著者
藤田 大輔 我部山 キヨ子 田中 洋一 岡田 由香
出版者
大阪教育大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

H県N市における乳幼児健康診査対象児(4か月児・1歳6か月児・3歳児)の2164名の母親に、文書でインターネットを利用した育児支援コミュニティ開設の趣旨を説明し、同意の得られた対象に、「育児に関する調査」と題した質問紙調査を実施した。その結果、育児支援ネットコミュニティ参加申し込み者は276名で、その内訳は、乳幼児健診全対象者に対して、初産婦が25.7%、経産婦が17.3%と、初産婦で申し込み希望が多く関心が高かった。育児支援コミュニティの利用状況を示すホームページへのアクセスは、月平均約100件で、初産婦が66.2%で、経産婦が33.8%であった。月曜日と水曜日のアクセスが比較的多く、全体の約6割を占めていた。逆に土曜・日曜日は5%前後と少なかった。また、最も多い時間帯は、12時〜17時で35.2%であった。掲示板の書き込み内容は、子どもの病気や予防接種について、保育園入園の時期などが挙げられた。初産婦の質問に対し、経産婦が体験談を通してアドバイスをする傾向にあった。育児支援コミュニティの利用希望者の心理特性では、利用を希望しない者に比べ、手段的支援ネットワークが有意に低く、ストレス反応が有意に高い傾向であった。逆に、育児に対する否定的感情は低く、育児に関する情報や解決策入手の数は多い傾向が観察された。この傾向は、サイト開設後の調査においても変わらなかったが、特性的自己効力感と情緒的支援ネットワークは、サイト開設後の方が比較的高い傾向であった。以上より、手段的支援の認知が低く、ストレスが高い傾向で、育児情報を探索する傾向にある者が、育児支援サイトを利用する傾向が認められた。結果、育児支援サイトを利用することで、体験者の励ましや助言から、情緒的な支えを得ることで育児に自信をもって対処しようとする効果が期待されることが示唆された。
著者
岡本 留美 我部山 キヨ子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.194-202, 2015-11-02 (Released:2015-11-17)
参考文献数
28

目的:胎児異常の診断を受けた女性とそのパートナーの支援に関する文献を整理し,支援の方向性と今後の研究課題について示唆を得る.方法:PubMed, Web of Science, 医学中央雑誌を用いて“fetal abnormality (胎児異常)”“women(女性)”“partner(パートナー)”“nursing(看護)”をキーワードに2003年1月から2013年12月の期間に発表された文献を検索.胎児異常を診断された女性の体験や心理に関する研究とパートナーの体験を含む26文献(国内文献10件・海外文献16件)を分析対象とした.結果:妊娠期の女性に焦点を当てた研究がほとんどであった.女性とパートナーの心理特性では,診断時における悲嘆,不安,ショック,などの心理的反応に性別の違いはなく,夫婦間での一致の頻度は高かった.また,夫婦ともにネガティブな感情だけでなく,希望などのポジティブな感情もみられた.医療者には,胎児異常の診断時から正確な情報提供を行うことや共感的で継続的な支援が求められていた.結論:日本の研究は海外に比べ集積が少ない現状にあり,日本の社会文化的背景のなかでの検討が必要である.今後は,ケアシステム構築のため,パートナーも含めたケアニーズやケアの質評価に関する検討が必要である.女性とそのパートナーの支援を行う看護者への教育プログラムの必要性が示唆された.
著者
塩谷 友理子 我部山 キヨ子
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.299-306, 2017 (Released:2018-04-13)
参考文献数
16

目的:本研究は出産後1カ月までの母親と父親の抑うつ状態の変化とそれに影響する要因を検討した.方法:出産後の両親376組に,産後早期と産後1カ月時にアンケートを実施した.内容は基本属性,妊娠中の気分,出産満足度,育児不安の有無,抑うつ状態(Edinburgh Postnatal Depression Scale:EPDS)等である.EPDS 9点未満を「正常」群,EPDS 9点以上を「産後うつ病が疑われる」群として検討した.結果:回答は母親307名と父親218名から得られ,産後うつ病が疑われる群は母親では産後早期12.4%,産後1カ月時16.8%,父親では産後早期3.7%,産後1カ月時6.9%であった.また,母親・父親共に産後早期と産後1カ月のEPDS得点間に有意な中程度の正の相関(母ρ=.524 p<0.001,父ρ=.480 p<0.001)がみられた.母親においては,産後うつ病が疑われる群は正常群よりも,産後早期では「妊娠中の気分」において「不安定な時期があった」とする割合が高く,「出産満足度」でも「満足である」と感じている割合が有意に低率であった.産後1カ月では,産後うつ病が疑われる群は正常群よりも,「育児不安がある」「混合栄養」「経済的な不安がある」の割合が有意に高かった.一方,父親においても,産後1カ月では産後うつ病が疑われる群は正常群よりも「育児不安がある」の割合が有意に高かった.結論:父親・母親ともに産後早期と産後1カ月のEPDS得点には関連があることから,母親のみならず,母親をサポートする上で重要な存在となる父親に対しても産後早期からの精神的サポートの必要性が示唆された.
著者
姚 明希 我部山 キヨ子
出版者
京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻
雑誌
京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻紀要 : 健康科学 : health science (ISSN:18802826)
巻号頁・発行日
no.10, pp.1-7, 2015-03-31

Our study aims to highlight the influence and role of the traditional Japanese disposal of placenta (after birth) which is not in use anyone in the present day, by tracing the evolution of customs and sites related to placenta treatment in Japan. It will be useful for midwife activity in the future that this knowledge is understood in a wir cultural context.
著者
我部山 キヨ子 永山 くに子 坪田 明子
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

1.助産学担当教員198人に卒業時までに必要とする臨床経験回数と経験させたい技術を郵送による質問紙調査を行った。健康診査、助産技術、保健指導などの49項目のうち、経験必要と考える臨床技術で多かったのは、分娩監視装置の装着と判読、分娩経過中の産婦診察で、いずれの項目も、大学教員は他の教育機関の教員に比べると、有意に低率であった。また、7割以上の教員が経験させたい技術項目として挙げたのは、分娩時の酸素吸入、妊娠期の超音波診断、妊娠反応テストであった。2.助産師学生700人(有効回収率90.8%)に対して、卒業時の臨床技術経験の到達度調査を行った。全34項目の平均到達度は2.44で、時期別到達度の平均は分娩期が最も高く(2.60)、以下産褥期(2.47)、新生時期(2.42)、妊娠期(2.38)となった。全項目の平均到達度は専門学校が最も高く(2.55)、次いで専攻科(2.46)、大学(2.29)であった。学生による臨床技術到達度は、実習期間が長いほど到達度が高くなっており、実習時間数が短い大学教育への移行が進む昨今、助産教育における臨床実習のあり方を検討する必要性が示唆された。3.京都府内の産科を要する35施設300人(回収率84.7%)の助産師に対して、卒後教育に関する調査(調査内容:対象の属性、新人助産師の教育システム、施設における助産師の卒後教育とその内容など)を行った。年齢層は20歳代35.8%、30歳代29.9%であった。新人助産師の教育システムはプリセプター制度が最も多く、実践能力の査定時期は就職1年目が多かった。卒後教育上の問題としては、「時間がない」「受講料が自己負担」「助産師独自の内容が少ない」がほぼ半数を占めた。卒後教育の時期で最も重要な時期は1年目と2〜3年目で、卒後教育内容で最も求められているのは「産科救急」「新生児蘇生」「乳房管理」「異常周産期管理」「分娩診断」「分娩技術」でいずれも高次の知識・技術を要する内容であった。卒後教育では新人教育の重要性が指摘されており、卒前教育と卒後教育の連携に重要性が示唆された。
著者
我部山 キヨ子 岡島 文恵
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.198-206, 2010-04-01
参考文献数
12

医療の進歩および看護・助産の知識や技術の向上に対応し,今後の助産師の卒後教育のあり方を探る目的で,京都府下の産科関連30施設の勤務助産師254人を対象に,卒後教育が必要な理由,卒後教育の時期・内容・問題,助産師免許更新制度などについて自記式質問紙調査を実施し,以下の結果と示唆を得た。1. 99.2%の勤務助産師は,「自身の能力の維持・向上」「本や資料で得られない知識・技術を学ぶ」などの理由で卒後教育が必要と考えていた。教育内容では,70%以上の人が「産科救急」「乳房管理」「新生児蘇生」を重要と答えた。とくに全年代が重要としたのは「異常や救急」,20歳代では「診断や技術」,30歳代以上では「助産管理・医療安全教育・職業倫理」などであり,年齢層や経験に即した卒後教育が重要であることが示唆された。2. 卒後教育で重要な時期は「1年目」が最も多く,74%が3年以内と答えた。3. 卒後教育上の問題は,「時間がない」61.8%,「受講料が自己負担」45.7%であった。これらの結果から,重要と考える教育内容は年齢層で異なるため,助産師の経験や専門性を考慮した教育内容が重要であることが示唆された。また,助産師数は看護師数に比べると極めて少ないことから,「卒後教育のための時間確保」や「受講料の援助」などの卒後教育環境の整備も必要である。
著者
我部山 キヨ子
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.212-219, 2002
被引用文献数
1

本調査の目的は,産後2年間の自己概念の変化を調査し,出産・育児との関連性を分析することである.1.対象と方法:対象は京都及び大阪府にある総合病院3施設で出産した女性440人である.調査方法は,産後の4時期(出産直後・5日後・1ヵ月後・1〜2年後)に自己概念(RosenbergのSE, DreyerのISRO)と出産・育児因子を質問紙にて調べた.2.結果:1)有効回答195人(44.3%),平均年齢29.0±3.7歳,2)積極的・消極的自尊感情は,4時期ともに初産婦は経産婦よりも高値で,特に積極的自尊感情は全時期で有意に高値を示した.3)初産婦・経産婦ともに家庭内労働・育児やキャリアの葛藤・家庭外労働の3つの性役割は,1ヵ月後よりも1〜2年後に高値を示し,特に家庭外労働の性役割は有意に高値となった.4)不良な自尊感情に影響した出産因子は,出産が重い部(経産婦)と出産に不満部(初産婦)であった.良好な自尊感情に影響した育児因子は,育児が楽しい部と夫の育児参加部(経産婦)および育児の心配や不安がない群(初産・経産)であった.5)有職群は「育児・キャリアの葛藤」(初産・経産)と,「家庭外労働」(経産婦)の性役割が有意に高値で,非伝統的傾向を示した.経産婦の出産体験満足部は「家庭内労働」の得点が有意に低値,母乳育児群は「育児・キャリアの葛藤」の得点が有意に高かった.以上,自尊感情は出産の軽重・満足や育児態と,性役割は職業・出産の満足及び母乳育児と深く関連していることが示唆された.