著者
長江 信和 増田 智美 山田 幸恵 金築 優 根建 金男 金 吉晴
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.113-124, 2004-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

外傷後認知尺度は、外傷体験者の認知を測る尺度である(Foa et al., 1999)。外傷後認知は、否定的なライフ・イベントの体験者にみられる外傷的反応の予後に影響を及ぼすと考えられる。本研究では、大学生における否定的ライフ・イベントの体験の分布を調べるとともに、その体験者を対象として日本版外傷後認知尺度の尺度化を試みた。大学の教場で調査を行った結果、回答者2,622名のうち53.5%は自然災害や交通事故などの体験者であることが判明した。一方、外傷後認知尺度の翻訳版がバックトランスレーションの手続きを経て作成された。否定的ライフ・イベントの体験者に対して郵送調査を行った結果、Foa et al.(1999)と同様の3因子が見いだされ、良好な再検査信頼1生と基準関連妥当性が確認された。日本版外傷後認知尺度は、否定的ライフ・イベントの体験者である大学生一般に適用できる可能性が示唆された。
著者
増田 智美
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2005-07

制度:新 ; 文部省報告番号:甲2097号 ; 学位の種類:博士(人間科学) ; 授与年月日:2005/7/20 ; 早大学位記番号:新4068
著者
増田 智美 長江 信和 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.123-135, 2002-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究では、大学生の怒りに対する認知行動療法(CBT)、すなわちISST(inductive social skills training)の効果と同時に、個人差である怒りの表出傾向が介入効果に相違をもたらすかどうかを検討した。被験者は、怒りの特性が高く、かつ怒りの表出傾向の高い者(AO高者)と怒りの抑制傾向の高い者(AI高者)の計42名であった。 AO高者とAI高者それぞれを、 CBT群と統制(Ctrl)群に割り当て、2つのCBT群には、怒りの行動的反応を標的とするCBTを4週間実施した。その結果、 Ctrl群と比較して、CBT群では、介入直後の怒りの特性だけでなく、敵意や不安においても有意な低減がみられ、その効果は3か月後のフォローアップ時でも維持されていた。また、表出傾向別にみると、怒りの表出傾向が高い被験者のほうが低い被験者よりも効果が著しかった。怒りを表出する傾向の高い被験者には、行動的反応を標的としたCBTが有効であることが判明した。 CBTを施す際に、怒りの表出傾向まで考慮することの意義が示唆された。
著者
増田 智美 金築 優 関口 由香 根建 金男
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.31-44, 2005-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究では、怒り喚起を伴う対人場面における自己陳述を測定できる怒りの自己陳述尺度を作成し、標準化することを目的とした。青年期の学生596名のデータを対象として因子分析を行った結果、第1因子「他者からの不当な扱い」、第2因子「敵意に満ちた考え」、第3因子「報復の正当化」、第4因子「自己への叱責」、第5因子「他者への非難」が抽出された。尺度全体および各下位尺度ともに安定的な内的整合性が示されたことから、尺度の信頼性が認められた。また、他尺度との関連性により併存的妥当性が確認された。加えて、イメージによる怒り喚起状態に伴って、尺度得点が増加したことから、怒り喚起状態における自己陳述を測定する尺度としての構成概念妥当性が裏づけられた。今後、怒りの認知的側面を標的とした認知行動療法を施す際のアセスメント・ツールとして、本研究で標準化された怒りの自己陳述尺度を活用することが望まれる。