入れ体制も徐々に整って行くことであろう。尚、先行する「仏教とターミナルケアに関する研究」の三冊の報告書が新たな編集のもとに法蔵館(京都)より出版されることとなった。この公刊により日本におけるターミナルケアに対する理解が一層深まることを期待したい。