著者
金 吉晴 小西 聖子
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.7, no.Special_issue, pp.155-170, 2016-05-31 (Released:2016-06-02)

註)以下に示すのはPEの開発者であるEdna Foa教授によって作成され,日本で翻訳出版されている下記のマニュアルを,開発者の許可の元に抜粋したものである。この抜粋版は治療プロトコルの概要を示すだけのものになっており,これだけを用いて実際に治療を行うことはできない。PEの実施に当たっては,正規の指導者による24時間のワークショップに参加し,所定のスーパーバイズを受ける必要がある。なお心理教育,想像エクスポージャー,現実エクスポージャー,エクスポージャー後の処理などは,下記のマニュアルでは豊富な事例をもとに,どのようにして対話的に患者の理解を深めていくのかが示されている。本プロトコルでは,紙数の制約のために,その部分が記されていない。あくまで治療手続の概要にすぎないことを理解されたい。金 吉晴,小西聖子(監訳):PTSDの持続エクスポージャー療法.星和書店,東京,2009.(Foa, E., Hembree, E., Rothbaum, B.: Prolonged exposure therapy for PTSD. Oxford University Press, New York, 2007)
著者
長江 信和 増田 智美 山田 幸恵 金築 優 根建 金男 金 吉晴
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.113-124, 2004-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

外傷後認知尺度は、外傷体験者の認知を測る尺度である(Foa et al., 1999)。外傷後認知は、否定的なライフ・イベントの体験者にみられる外傷的反応の予後に影響を及ぼすと考えられる。本研究では、大学生における否定的ライフ・イベントの体験の分布を調べるとともに、その体験者を対象として日本版外傷後認知尺度の尺度化を試みた。大学の教場で調査を行った結果、回答者2,622名のうち53.5%は自然災害や交通事故などの体験者であることが判明した。一方、外傷後認知尺度の翻訳版がバックトランスレーションの手続きを経て作成された。否定的ライフ・イベントの体験者に対して郵送調査を行った結果、Foa et al.(1999)と同様の3因子が見いだされ、良好な再検査信頼1生と基準関連妥当性が確認された。日本版外傷後認知尺度は、否定的ライフ・イベントの体験者である大学生一般に適用できる可能性が示唆された。
著者
伊藤 真利子 林 明明 金 吉晴
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PR-010, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

【背景・目的】カフェインは世界的にも好まれている飲料の一つであるが心理・生物学的影響について未解明の点も多い。カフェインの摂取により,安静状態での副交感神経系が優位になるとの報告がある一方で,パニック発作や不安症状が引き起こされるという報告もある。本研究では心身共に健康な成人を対象に,カフェイン関連の飲食物を制限した状態(制限期)と普段通りの量を摂取した状態(摂取期)とで,ストレス刺激への反応を観察した。【方法】20歳以上の男女23名が参加した。参加者には初回参加時にカフェイン関連の飲食物の漸減を求め,1週間後に実験室への来室を求めた。さらにその後1週間で再び元の摂取量までの漸増を求めて,合計3回の来室をもって参加終了とした。制限期と摂取期においてストレス刺激への反応を測定するため,安静時とホワイトノイズ提示後の不安(STAI),Visual Analog Scale,気分状態(POMS)の評定を求めた。【結果・考察】ノイズへの気分反応はカフェイン制限期・摂取期によらず概してネガティブであることを確認した。摂取期よりも制限期の方が不安,ストレスの程度が高く評定され,カフェインの摂取によるストレス反応の緩和が示唆された。
著者
伊藤 大輔 中澤 佳奈子 加茂 登志子 氏家 由里 鈴木 伸一 金 吉晴
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.19-29, 2015-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、PTSD症状と生活支障度の関連を検討し、認知行動的要因がそれぞれに及ぼす影響を明らかにすることであった。主にDVをきっかけに医療機関を受診した女性のPTSD患者41名を対象に、出来事チェックリスト(ECL)、PTSD症状(IES-R)、生活支障度(SDISS)、認知的評価(CARS)、PTSD症状に対する否定的解釈(NAP)、対処方略(TAC)を実施した。IES-RとSDISSに弱い相関が見られたため、階層的重回帰分析を行った結果、PTSD症状には、トラウマの脅威性の認知、症状に対する否定的予測と意味づけ、回避的思考の有意な正の影響性が見られた。一方、生活支障度には、トラウマの脅威性の認知、放棄・諦めの有意な正の影響がみられ、肯定的解釈、責任転嫁の有意な負の影響が見られた。これらのことから、DVに起因したPTSD患者には、生活支障度の改善に焦点を当てた介入を積極的に行う必要性が示唆された。
著者
金 吉晴
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.231-236, 2003-04-20 (Released:2011-10-07)
参考文献数
12

PTSDをはじめとする心的外傷関連障害が, 広範な社会的な関心の対象となっている. ペルー人質事件以後, 国立精神・神経センターでの委託費研究班が発足し, 平成13年には, 研究班としての対応マニュアルを発行した. PTSDで扱われているトラウマとは, 戦争に匹敵するような体験であり, 生理学的な側面と体験の認知ならびに意味付け的な混乱の両側面がある. 診断に際しては, 出来事の定義, 症状の記述とも, DSM-IVのような基準を参照すべきであり, とくに精神鑑定ではそれが重要である. トラウマからの一般的な回復過程を理解することは重要であり, 直後には一過性の比較的軽度の心身の変調が生じ, 一部がASDとなり, さらに一部がPTSDとなる. 遷延化する例はさらに少ない. 長期的にはアルコール・薬物依存, 自殺をはじめとする社会的な不適応が問題となる. 被害者が有責者であるかのようなスティグマは社会適応を阻害する.
著者
伊藤 まどか 金 吉晴 加茂 登志子 臼井 真利子
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2017-02-07

本研究の目的は、複雑性PTSDに対するSTAIR/NSTの日本における実施可能性、安全性、有効性を単群での前後比較試験にて検討することである。2019年度までに8例の登録を行った。予備試験の症例の治療経過については、学会や学術雑誌にて症例報告を行った。また本課題では、STAIR/NSTの治療マニュアルやマテリアル、複雑性PTSD診断評価ツールの整備も進めてきた。その中でICD-11に基づくPTSD/複雑性PTSDの診断面接(国際トラウマ面接;ITI)の翻訳を行った。また自記式評価尺度(国際トラウマ質問票;ITQ)を翻訳と逆翻訳を経て日本語版を作成し、学術雑誌にて全文公開した。
著者
金 吉晴 小西 聖子
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.155-170, 2016

註)以下に示すのはPEの開発者であるEdna Foa教授によって作成され,日本で翻訳出版されている下記のマニュアルを,開発者の許可の元に抜粋したものである。この抜粋版は治療プロトコルの概要を示すだけのものになっており,これだけを用いて実際に治療を行うことはできない。PEの実施に当たっては,正規の指導者による24時間のワークショップに参加し,所定のスーパーバイズを受ける必要がある。なお心理教育,想像エクスポージャー,現実エクスポージャー,エクスポージャー後の処理などは,下記のマニュアルでは豊富な事例をもとに,どのようにして対話的に患者の理解を深めていくのかが示されている。本プロトコルでは,紙数の制約のために,その部分が記されていない。あくまで治療手続の概要にすぎないことを理解されたい。金 吉晴,小西聖子(監訳):PTSDの持続エクスポージャー療法.星和書店,東京,2009.(Foa, E., Hembree, E., Rothbaum, B.: Prolonged exposure therapy for PTSD. Oxford University Press, New York, 2007)
著者
中島 聡美 金 吉晴 小西 聖子 白井 明美 伊藤 正哉
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

複雑性悲嘆の治療法の開発および有効性の検証のために2つの研究を行った。(1)Shearが開発した複雑性悲嘆療法を複雑性悲嘆を主訴とする成人(6例)を対象に、実施したところ、治療後に複雑性悲嘆症状、うつ症状、PTSD症状のいずれも有意な改善を示した。(2)Wagnerによるインターネットを媒介とした認知行動療法を参考に筆記課題を行う治療プログラムを開発した。重要な他者を喪失した一般成人遺族28名を対象に紙面べ一スにて実施したところ、筆記後において複雑性悲嘆での有意な減少が見られた。複雑性悲嘆に対して2つの認知行動療法の有効性が示唆された。