著者
東中 竜一郎 荒木 雅弘 塚原 裕史 水上 雅博
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.443-466, 2022 (Released:2022-06-15)
参考文献数
43

本稿では,雑談対話システムにおける対話破綻を生じさせる発話の類型を提案する.対話破綻の類型に関して先行研究では,「理論に基づいた類型」と「データに基づいた類型」が提案されてきた.前者は,依拠している人どうしの対話についての理論が,雑談対話システムの対話破綻現象を捉えるのに適さないことが多いという問題点がある.後者は,データを取得したシステムの対話破綻にしか対応できないという限界がある.本稿では,これら二つの類型の問題点をそれぞれが補い合う形で統合し,雑談対話システムにおける対話破綻を生じさせる発話の類型を新しく作成した.対話破綻類型アノテーション実験の結果,この統合的な類型は以前に提案された類型と比較して,Fleiss の κ 値において高い一致率を達成し,安定したアノテーションが行えることがわかった.
著者
東中 竜一郎 船越 孝太郎 荒木 雅弘 塚原 裕史 小林 優佳 水上 雅博
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.59-86, 2016-01-25 (Released:2016-04-25)
参考文献数
32
被引用文献数
6

対話システムが扱う対話は大きく課題指向対話と非課題指向対話(雑談対話)に分けられるが,近年Webからの自動知識獲得が可能になったことなどから,雑談対話への関心が高まってきている.課題指向対話におけるエラーに関しては一定量の先行研究が存在するが,雑談対話に関するエラーの研究はまだ少ない.対話システムがエラーを起こせば対話の破綻が起こり,ユーザが円滑に対話を継続することができなくなる.しかし複雑かつ多様な内部構造を持つ対話システムの内部で起きているエラーを直接分析することは容易ではない.そこで我々はまず,音声誤認識の影響を受けないテキストチャットにおける雑談対話の表層に注目し,破綻の類型化に取り組んだ.本論文では,雑談対話における破綻の類型化のために必要な人・機械間の雑談対話コーパスの構築について報告し,コーパスに含まれる破綻について分析・議論する.
著者
大田原 菜々 稲子 明里 塚原 裕史 小林 一郎
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.722-736, 2020-06-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
26
被引用文献数
1

近年,車の自動運転の実用化に向けた活動が急速に進展している.今後,自動運転車の操作を容易に行うために,自然言語による対話的な操作を可能にすることが必要であると考えられる.そこで,本研究では,自然言語で表現される駐車指示から空間的意味内容を抽出し,その空間的意味内容と,車に備え付けられたセンサーによって認識される実世界を対応付け(グラウンディング)ることで,駐車指示内容に含まれる行動や物体などを表す言葉と,実世界上での行動や物体を結びつける手法を提案する.本研究では,駐車指示から空間意味内容を抽出する手法と,得られた空間意味内容と環境表現の対応付けを行う手法の2つを考えている.空間意味内容の抽出には,制約を組み込んだ特別な組み合わせ範疇文法(CCG)により与えられる構文木を中間情報として用いている.この際,未知語が現れた場合はCRFにより推定を行う.また,得られた構文木をリランキングすることで,精度を改善している.この構文木を,特定の変換規則によりSpatial Description Clause(SDC)と呼ばれる木構造による階層的空間意味記述に変換する.我々はKollarらにより提案されたSDCを拡張し,新たなタイプを追加している.グラウンディングを行う手法では,グラウンディンググラフと言う確率的グラフィカルモデルを生成し,グラフ全体の確率を計算することにより,それぞれの言語に対応したグラウンディングを出力している.構文解析が成功した文に対するグラウンディングの精度は全体で79.2%となった.
著者
内海 慶 塚原 裕史 持橋 大地
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.3, pp.1-8, 2015-01-12

本論文では,教師なし学習による品詞を含めた形態素解析手法を提案する.従来の教師なし形態素解析手法では分かち書きのみを対象としており,品詞の推定は扱われてこなかった.本稿では,品詞遷移確率と単語の生起確率の事前分布に階層 Pitman-Yor 過程を用いた隠れセミマルコフモデルに基づく形態素解析手法を提案し,分かち書きとその潜在的な品詞を同時に学習する.これにより,単語分割自体の精度も向上することを日本語,中国語,およびタイ語での実験により確認した.
著者
内海慶 塚原裕史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.10, pp.1-9, 2013-09-05

本論文では,教師なし・半教師あり学習による形態素解析手法の提案を行う.従来の教師なし形態素解析手法では分かち書きのみを対象としており,品詞推定は扱っていなかった.我々は,この問題に対処するため,潜在クラスを導入した Semi-Markov CRF と NPYLM の協調学習を行った.新聞データ及びブログ記事を用いた実験によって,提案手法の有効性を評価した.