著者
塩谷 友理子 我部山 キヨ子
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.299-306, 2017 (Released:2018-04-13)
参考文献数
16

目的:本研究は出産後1カ月までの母親と父親の抑うつ状態の変化とそれに影響する要因を検討した.方法:出産後の両親376組に,産後早期と産後1カ月時にアンケートを実施した.内容は基本属性,妊娠中の気分,出産満足度,育児不安の有無,抑うつ状態(Edinburgh Postnatal Depression Scale:EPDS)等である.EPDS 9点未満を「正常」群,EPDS 9点以上を「産後うつ病が疑われる」群として検討した.結果:回答は母親307名と父親218名から得られ,産後うつ病が疑われる群は母親では産後早期12.4%,産後1カ月時16.8%,父親では産後早期3.7%,産後1カ月時6.9%であった.また,母親・父親共に産後早期と産後1カ月のEPDS得点間に有意な中程度の正の相関(母ρ=.524 p<0.001,父ρ=.480 p<0.001)がみられた.母親においては,産後うつ病が疑われる群は正常群よりも,産後早期では「妊娠中の気分」において「不安定な時期があった」とする割合が高く,「出産満足度」でも「満足である」と感じている割合が有意に低率であった.産後1カ月では,産後うつ病が疑われる群は正常群よりも,「育児不安がある」「混合栄養」「経済的な不安がある」の割合が有意に高かった.一方,父親においても,産後1カ月では産後うつ病が疑われる群は正常群よりも「育児不安がある」の割合が有意に高かった.結論:父親・母親ともに産後早期と産後1カ月のEPDS得点には関連があることから,母親のみならず,母親をサポートする上で重要な存在となる父親に対しても産後早期からの精神的サポートの必要性が示唆された.