著者
植木 琢也 平岡 俊也 大澤 美代子 黒川 理加 塚本 佐保 辻 恵子 矢野 実穂 横島 由紀 萩原 章由 松葉 好子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11585, (Released:2019-09-25)
参考文献数
47

【目的】回復期リハビリテーション(以下,回リハ)病棟における脳卒中患者の身体活動量を生活活動度計により定量的に評価し,入院時と退院時における変化や自立歩行の可否による相違を明らかにすること。【方法】当院回リハ病棟に入院した脳卒中患者169 名を対象とした。対象に生活活動度計を連続24 時間装着し,回リハ病棟入院時および退院時における身体活動量(歩行・立位・車椅子駆動・座位・臥位の各時間)を測定した。24 時間,日中,理学療法中,作業療法中の各時間帯別に入院時と退院時の比較,歩行介助群と自立群との比較を行った。【結果】退院時,歩行や立位の時間が増加する一方,臥位の時間は減少した。歩行や立位の時間は介助群で短い傾向にあった。【結論】回リハ病棟入院中の脳卒中患者の身体活動量は入院時と比べ退院時には増加する。一方で歩行自立に至らない患者の立位歩行時間は相対的に短く,身体活動量の確保に向けた方策の検討が必要である。
著者
磯崎 美沙 塚本 佐保 廣田 亜美 村木 しおり 今井 丈
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100747, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】 バドミントン(以下、Bad)の動作時において、熟練者と非熟練者においてフォームに違いがみられた。また、動作後の筋疲労部位にも違いが観察された。そこで今回は、Badクリア動作時のスイングに着目し分析した。クリア動作(以下、CM)とは、相手コートの後方に大きく打ち出す際に、自陣コートの中後方に構え、ラケットをスイング(以下、SW)する一連の動作のことである。SW側の上肢では、肩関節は外旋位から内旋方向へ向かい、肘関節は完全伸展せず、前腕は回外位から回内方向への運動をともなう。今回、表面筋電計を用いてCM時のSWの上肢の筋活動を計測し、熟練度の違いによる、筋収縮の順番や順序について検討した。【方法】 対象者は、健常女性8名(熟練者4名,非熟練者4名)、平均年齢19.6±1.4歳、平均身長157.9±4.1cm、平均体重48.6±4.6kgで、熟練者はBad競技および指導を受けた経験が3年以上のものとした。測定方法は表面筋電計(Noraxon社製TELMYO G2)を使用し、ピュアスキンにて皮膚処理後、右上肢の上腕二頭筋(長頭)、腕橈骨筋、橈側手根伸筋、橈側手根屈筋の4部位に、ブルーセンサーまたはデュアル電極を貼り付け、サンプリング周波数1.500Hzにて記録した。課題動作は、Bad-CMを10回行い、測定と同時にビデオを同期させ、記録および動作の観察を実施した。データ抽出方法と統計処理は、記録した動作の中から一人の熟練者の視点にて、確実にSW動作を実施できているフォームを各被験者につき4動作を選択し分析の対象とした。その時の各筋の筋活動のピーク値を指標に、順番と順序を検討した。統計処理はSPSSver.18にて、カイ2乗検定とKendallの一致係数を用い、有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には研究の目的および内容を十分に説明し、事前に同意を得て実施した。【結果】 筋活動のピーク値の順番において、熟練者は1番目には橈側手根屈筋、4番目には橈側手根伸筋の活動が有意にみられた。非熟練者は1番目には上腕二頭筋の活動が有意にみられた。筋活動のピーク値の順序において、熟練者の筋活動では「橈側手根屈筋-腕橈骨筋-上腕二頭筋-橈側手根伸筋」という一定様式との関連が有意にみられた。【考察】 Bad-CM時のフォームの観察において、熟練者はラケットを把持するSW側と同側の脚を後方に移動させ、体幹の前額面をネットに対し垂直に向け、同時に肩関節外旋、前腕回外位にて動作を開始している。一方、非熟練者では、体幹の前額面をネットに対して平行に向け、肘関節屈曲、前腕回内にてラケットを前面に持つといった異なる構えから動作を開始していた。Bad-CM時の筋収縮の順番において、熟練者ではSW時の初期(1番目)に橈側手根屈筋を活動させることで手関節が橈屈し、その直後に前腕の回内運動をともないながら肘関節を伸展させていると考えられる。この際、上腕二頭筋と腕橈骨筋は遠心性収縮により肘関節伸展運動の減速作用を果たすと共に、それがほぼ同時に活動することで効率のよい筋活動が得られていることが予測される。そして動作の最後(4番目)に手関節の掌屈動作に対して、橈側手根伸筋が減速作用をしていると考えられる。非熟練者は、前述の構えから初めにラケットを持ち上げるため、上腕二頭筋の活動が1番目になったと考えられる。その後のSW動作において初期から前腕が回内位にあるため、肘関節伸展時の減速作用が腕橈骨筋に依存すると考えられる。また、動作の最後は熟練者と同様に手関節掌屈時に橈側手根伸筋による減速作用が必要となるが、初期に、すでに手関節掌屈位であるため腕橈骨筋の伸張による張力が増大し、非熟練者の多くでは腕橈骨筋のピーク値が動作開始時の肘関節伸展時ではなく終盤にみられる傾向にあり、運動後に腕橈骨筋の痛みが著明にみられたものもいた。筋収縮の順序においては、熟練者では「橈側手根屈筋-腕橈骨筋-上腕二頭筋-橈側手根伸筋」という一貫した様式が見られたことから、熟練者ではシャトルを打つSW動作が運動学習されており、各筋が運動連鎖として活動していると考えられる。これらのことより、Bad熟練者は技術を習得していく過程で、効率の良い筋収縮の順番や順序を学習していると考える。【理学療法学研究としての意義】 バドミントン・スイング時の上肢筋活動に熟練度により違いがみられた。このことは、スポーツ傷害との関連より、運動連鎖を考慮した指導や動作習得のためのポイントとなることが示唆された。