著者
増田 健幸 中田 雅也 岡田 早苗 保井 久子
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 = Journal of Japan Society for Lactic Acid Bacteria (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.42-49, 2010-03-15
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

すんき漬から分離された乳酸菌の中にIgE産生を抑制する菌株が多数存在した。その中の1菌株(<i>Pediococcus pentosaceus</i> Sn26株(Sn26))は、経口投与により血中の卵白アルブミン(OVA)特異的IgEを減少させ、 OVAで誘導されるアレルギー性下痢症を有意に抑制した。このメカニズムを解析するために誘導組織である腸管パイエル板細胞及び実効組織である腸管粘膜固有層リンパ細胞の免疫応答性を調べた。その結果、Sn26の経口投与は、パイエル板細胞の1型ヘルパーT細胞(Th1)型サイトカイン産生能を上昇させ、Th1/ 2型ヘルパーT細胞(Th2)バランスを改善させ、総IgE産生能を減少させた。さらに、腸管粘膜固有層リンパ細胞のTh2型サイトカイン産生能を減少させ、OVA特異的IgE産生能を低下させた。以上のことから、経口投与されたSn26は、パイエル板に取り込まれた後、Th1/Th2バランスの改善を介して腸管粘膜でのIgE産生を抑制し、下痢発症を抑制することが推測された。
著者
吉田 茂利 大畑 映利子 増田 健幸 岡田 早苗 宮崎 洋二 山下 哲郎 保井 久子
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.214-220, 2010-11-10 (Released:2014-09-12)
参考文献数
16
被引用文献数
5

徳島県の伝統的な乳酸発酵茶である阿波晩茶から分離された熱処理Lactobacillus plantarum FG4-4 株(FG4-4)の抗アレルギー作用及びそのメカニズム解析を行った。アトピー性皮膚炎モデルマウスであるNC/Nga マウスを0.05% FG4-4 添加餌群(0.05% 群)、0.5%FG4-4 添加餌群(0.5% 群)と、FG4-4 無添加餌群(cont 群)の3 群に分けた。餌投与開始15 日後に塩化ピクリル(PiCl)を用いて初回免疫を、その4 日後より、週1 回の塗布により連続免疫を行った。経時的に皮膚症状のスコアと耳介部の肥厚及び血中総IgE 量を測定した。その結果、血清中総IgE 量、皮膚スコア及び耳介部の肥厚は0.05% 群及び0.5% 群で有意に抑制された。また、89 日目に解剖し、脾臓及びパイエル板細胞培養を行い、その上清中のサイトカイン及びIgE 抗体量をELISA 法にて測定した。その結果、FG4-4 投与群(0.05% 群及び0.5% 群)の脾臓及びパイエル板細胞においてIgE 産生能は有意に抑制され、Th1 型サイトカイン(IL-12 及びIFN-γ)産生能は有意に増加した。さらにパイエル板細胞においてTh2 型サイトカイン(IL-4)産生能の有意な減少が認められた。また、FG4-4 投与両群の脾臓及びパイエル板細胞においてIL-10 産生能の有意な増加、IL-17 産生能の有意な抑制が確認された。これらの結果から、FG4-4 の経口摂取はTh1/Th2 バランスを改善し、IgE 産生を抑制することによって抗アレルギー作用を有することが示唆された。さらに、FG4-4は制御性T 細胞の亢進及びTh17 細胞の抑制を誘導し、アトピー性皮膚炎を軽減する事も示唆された。