著者
増田 明美 塚本 康子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.607-615, 2007-01
被引用文献数
2

本研究は,中学校の思春期(12〜15歳)に不登校を経験した者と経験のない者のセルフエスティームについて,思春期(15〜18歳),青年期(19〜22歳),成人前期(23〜30歳)の発達段階別に検証することを目的とした。調査方法としてRosenbergのSelf-esteem尺度の日本語版を使用し,通信制高校生15〜30歳の未婚者703人(男339人,女364人)を解析対象とした。不登校経験者317人(男133人,女184人),不登校経験のない者386人(男206人,女180人)のセルフエスティームを検証した結果,以下のことが明らかになった。1)女子は男子に比べると,セルフエスティームが有意に低かった。2)不登校経験者と非不登校経験者のセルフエスティームを比べると女子の不登校経験者のほうが有意に低かった。男子では差がなかった。3)不登校経験者と非不登校経験者のセルフエスティームを発達段階別にみると,思春期の女子には差はなかったが,青年期,成人前期の女子では不登校経験者のほうが有意に低かった。男子では差がなかった。
著者
高島 葉子 塚本 康子 中島 通子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.26-38, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
21

目 的 本研究の目的は,助産事故により深刻な状況になりながらも助産師に対して信頼感を維持している女性の体験の語りから,どのような「分岐」や思いが存在したのか記述し,看護への示唆を得ることである。対象・方法 助産事故後も助産師と信頼関係を維持できていると認識している女性2名を対象としたライフストーリー研究である。データ収集は,助産所出産を希望した経過とともにどのような助産事故があり,その時の思いや考えを過去から現在に進むかたちで自由に語ってもらった。結 果 A氏は子どもに生命危機が生じた時,怖れと後遺症への不安につきまとわれ,混乱の中で周囲の言動から助産事故と認識し,助産師との向き合い方を探った。 しかし,自分が助産院を選択した責任と後悔で助産師だけを責めることはできなかった。そして,事故でのかかわりを通して助産師との関係が再構築される過程で,被害者・加害者という関係の終結と助産院再開を切望し,けじめとしての補償を求めた。A氏は助産事故により生命や健康の大切さを再確認するとともに,新しい生き方を見出していた。 B氏は助産師の態度から胎児が生きている可能性が少ないのではないかと察し,衝撃を受けつつ,同じ医療従事者として助産師を慮っていた。そして,決して逃げない姿勢の助産師を信頼しながら死産を委ねた。グリーフケアで子どもと十分なお別れができたことや,助産師との対話の積み重ねの中で,誰も責められないと心から思うことができた。喪失を乗り越え,新しい生命観と家族を得ていた。結 論 助産事故後も助産師との関係性を維持している女性は,一時的に助産師への信頼感は揺らぐものの,事故発生までに培われた関係性を基盤に誠意を尽くされたと感じることを契機として関係性を維持していた。看護者は,有害事象が発生した場合,信頼関係が崩壊し紛争へと「分岐」するプロセスを認識し,長期的で継続的な視野に立ったケアの提供に努めることが肝要である。
著者
杉本 海晴 監物 万里香 金子 佳世 塚本 康子
出版者
新潟医療福祉学会
雑誌
新潟医療福祉学会誌 (ISSN:13468774)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.56-59, 2018-03

本研究は、看護女子大学生4 年生に焦点を当て、1)「子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)接種」「子宮頸がん検診受診」の状況を明らかにし、2)「HPVワクチン接種決定者(自分/母親)」「HPVワクチン接種の有無」「子宮頸がん検診受診の有無」で、子宮頸がんに関する基礎知識の平均得点を比較し、検討することを目的とした。71名に質問紙を配布し69名から回答を得た。結果、HPVワクチンの接種率は73.9%、子宮頸がん検診受診率は17.4%であった。HPVワクチン接種年齢は15歳1名(2.0%)、16歳11名(21.6%)、17歳15名(29.4%)、18歳12名(23.5%)、19歳2名(3.9%)、20歳7名(13.7%)、不明3名(5.9%)であり、公的助成の対象でない年齢時や大学に入学してから接種をした学生もいることが明らかとなった。HPVワクチン接種済みの学生51名のうち、ワクチン接種を「母親」が決定した者は27名(52.9%)、「自分」で決定した者は23名(45.1%)、「不明」1名(2.0%)であった。ワクチン接種決定者が「自分」である場合、関連基礎知識の平均得点は3.39点と、「母親」がワクチン接種を決めた場合の平均得点2.48点に比べ、有意に高かった(p<0.05)。「自分」でワクチン接種を決定した場合は、「母親」による決定に比べ、基礎知識の保持状況が良好であったことは、本研究により得られた新たな知見である。子宮頸がんを自らの問題として捉え、必要な知識を所持し、自ら正しい予防行動を取れるよう、青年期からの啓発教育の必要性が確認された。