著者
増田 泰久 川本 康博
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.64-68, 1991-04-30
被引用文献数
1

ファジービーン(Macroptilium lathyroides L. URB.)の採種方法を確立するための基礎的資料として,開花習性,種子成熟及び裂莢過程並びに種子収量を明らかにする実験を行った。1989年5月15日に畦幅60cmで条播きし,1m畦長当たり25個体で生育させた。7月24日から5日毎にその日に開花した花の萼に印を付けながら,8月3,8,13及び19日の4時期に刈取り,着莢を開花日別に分別採種し,莢数及び種子重を測定した。開花は採種後65日目の7月18日に始まり,開花盛期は8月1日をピークとする7月29日から8月4日までであった。1個体当たりの花房数は平均5.1個で1花房に約8-10個の着花がみられた。各採種日における全着莢数に対する開花盛期に開花着生した莢数の割合は56-68%であった。開花後の日数経過に伴う種子の成熟過程については,開花後9日で発芽率が90%以上となり,開花後8-11日で莢色が黒化し,開花後12日目には成熟種子重の平均1,000粒重が7.86gに達することがそれぞれ認められた。また,開花後16-17日が経過すると裂莢が始まることが観察された。全種子収量,発芽可能な種子収量及び黒色莢中の種子収量はいずれも開花盛期種子が79%を占めた8月19日採種において最も高くなった。以上の結果より,ファジービーンの採種のための収穫適期は,開花盛期に開花着生した莢が全て黒色となる時期(本実験条件では開花盛期終了から10日目の8月14日)から開花ピーク目に開花着生した莢の開裂が始まるまで(開花ピーク日から16日日の8月17日)であると考えられた。
著者
飛佐 学 田尻 一裕 村上 研二 下條 雅敬 増田 泰久
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.149-157, 2003-06-15

ファジービーンの刈取り語の再生に関与する諸要因と再生機構との関係を明らかにするため,生育温度及び刈取り高さが再生過程における乾物生産,窒素固定能,貯蔵養分などの推移に及ぼす影響について検討した。野外で1/10,000aポットに栽培したファジービーンを播種後28日目に,昼夜温一定の20℃, 25℃および30℃の環境調節実験室に入れ,播種後47日目に地際から7.5cmまたは15cmの高さで刈取った。刈取り後全ての処理区で乾物重の一時的な減少がみられ,根の減少は13日目まで続いたが,その後増加した。刈取り後28日目における植物体乾物重は15cm刈区が7.5cm刈区より1%水準で有意に高く,15 cm刈区においては25℃および30℃区は20℃区より5%水準で有意に高かった。これは葉面積比が高かったことから,刈取り後の葉面積の展開速度の差によるものであった。全非構造性炭水化物(TNC)含有量,根粒重,窒素固定能についても刈取り直後に減少し,特に,7.5cm刈の全温度区と15cm刈30℃区で減少が著しかった。このことから,ファジービーンは高刈りをすれば刈取り後の貯蔵養分量が多く,再生速度も高く,また,生育適温とされる25-30℃では,貯蔵養分の消費は多いが,その後の再生は速いことが示された。