- 著者
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塩尻 かおり
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2006
本年度は長期に渡る米国滞在をし、様々な野外操作実験を実施し成果を出しただけでなく、所属するニューヨーク州立大学でのセミナー発表や研究者達と議論を交わし研究を進展させてきた。短期の帰国時には効率的に化学分析を行い結果をだし、また学会発表・アウトリーチ活動も行ってきている。研究成果においては、主に3つの成果を以下に記述する。1)植物間コミュニケーションにおける匂い物質が傷害後すぐにでるのではないことを野外実験によって明らかにしたことは、今後、どの揮発性成分が刺激物質なのかを明らかにする重要な手がかりとなり、来年度はその結果を基にした室内・野外実験、さらに植物生理学者と共同で研究を進める予定である。また、2)セージブラッシが自然界で、クローン繁殖していることを明らかにし、さらに、遺伝的分析と匂い化学分析を照らし合わせ、クローン間で匂いがほぼ同じである事実から、クローン間でより植物間コミュニケーションが行われていることを示唆したことは、植物間コミュニケーションの進化を考察するうえで重要となるであろう。3)植物コミュニケーションの研究の方法において、匂いをトラップしそれを移し変える簡易方法をあみ出した。具体的にはプラスチック袋を被せ、匂いをトラップし、それをチューブで吸出し、アッセイ用の袋に移し変えるといったものである。野外においてこの方法をもちいてアッセイをおこない、移し変えた匂いを受容した枝が誘導反応を起こすこと(コミュニケーションの現象)を実証した。これはこれからの植物コミュニケーションの研究において手軽さ、安価さの面から注目を浴びると考えられる。