著者
川本 康博 金城 隆 池田 元彦 宮城 悦生 本郷 富士弥 古謝 瑞幸
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.141-151, 1992-07-30 (Released:2017-07-07)
被引用文献数
4

暖地型イネ科飼料作物ガットンパニック及びハイブリッドペニセタムを圃場で栽培し,4及び8週間隔の刈取間隔(以下,4週区及び8週区と略)が乾物生産,栄養価値の季節変動に及ぼす影響について明らかにし,さらに,両草種の再生機構についても検討した。試験期間の合計乾物収量は,両草種共に4週区と比較して8週区で増収したが,両草種間の差は認められなかった。季節毎の乾物収量と気象要因との関係では,ガットンパニックが気温上昇するに伴って,乾物生産を高めるのに対し,ハイブリッドペニセタムは気温が約25℃以上であれば,降雨量の多い時期に高い乾物生産を示す違いが認められた。窒素含有率及び乾物消化率は両草種共に4週区で高く,また,生育期間の気温が低下するに伴い直線的に増加した。このため,両草種の窒素収量及び可消化乾物収量における刈取間隔の影響及び季節変動は乾物収量の場合より小さくなった。刈取後における両草種の株部及び根部の乾物重及び貯蔵性炭水化物含有率は,いずれも一旦低下するが,約2週間目に再度増加に転ずる傾向を示した。この回復速度は両草種で異なり,ガットンパニックでは季節的変動は認められなかったが、ハイブリッドペニセタムでは気温が低下した場合には回復が遅延した。
著者
今井 裕理子 川本 康博
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.63-69, 2016

<p>ソルガム草地の生育段階と群落構造の違いが入牧後数時間の黒毛和種繁殖牛の採食様式と青酸化合物(HCNp)摂取量に及ぼす影響を明らかにするため,生育段階の異なる試験区(出穂前:BH,出穂後:AH)を設け,放牧試験を実施した。入牧時の生育段階はBH区が止め葉期,AH区が出穂始期であった。供試家畜は群落草高に関わらず,個体毎に基部から約6割の高さより頂部までを採食した。HCNp摂取量はAH区でBH区よりも高い傾向を示した。供試家畜が採食した層位のHCNp含量は,BH区が68.1ppm,AH区が187.5ppmであり,両区におけるHCNpの垂直分布の違いがHCNp摂取量に影響したと考えられた。このことから,青酸中毒の危険性を最小限に抑えるためには,放牧家畜が選択的に採食を行う中-上層位におけるHCNp含量の変動の要因について,さらに詳細な検討が必要であると考えられた。</p>
著者
安里 直和 幸喜 香織 蝦名 真澄 甘利 雅拡 大森 英之 川本 康博 島袋 宏俊
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.148-153, 2017

<p>近赤外分析法を用いて,ブラキアリアグラス(8品種,192点)の飼料成分について検量線を作成した。192点のサンプルのうち,128点のサンプルを検量線作成用試料,残りの64点を検定用試料とした。作成した検量線の精度は,相関係数(r),推定誤差の標準偏差(SDP)およびEI値を用いて評価を行った。部分最小二乗法(PLSR)における,水分,粗タンパク質(CP),粗繊維(CF),中性デタージェント繊維(NDFom),酸性デタージェント繊維(ADFom),酸性デタージェントリグニン(ADL)および乾物消化率(IVDMD)のrは0.91-0.99と高く,SDPについては,0.25-2.38と低かった。また,EI値については,水分およびCPについてAランク,その他の成分についてはBランクと良好な結果が得られた。以上のことより,ブラキアリアグラスの飼料成分およびIVDMDについて,近赤外分析法にて迅速かつ精度高く推定できる結果となった。</p>
著者
瀬戸口 暁 大石 風人 熊谷 元 今井 裕理子 川本 康博 広岡 博之
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-9, 2017

<p>亜熱帯地域における周年放牧肥育生産システムに対して、ライフサイクルアセスメント(LCA)による環境影響評価を実施した。沖縄県石垣地域で行われた集約輪換放牧による褐毛和種去勢肥育生産を評価対象とし、補助飼料として、国内産副産物飼料(ビール粕・砕米)を活用した完全混合飼料(TMR)を給与した生産システムを想定した。機能単位は増体重1 kg あたりとし、エネルギー消費、地球温暖化、酸性化、富栄養化への影響を算出した。評価の結果、想定した生産システムにおいて、副産物飼料の利用により飼料生産・飼料輸送による環境影響を軽減できる一方、放牧地管理がいずれの環境影響項目においても環境影響の大きな割合を占めるということが示唆された。これは、肥育を目的として高生産性を目指した放牧地への多大な施肥により、環境影響が増大したためであると考えられた。副産物飼料からの環境影響の扱い方として、経済アロケーションまたは重量アロケーションを用いた場合、および廃棄物とみなした場合の3 通りを検討した結果、重量アロケーションを用いた場合では、経済アロケーションおよび廃棄物とみなした場合より、エネルギー消費が大きい結果となった。</p>
著者
増田 泰久 川本 康博
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.64-68, 1991-04-30
被引用文献数
1

ファジービーン(Macroptilium lathyroides L. URB.)の採種方法を確立するための基礎的資料として,開花習性,種子成熟及び裂莢過程並びに種子収量を明らかにする実験を行った。1989年5月15日に畦幅60cmで条播きし,1m畦長当たり25個体で生育させた。7月24日から5日毎にその日に開花した花の萼に印を付けながら,8月3,8,13及び19日の4時期に刈取り,着莢を開花日別に分別採種し,莢数及び種子重を測定した。開花は採種後65日目の7月18日に始まり,開花盛期は8月1日をピークとする7月29日から8月4日までであった。1個体当たりの花房数は平均5.1個で1花房に約8-10個の着花がみられた。各採種日における全着莢数に対する開花盛期に開花着生した莢数の割合は56-68%であった。開花後の日数経過に伴う種子の成熟過程については,開花後9日で発芽率が90%以上となり,開花後8-11日で莢色が黒化し,開花後12日目には成熟種子重の平均1,000粒重が7.86gに達することがそれぞれ認められた。また,開花後16-17日が経過すると裂莢が始まることが観察された。全種子収量,発芽可能な種子収量及び黒色莢中の種子収量はいずれも開花盛期種子が79%を占めた8月19日採種において最も高くなった。以上の結果より,ファジービーンの採種のための収穫適期は,開花盛期に開花着生した莢が全て黒色となる時期(本実験条件では開花盛期終了から10日目の8月14日)から開花ピーク目に開花着生した莢の開裂が始まるまで(開花ピーク日から16日日の8月17日)であると考えられた。