著者
柴田 真理朗 杉山 純一 蔦 瑞樹 藤田 かおり 杉山 武裕 粉川 美踏 荒木 徹也 鍋谷 浩志 相良 泰行
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.296-303, 2010-07-15 (Released:2010-09-01)
参考文献数
10
被引用文献数
3 1

すだち(気泡構造)からパンの食感を推定するために,粘弾性と気泡計測パラメータを計測し,それらの関係の定量化を行った.(1) すだちの構造把握に十分な数の気泡を含む大きさを持ち,合わせて試料間にバラツキが確保されるようにサンプリングするために,試料サイズの最適値を決定した.気泡パラメータの変動および実際の計測の安定性を考慮した結果,試料サイズの最適値は1辺20mmの立方体とした.(2) クリープ試験により得られた時間-歪曲線に4要素フォークト粘弾性モデルを適用し,4つの粘弾性係数(瞬間弾性,遅延弾性,遅延粘性および永久粘性)を得た.一方,イメージスキャナにより撮像したデータに,画像処理を利用した既往の研究8) の気泡検出法を適用し,平均気泡面積,平均気泡周囲長,単位面積当たりの気泡数,および気泡面積割合の4つの気泡パラメータを算出した.粘弾性係数および気泡パラメータの変動係数は7.5~49.2%であり,パン試料断面の部位によって不均一であることが明らかになった.(3) 粘弾性係数および気泡パラメータに相関分析を適用した結果,瞬間弾性,遅延弾性および永久粘性と気泡面積割合(画像全体に占める気泡面積の割合)に有意な相関がみられた(r>0.6, p<0.05).本実験で用いた試料においては計測した咀嚼面の気泡面積割合が大きいほど,「かたく」感じられることが示唆された.また,既往の研究と異なる方向の画像解析においても食感を推測できる可能を示せた.
著者
柳内 延也 塩谷 茂信 水野 雅之 鍋谷 浩志 中嶋 光敏
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.87-91, 2004-02-15
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

動物エキス中に存在するアンセリンとカルノシンをヒスチジン含有ジペプチド(HCDP)総量として測定する迅速・簡便な定量法について検討した.熱水抽出した各種動物エキス(牛肉,豚肉,鶏肉及びマグロ煮汁)をTSKG-2500PWXlカラムへ注入し,0.1%トリフルオロ酢酸含有45%アセトニトニトリルを溶媒として流速0.5mL/minで展開し,波長210nmの検出器で検出した.動物エキス中のアンセリンとカルノシンは同じ単一ピークとして溶出され,他の蛋白質,ペプチド及びアミノ酸と分離された.アンセリンとカルノシンで構成される単一ピークにはリジンとアルギニンが微量混在していたが,これらのアミノ酸は波長210nmに吸収を持たないものなので,アンセリン又はカルノシンと同一の溶出位置に検出されたピークはHCDPピークと見なすことが可能であった.本法ではアンセリンとカルノシンの個別定量は出来ないが,各種動物エキス中のHCDP含量を1検体あたりわずか30分で定量が可能であり,この測定値はアミノ酸自動分析計で測定されるアンセリン-カルノシンの合計値と良く一致する結果であった.
著者
柳内 延也 塩谷 茂信 水野 雅之 鍋谷 浩志 中嶋 光敏
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.238-246, 2004-05-15
被引用文献数
8 15

チキンエキスから得られる抗酸化性ジペプチドのアンセリン(Ans),カルノシン(Car)及びその混合体(AC mix)の抗酸化活性を調べるために,生体内で生成される3種類の活性酸素,次亜塩素酸(ClO⋅),水酸化(OH⋅)及び過酸化亜硝酸(NO<sub>3</sub>⋅)ラジカルを用いて,これらの活性酸素による蛋白質分解に対する分解阻止作用の点から試験し,ビタミンC(V.C),ビタミンE(V.E),還元型グルタチオン(GSH),エピガロカテキンガレート(EGCG)及びケルセチン(Qur)などの抗酸化剤と比較した.食品の抗酸化能測定法として一般に用いられるラジカル色素還元法(DPPH法)で比較すると,抗酸化活性の強さは植物由来の抗酸化剤,特にポリフェノール化合物が極めて高く測定され,AC mixの抗酸化活性はEGCGの1/6700,Qurの1/2500,そしてV.CとV.Eの1/1000に過ぎなかった.各種活性酸素による蛋白質分解反応の阻止作用で測定した抗酸化活性では,Ans,Car及びAC mixはGSHやV.Cと同様にClO⋅とONOO⋅に対して強い抗酸化活性を示し,OH⋅に対して弱い活性であった.一方,50μMのEGCGとQuer及びV.Eなどの脂溶性抗酸化剤はOH⋅に対し強い抗酸化作用を示したが,ClO⋅とONOO⋅に対しては強い抗酸化活性は示さなかった.V.CはAC mixやGSHと同様にOH⋅に対する抗酸化活性は弱いものであったが,ONOO⋅に対して最も強い抗酸化活性を示した.これらの結果から,抗酸化剤にはそれぞれ有効に作用する活性酸素種があり,生体のエネルギー代謝の過程で発生する活性酸素による生体成分の障害を防止するために適切な抗酸化剤の併用が重要であることが強く示唆された.
著者
鍋谷 浩志
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.213-231, 2014-12-15 (Released:2015-02-05)
参考文献数
35

高品質の食品を効率的に生産するためには,目的に適した反応操作,分離操作を選定し,その工程を最適化することが求められる.逆浸透や限外ろ過といった膜分離技術は,消費エネルギーが少ない非加熱処理であるために,他の分離技術と比較して多くの特長を有する.我が国の食品産業においても多くの実用化の例がある.本報では,まず,液状食品の膜分離プロセスの最適化に関する取り組みを紹介する.バイオディーゼル燃料(脂肪酸メチルエステル)は,植物油から製造される軽油代替燃料である.我が国の場合,食用油の多くを輸入に頼っており,バイオディーゼル燃料の原料は,廃食用油や油脂の精製工程から排出される副産物(遊離脂肪酸)に程度に限られる.しかしながら,こうした原料を,アルカリ触媒を用いる従来法では処理することができない.後半では,アルカリ触媒を用いないバイオディーゼル燃料製造の開発とその経済性の評価に関する取り組みを紹介する.