著者
塚田 三香子
出版者
秋田大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

我々は長期間食餌を制限したマウスにおいては、体温の日周変動が見られるようになり、夜間から明け方にかけて体温が37℃から室温(23℃)付近にまで下降し、次の夕方までに再び37℃付近に上昇するという、いわゆる日周性仮性冬眠(daily forpor)状態にあることを見出した。これは十分にカロリーを与えられているマウスには決して見られない事象であり、エネルギー制限という環境下で自発的に獲得された適応形質であると考えられる。この適応形態を考える上で、初めに注目されるのは、低体温における膜電位の脱分極化による細胞内へのCa^<2+>流入の毒性制御の問題である。この機序を考える一端として我々はエネルギー制限マウスと非制限マウスにおける数種の臓器中におけるCa^<2+>-ATPaseの活性を測定し、次の知見を得た。実験にはコントロールマウスとして95kcal/週、エネルギー制限マウスとして48kcal/週の食餌を与えているマウスを用いた。脳・唾液腺でのCa^<2+>-ATPase活性はコントロールマウスに比し有意に低い。一方、肝臓、脾臓、腎臓におけるCa^<2+>-ATPase活性はコントロールマウス、エネルギー制限マウス間で有意差はなかった。このことから低体温下での細胞内Ca^<2+>濃度ホスメスタシス維持のために、Ca^<2+>-ATPase活性の上昇という機序は採用されていないということが明らかにされ、Ca^<2+>の膜透過性の変化、細胞内器官へのCa^<2+>蓄積の変化に今後、着目すべきことが示唆された。
著者
塚田 三香子 畠山 幸子
出版者
聖霊女子短期大学
雑誌
聖霊女子短期大学紀要 (ISSN:0286844X)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.40-48, 2007-03-31

アルコールの過剰摂取は上部消化器系ガン、脳血管疾患などをはじめとする様々な疾患罹患へのリスクを上昇させることが知られている。秋田県はアルコール消費量の多い県であると同時に胃ガン、脳血管疾患による死亡率が高く、これらの間の関連が疑われる。アルコール摂取に関連のある遺伝的要因の1つとして、アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)活性の高低が関連することはよく知られている。今回、この酵素活性が秋田県に居住する女子学生の父親の飲酒頻度に与える影響について、他の地方の調査結果と比較することによって明らかにすることを試みた。その結果、以下の3点が得られた。1.ALDH2の活性を見るための試験である、アルコールパッチテスト、竹下らが開発した質問紙法(ALST)の正判定率について、遺伝子型を直接決定するPCR法と比較することにより求めたところ、どちらの方法も80%以上であり、2つの方法を併用すれば90%以上の正判定率が得られることが明らかとなった。2.秋田県在住の72人の女子について、PCR法を用いてALDH2^*1、ALDH2^<**>2の遺伝子頻度を求めたところ、各々0.83、0.17であり、原田によって東北地方のALDH2^*1の遺伝子頻度として求められた0.81に近い数字となった。これは他の地方と比較して高い数字であり、秋田県では3人に2人がALDH2活性者、1人が不活性者であることを意味する。3.秋田県在住女子学生68人の父親のALDH2活性をALSTから推定し、活性者、不活性者別に飲酒頻度を調べたところ、各々72.7%、45.8%であった。飲酒しない者は活性者6.8%、不活性者で20.8%であり、ALDH2活性が飲酒頻度に及ぼす影響は明らかであった。しかし、これらの値を他の地方と比較した場合、活性者、不活性者ともに、10%以上毎日飲酒する者の割合が高く、これら飲酒行動と疾患罹患の関わりが懸念された。