著者
千島 雄太 水野 雅之
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.228-241, 2015 (Released:2015-11-03)
参考文献数
36
被引用文献数
5 5

本研究の目的は, 大学入学前に持っていた複数の領域に渡る大学生活への期待と, 実際に経験した大学生活に関して探索的に把握し, 大学適応への影響について実証的に明らかにすることであった。文系学部の大学生84名を対象とした予備調査によって, 大学生活への期待と現実に関して探索的に検討し, それぞれ項目を作成した。続いて, 文系学部の新入生316名を対象とした本調査を行い, 探索的因子分析の結果, 大学生活への期待は, “時間的ゆとり”, “友人関係”, “行事”, “学業”の4つの領域が抽出された。対応のあるt検定の結果, 全ての領域において期待と現実のギャップが確認された。さらに, 大学環境への適応感とアパシー傾向を従属変数とした階層的重回帰分析を行った。その結果, “時間的ゆとり”と“友人関係”において, 期待と現実の交互作用が認められ, いずれにおいても現実得点が高い場合に, 期待得点はアパシー傾向と負の関連が示された。特に, 期待したよりも時間的ゆとりのある大学生活を送っている場合に, アパシー傾向が高まることが明らかにされ, 大学における初年次教育の方向性に関して議論された。
著者
水野 雅之 関口 雄一 臼倉 瞳
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.125-134, 2018-10-31 (Released:2020-01-05)
参考文献数
49

海外で実施された2つの場面緘黙のランダム化比較試験では,(1)段階的エクスポージャー法,(2)家庭や学校など生活場面での支援,(3)家族および教師との連携,の3つが有効である可能性が示されている。そこで,本研究では,日本における場面緘黙児への支援として,(1)段階的エクスポージャー法,(2)家庭や学校などの生活場面での支援,(3)家族および教師との連携,の3点に注目し,これらの支援がどの程度実施されているかを明らかにすることを目的とした。まず,系統的な文献収集を行い,38事例が収集された。文献を精査した結果,(1)段階的エクスポージャー法は18.4%のケースでしか実施されていないこと,(2)家庭や学校など生活場面での支援は31.6%のケースで実施されていること,(3)家族および教師との連携については,家族および幼稚園・学校関係者のいずれとも連携しているケースは28.9%であることが明らかにされた。今後,これら3つの支援方法を広めていくことが必要であるといえる。
著者
岡上 武 水野 雅之
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.307-312, 2015 (Released:2015-05-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1 4

健診において肝障害をスクリーニングする検査項目で重要なものはAST、ALT、γ-GTP、血小板(PLT)数である。AST、ALTの基準値は施設により大きな差があり、一昨年我々が調査した本邦の78大学附属病院のALT基準値は25IU/L以下から48IU/L以下まで様々で、またPLTも総合健診や人間ドックでは基準値が13~35万と幅広い。近年肝臓に異常の無い場合のALT値は男性で30IU/L以下、女性で19IU/L以下とイタリアから報告されており、わが国でも早急にAST、ALTの基準値を男女別に見直し、施設間の差をなくすことが必要と考える。 異常なし、軽度異常、要経過観察、要治療などの判定はこれら個々の検査値のみで判断されているが、これにも大きな問題がある。すなわち、肝疾患が進行し肝硬変になるとALTは低下し、多くは40IU/L以下となり、30IU/L以下を示す例もかなりある。一般に慢性肝炎ではAST<ALTであるが、肝硬変になるとAST>ALTとなる。また肝疾患が進展(線維化進展)するとPLTは減少し、PLTが13万位になるとかなり進行した慢性肝炎か初期の肝硬変のことが多い。なお、肝臓に異常の無い者ではAST、ALTともに30IU/L以下で、かつAST>ALTである。すなわち値のみでなくAST/ALTとPLT数を加味した判定が必要である。本稿ではこれら検査値とそれに基づく判定の問題点について述べた。
著者
水野 雅之 菅原 大地 千島 雄太
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.112-118, 2017-05-15 (Released:2017-06-13)
参考文献数
28
被引用文献数
3 3

The purpose of this study was to examine how well-being is associated with self-compassion and self-esteem, mediated by coping styles. Two hundred and forty-seven undergraduate students (mean age=19.37 years, SD=1.12) completed questionnaires comprised of scales measuring self-compassion, self-esteem, coping styles, and subjective well-being. Covariance structure analysis showed that (a) self-compassion was positively related to positive interpretations, and resulted in good well-being; (b) self-compassion was associated with planning positively; (c) self-esteem was positively related to well-being directly; (d) self-esteem was associated with abandonment and avoidance of responsibility negatively and catharsis positively. Finally, we discussed the different relationships between self-compassion and self-esteem with well-being.
著者
千島 雄太 水野 雅之
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.228-241, 2015
被引用文献数
5

本研究の目的は, 大学入学前に持っていた複数の領域に渡る大学生活への期待と, 実際に経験した大学生活に関して探索的に把握し, 大学適応への影響について実証的に明らかにすることであった。文系学部の大学生84名を対象とした予備調査によって, 大学生活への期待と現実に関して探索的に検討し, それぞれ項目を作成した。続いて, 文系学部の新入生316名を対象とした本調査を行い, 探索的因子分析の結果, 大学生活への期待は, "時間的ゆとり", "友人関係", "行事", "学業"の4つの領域が抽出された。対応のある<i>t</i>検定の結果, 全ての領域において期待と現実のギャップが確認された。さらに, 大学環境への適応感とアパシー傾向を従属変数とした階層的重回帰分析を行った。その結果, "時間的ゆとり"と"友人関係"において, 期待と現実の交互作用が認められ, いずれにおいても現実得点が高い場合に, 期待得点はアパシー傾向と負の関連が示された。特に, 期待したよりも時間的ゆとりのある大学生活を送っている場合に, アパシー傾向が高まることが明らかにされ, 大学における初年次教育の方向性に関して議論された。
著者
水野 雅之 大宮 喜文 若松 孝旺
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.6, no.10, pp.129-134, 2000
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

An interview survey was carried out on the hotel employees concerning the human behavior in a fire at Shirahama. The employees were interviewed about time interval from awaring unusual occurrence to evacuation start. The information obtained by the interview survey was arranged as the figure of the time series. The time axis of the figure refered survey of fire brigade and so on. Further, the figure which indicates the condition of fire, the propagation range of smoke and burnt odor and human behavior in initial fire was developed. As the summarization, it was clear why human evacuation was successful in this hotel fire.
著者
菅原 進一 山内 幸雄 水野 雅之 佐野 友紀
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,綿布団の燻焼に伴う一酸化炭素の生成量,木材を可燃物とする換気支配型燃焼に伴う一酸化炭素の生成量に関するモデルを実験から求め,二層ゾーンモデルの入力とすることで空間の二酸化炭素濃度を予測できることを確認した。また,統計分析から死者発生火災に関する特徴を抽出すると共に対策を整理し,その典型例を取り上げた住宅火災における人命安全評価手法のケーススタディを通して,住警器の連動警報の効果等を分析した。
著者
水野 雅之 菅原 大地 谷 秀次郎 吹谷 和代 佐藤 純
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.92.20317, (Released:2021-07-31)
参考文献数
34
被引用文献数
4

The purpose of this study was to examine the direct and indirect associations of self-compassion, social support in the workplace, and job stressors with the tendency to burnout among early career physical and occupational therapists. A total of 124 physical therapists and 63 occupational therapists, who were all within their first five years of employment, participated in a web-based survey. Covariance structure analysis was used to examine the associations between the variables controlled by type of occupation. The following findings were revealed: (a) self-compassion was negatively associated with the tendency to burnout, both directly and mediated by job stressors, (b) supervisory support showed a direct negative association with depersonalization and a negative association with the tendency to burnout mediated by job stressors, and (c) support from colleagues showed a negative association with diminished personal accomplishment. We discuss that the potential for self-compassion and social support in the workplace can work effectively in preventing burnout among early career physical and occupational therapists.
著者
水野 雅之 千島 雄太
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.94-105, 2018-10-31 (Released:2020-01-05)
参考文献数
39

本研究の目的は,大学生活への期待と現実のギャップに対する否定的反応とその対処が大学適応に及ぼす影響を検討することであった。まず,ギャップへの否定的反応とその対処を測定する尺度の項目を自由記述調査によって収集した。その後,期待と現実のギャップを経験した大学生130名を対象に質問紙調査を行った。分析の結果,ギャップへの否定的反応尺度は単因子構造であり,ギャップへの対処尺度は「鼓舞」「転籍の検討」「消極的受容」「肯定的捉え直し」の4因子構造であることが見いだされた。階層的重回帰分析を実施したところ,否定的反応と肯定的捉え直しの交互作用が有意であり,否定的反応を強く経験しているとき,肯定的捉え直しと大学適応の間に正の関連がみられた。加えて,主効果については大学適応に否定的反応は負の影響を,鼓舞は正の影響をもっていた。
著者
柳内 延也 塩谷 茂信 水野 雅之 鍋谷 浩志 中嶋 光敏
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.87-91, 2004-02-15
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

動物エキス中に存在するアンセリンとカルノシンをヒスチジン含有ジペプチド(HCDP)総量として測定する迅速・簡便な定量法について検討した.熱水抽出した各種動物エキス(牛肉,豚肉,鶏肉及びマグロ煮汁)をTSKG-2500PWXlカラムへ注入し,0.1%トリフルオロ酢酸含有45%アセトニトニトリルを溶媒として流速0.5mL/minで展開し,波長210nmの検出器で検出した.動物エキス中のアンセリンとカルノシンは同じ単一ピークとして溶出され,他の蛋白質,ペプチド及びアミノ酸と分離された.アンセリンとカルノシンで構成される単一ピークにはリジンとアルギニンが微量混在していたが,これらのアミノ酸は波長210nmに吸収を持たないものなので,アンセリン又はカルノシンと同一の溶出位置に検出されたピークはHCDPピークと見なすことが可能であった.本法ではアンセリンとカルノシンの個別定量は出来ないが,各種動物エキス中のHCDP含量を1検体あたりわずか30分で定量が可能であり,この測定値はアミノ酸自動分析計で測定されるアンセリン-カルノシンの合計値と良く一致する結果であった.
著者
石坪 智也 秋月 伸介 水野 雅之 関本 昌紘 川村 貞夫
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp._2A1-G04_1-_2A1-G04_4, 2009

We propose a new control method for forming feedforward torque-patterns of robot manipulators. In the proposed method, a feedforward torque-pattern can be composed of several other torque-patterns, which have already obtained by the iterative learning control method. Since the iterative learning control method does not need parameter identification of robot dynamics, the proposed method in this paper means that arbitrary feedforward input torque-patterns are formed without using parameter identification. The effectiveness of the proposed control method is demonstrated by several experimental results.
著者
水野 雅之 住井 英二郎
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.2_114-2_119, 2017-04-26 (Released:2017-05-11)

コンパイラの形式的検証は盛んに研究されているが,入出力等の副作用がある高階関数型プログラミング言語のコンパイラの検証はあまり行われていない.これは無限に入出力を行うプログラムの意味論の形式化が自明でないためである.我々は,入出力等の副作用を持つ外部関数の呼び出しや再帰関数,高階関数,組を持つ値呼びの関数型プログラミング言語に対するK正規化を定理証明支援系Coqを用いて形式的に検証した.K正規化とはlet式を用いて全ての中間式に対し陽に名前を与えるプログラム変換であり,束縛の操作を伴う点で形式化が自明でない.本研究では,余帰納的大ステップ操作的意味論によりプログラムの意味を外部関数呼び出しの無限列として与えた.また,束縛の表現としては,他の手法と比較検討した上でde Bruijnインデックスを採用した.
著者
柳内 延也 塩谷 茂信 水野 雅之 鍋谷 浩志 中嶋 光敏
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.238-246, 2004-05-15
被引用文献数
8 15

チキンエキスから得られる抗酸化性ジペプチドのアンセリン(Ans),カルノシン(Car)及びその混合体(AC mix)の抗酸化活性を調べるために,生体内で生成される3種類の活性酸素,次亜塩素酸(ClO⋅),水酸化(OH⋅)及び過酸化亜硝酸(NO<sub>3</sub>⋅)ラジカルを用いて,これらの活性酸素による蛋白質分解に対する分解阻止作用の点から試験し,ビタミンC(V.C),ビタミンE(V.E),還元型グルタチオン(GSH),エピガロカテキンガレート(EGCG)及びケルセチン(Qur)などの抗酸化剤と比較した.食品の抗酸化能測定法として一般に用いられるラジカル色素還元法(DPPH法)で比較すると,抗酸化活性の強さは植物由来の抗酸化剤,特にポリフェノール化合物が極めて高く測定され,AC mixの抗酸化活性はEGCGの1/6700,Qurの1/2500,そしてV.CとV.Eの1/1000に過ぎなかった.各種活性酸素による蛋白質分解反応の阻止作用で測定した抗酸化活性では,Ans,Car及びAC mixはGSHやV.Cと同様にClO⋅とONOO⋅に対して強い抗酸化活性を示し,OH⋅に対して弱い活性であった.一方,50μMのEGCGとQuer及びV.Eなどの脂溶性抗酸化剤はOH⋅に対し強い抗酸化作用を示したが,ClO⋅とONOO⋅に対しては強い抗酸化活性は示さなかった.V.CはAC mixやGSHと同様にOH⋅に対する抗酸化活性は弱いものであったが,ONOO⋅に対して最も強い抗酸化活性を示した.これらの結果から,抗酸化剤にはそれぞれ有効に作用する活性酸素種があり,生体のエネルギー代謝の過程で発生する活性酸素による生体成分の障害を防止するために適切な抗酸化剤の併用が重要であることが強く示唆された.