著者
後藤 仁志 関野 秀男 墨 智成 市川 周一
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は大きく分けて(1)マルチ分子オブジェクト法のための分子計算プラットフォームの構築、(2)階層化分子シミュレーションのための分子計算技術の開発、(3)不均一計算タスクの負荷分散アルゴリズムの開発、の3つの部分からなる。それぞれに関する研究実績の概要を以下に示す。(1)マルチ分子オブジェクト法による並列化効率と計算精度の向上を目指し,大規模系の結晶シミュレーション技術の開発を行った。その結果,分子間相互作用エネルギー和で14桁までの精度保障を実現すると伴に,およそ4億原子で構成された直径0.1μmもの分子性結晶計算に成功した.また、実用化レベルで結晶多形間の相転移シミュレーションによる熱力学解析法の開発に成功した.(2)マルチウェーブレット基底を用いたTDHF/TDDFT時間依存シュレディンガー方程式の解法や超分極率の算定法などの開発を行なった.これらは,現時点では大規模系への適用は容易ではないが,今後,不均一系に対する密度汎関数理論の開発へ展開することが大いに期待できる結果となった.(3)分子シミュレーションの計算タスクに対して演算性能が不十分なヘテロ分散計算環境では,実践的な負荷分散アルゴリズムは困難であることが分かった.そこで,分子シミュレーションに利用されることが多いマルチコアCPUをクラスター化したヘテロ分散環境を想定し,マルチコア/マルチスレッドシステムの負荷分散アルゴリズムめ開発に着手した.