著者
柳内 延也 塩谷 茂信 水野 雅之 鍋谷 浩志 中嶋 光敏
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.87-91, 2004-02-15
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

動物エキス中に存在するアンセリンとカルノシンをヒスチジン含有ジペプチド(HCDP)総量として測定する迅速・簡便な定量法について検討した.熱水抽出した各種動物エキス(牛肉,豚肉,鶏肉及びマグロ煮汁)をTSKG-2500PWXlカラムへ注入し,0.1%トリフルオロ酢酸含有45%アセトニトニトリルを溶媒として流速0.5mL/minで展開し,波長210nmの検出器で検出した.動物エキス中のアンセリンとカルノシンは同じ単一ピークとして溶出され,他の蛋白質,ペプチド及びアミノ酸と分離された.アンセリンとカルノシンで構成される単一ピークにはリジンとアルギニンが微量混在していたが,これらのアミノ酸は波長210nmに吸収を持たないものなので,アンセリン又はカルノシンと同一の溶出位置に検出されたピークはHCDPピークと見なすことが可能であった.本法ではアンセリンとカルノシンの個別定量は出来ないが,各種動物エキス中のHCDP含量を1検体あたりわずか30分で定量が可能であり,この測定値はアミノ酸自動分析計で測定されるアンセリン-カルノシンの合計値と良く一致する結果であった.
著者
柳内 延也 塩谷 茂信 水野 雅之 鍋谷 浩志 中嶋 光敏
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.238-246, 2004-05-15
被引用文献数
8 15

チキンエキスから得られる抗酸化性ジペプチドのアンセリン(Ans),カルノシン(Car)及びその混合体(AC mix)の抗酸化活性を調べるために,生体内で生成される3種類の活性酸素,次亜塩素酸(ClO⋅),水酸化(OH⋅)及び過酸化亜硝酸(NO<sub>3</sub>⋅)ラジカルを用いて,これらの活性酸素による蛋白質分解に対する分解阻止作用の点から試験し,ビタミンC(V.C),ビタミンE(V.E),還元型グルタチオン(GSH),エピガロカテキンガレート(EGCG)及びケルセチン(Qur)などの抗酸化剤と比較した.食品の抗酸化能測定法として一般に用いられるラジカル色素還元法(DPPH法)で比較すると,抗酸化活性の強さは植物由来の抗酸化剤,特にポリフェノール化合物が極めて高く測定され,AC mixの抗酸化活性はEGCGの1/6700,Qurの1/2500,そしてV.CとV.Eの1/1000に過ぎなかった.各種活性酸素による蛋白質分解反応の阻止作用で測定した抗酸化活性では,Ans,Car及びAC mixはGSHやV.Cと同様にClO⋅とONOO⋅に対して強い抗酸化活性を示し,OH⋅に対して弱い活性であった.一方,50μMのEGCGとQuer及びV.Eなどの脂溶性抗酸化剤はOH⋅に対し強い抗酸化作用を示したが,ClO⋅とONOO⋅に対しては強い抗酸化活性は示さなかった.V.CはAC mixやGSHと同様にOH⋅に対する抗酸化活性は弱いものであったが,ONOO⋅に対して最も強い抗酸化活性を示した.これらの結果から,抗酸化剤にはそれぞれ有効に作用する活性酸素種があり,生体のエネルギー代謝の過程で発生する活性酸素による生体成分の障害を防止するために適切な抗酸化剤の併用が重要であることが強く示唆された.