著者
ロナルド・H・コース 増田 辰良
出版者
北海学園大学
雑誌
北海学園大学法学研究 (ISSN:03857255)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.467-478, 2003-12-30

本稿は、R. H. Coase, 1974, The Market for Goods and the Market for Ideas, American Economic Review, 64(2), 384-391を全訳したものである。本稿は、アメリカ合衆国憲法修正第一条が保障する「言論・出版・報道の自由」を"アイデア市場"とよび、通常の財・サービス市場への政府介入との比較で、アイデア市場への政府介入のあり方を考察している。従来、財・サービス市場への政府介入は"市場の失敗"を補整することから正当化されてきた。ただし、この介入さえ正しい評価を受けていない。この論文において、コースは、アイデア市場は市場参加者(知識人など)の利己心と自負心に任せて自由に運営される限り、うまく機能する、という。また、アイデア市場への政府介入が許されるのは、財・サービス市場への介入が正しい評価を受けた場合である、という。
著者
ベッカー ゲーリ 増田 辰良
出版者
北海学園大学
雑誌
北海学園大学法学研究 (ISSN:03857255)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.606-558, 2005-12-31

本稿は、Gary S. Becker, 1968, Crime and Punishment: An Economic Approach, Journal of Political Economy, March/April, 169-217の数学付録を除く、全文を邦訳したものである。本稿の大きな特徴は経済学において中心的な役割をしている経済合理性を犯罪行為にも応用したことである。つまり、犯罪を実行するか否かは合理的な選択行動の一つとなる。犯罪から得る利益がその機会費用(刑罰や罰金)を上回る限り、犯罪を実行することになる。この場合、刑罰や罰金は犯罪行為に対する対価であり、この対価を支払う能力(所得)が高い者は利益や効用が対価を上回る限り犯罪を実行する。いわば犯罪も市場取引の対象になる。本稿はあらゆる法領域において最適な違法行為数とその最適な抑止政策(有罪確率、罰金、賠償、懲役など)を考察するための先駆けとなった論文である(訳者)。
著者
増田 辰良
出版者
北海学園大学
雑誌
北海学園大学法学研究 (ISSN:03857255)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.625-659, 2004-12-31

航空法の改正によって、新千歳-羽田線に新規参入した北海道国際航空(ADO)は同路線における競争(rivalry)を促進した。例えば、ADOの参入後、ハーフィンダール指数は下がっており、同路線の競争が促進されたことがわかる。ADOは運賃の値下げと値上げの両面においてプライス・リーダーシップを発揮していた。運賃の値下げに既存大手航空会社が追随するときには交叉弾力性も大きく、競争関係は強まっていた。一方、ADOの値上げに追随しないときには弾力性も小さく、競争関係は弱まっていた。ADOの経営破綻から得る教訓として、新規参入者を育成し、成長を期待するのであれば参入前後の支援(とりわけ経営指導)と航空市場の公益性という視点を加味して既存企業の価格設定行動を規制する必要があったと思われる。