著者
英 貢 佐藤 真理 安田 幸夫 田中 武彦 川崎 昌博 小尾 欣一
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

光勃起プロセスによる薄膜形成の初期過程のその場診断について研究を行った。表面反応と気相反応にわけて説明する。1.表面反応計測手段の開発としては,角度分解型X線電子分光(XPS)による基板表面への材料ガス(有機金属化合物など)の吸着や光分解を調べることの外に,偏光変調高感度反射赤外分光法を確立して同じ目的に利用した。この結果,シリコン等の表面で有機分属化合物ガスが吸着する探子(物理吸着とか化学吸着)が詳しく調べられた。さらに,エキシマレーザが重水素ランプからの紫外光を照射して,吸着種が光分解する探子も分ってきた。さらに,走査型トンネル顕微鏡によってはアルミ薄暎形成の初期で島が成長し,しかも基板表面状態により結晶柱があることが観測された。同様に高連反射電子回析(RHEED)によって,シリコン基板上でチゲルマの二次元および三次元成長の楳様が明らかにされた。以上で述べたように光勃起表面反応のその場観測が多角的に行われ大きな成果を挙げることができた。2気相反応気相やでの材料ガス(シラン系ガスを中心として)の光分解により発生したラジカルの検出に,従来から行われていたレーザー誘起学光法(LIF)に加えて,赤外ダイオードレーザー分光が利用された。シラン系ガスの光分解に伴って発生したラジカルSiHnがこれらの手法で検出された。さらにゲルマンの光分解も調べられた。レーザーアブレーションによって基板からとび出した原子および基板からはね返った原子がLIFによって調べられている。
著者
吉田 光男 風間 一洋 佐藤 翔 桂井 麻里衣 大向 一輝
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

現在の学術情報システムは,研究者の高度な専門性を前提とした画一的なシステムであり,それ以外の利用者の要求に応えられず,自ら利用範囲を狭めている。本研究の目的は,利用者の状況に応じ,多様な観点で学術情報を提示できる学術情報システムを実現することである。この実現のために,利用者の様々な探索要求に対応する新しい学術情報評価指標を複数開発した上で,利用者の行動履歴をもとに研究練度を推定し,利用者の研究練度に応じて複数の指標を自動的に統合する学術情報システムを構築する。
著者
後藤 仁志 関野 秀男 墨 智成 市川 周一
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は大きく分けて(1)マルチ分子オブジェクト法のための分子計算プラットフォームの構築、(2)階層化分子シミュレーションのための分子計算技術の開発、(3)不均一計算タスクの負荷分散アルゴリズムの開発、の3つの部分からなる。それぞれに関する研究実績の概要を以下に示す。(1)マルチ分子オブジェクト法による並列化効率と計算精度の向上を目指し,大規模系の結晶シミュレーション技術の開発を行った。その結果,分子間相互作用エネルギー和で14桁までの精度保障を実現すると伴に,およそ4億原子で構成された直径0.1μmもの分子性結晶計算に成功した.また、実用化レベルで結晶多形間の相転移シミュレーションによる熱力学解析法の開発に成功した.(2)マルチウェーブレット基底を用いたTDHF/TDDFT時間依存シュレディンガー方程式の解法や超分極率の算定法などの開発を行なった.これらは,現時点では大規模系への適用は容易ではないが,今後,不均一系に対する密度汎関数理論の開発へ展開することが大いに期待できる結果となった.(3)分子シミュレーションの計算タスクに対して演算性能が不十分なヘテロ分散計算環境では,実践的な負荷分散アルゴリズムは困難であることが分かった.そこで,分子シミュレーションに利用されることが多いマルチコアCPUをクラスター化したヘテロ分散環境を想定し,マルチコア/マルチスレッドシステムの負荷分散アルゴリズムめ開発に着手した.
著者
和泉 司
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

主として1926年に始まった文学懸賞である『サンデー毎日』大衆文芸の調査のため、『サンデー毎日』及び競合誌であった『週刊朝日』や同時代の文芸誌、特に大衆文芸誌、文芸同人誌の資料収集を行った。『サンデー毎日』については、国立国会図書館、東京・日本近代文学館に加え、大阪市立大学図書館所蔵のバックナンバーを利用させていただいた。また、1940年に『サンデー毎日』大衆文芸の当選を足がかりに文壇に登場した作家である長崎謙二郎と田村さえに関する調査も進めた。両者は同期当選をきっかけに知り合い、後に夫婦となっているが、両者の家族と連絡を取ることができ、私蔵されていた多くの関連資料を分けていただいた。その多くは現在散逸しているか、あるいは作家間の私信であり、当選作家のその後の文学活動を理解する上で大変貴重な資料である。加えて、1940年代に少女小説家・戯曲作家として活発に活動した作家・田郷虎雄の日記翻刻も着手した。この日記も、田郷の家族から預かったものであり、1940年から45年までの、文学懸賞当選作家の戦時下での文学活動が詳細に描き込まれており、その公開は今後の日本文学・文化研究に大きく資するものになると考えている。他に、『文藝首都』研究会に参加することで、同人誌である『文藝首都』の誕生経緯と、同誌が多くの新進作家を輩出し、その作家達が次々に文学賞を受賞していく過程において、同人誌運営と文学活動・文学賞の関わりを明確にまとめ始めている。
著者
レヴィン デイヴィッド レッドフィールド マイケル "ルーブ" フィゴニ ウイリアム
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
雲雀野 : 豊橋技術科学大学人文科学系紀要 (ISSN:0388757X)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.127-137, 2006-03-31

本論は日本の大学で工学を専攻する日本人学生を対象とした読解力についての研究である。被験者となる学生は3つの大学に及び,学生の日本語と英語での読解力の差を検討した。日本語と英語の読解力において学力の混在したクラスの学生(2大学)のほうが推薦入試によるクラス(1大学)より読解力が優れていた。本研究により日本語で読解力の劣る学生は英語での読解力が劣ることが窺がわれた。この点は今後の課題となった。
著者
相田 慎 箕輪 はるか
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

原発事故時による放射能リスクへの国民の不安は和らいでいるものの、企業・行政・報道への不信感は根強く、不安が解消されたとは言い難い。人々は、折に触れてこの問題について語らっていたであろうが、これは「人によって見解が異なる切実な問題」であり、「語ることへの躊躇い」があったと予想される。本研究課題では、日常会話に表出する(放射能リスク等の)科学の話題を「日常の科学コミュニケーション」と捉え、その場面獲得手法を提案し、話題が科学へ遷移する前後を詳細に分析する。 そして、「日常の科学コミュニケーション」の過去から今後とを観察し、放射能リスクという「時と共に変わりゆく問題」が変化する局面を俯瞰する。
著者
泉田 英雄
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

第一は個々の歴史的建造物の修理修復手法の調査と提案に関して、1)石巻市指定文化財「天雄寺観音堂」の修理計画作成から現地復原監修までを行い、2015年5月に竣工式を執り行うことができた。2)石巻市指定文化財「旧日本ハリストス正教会石巻聖堂」及び「観慶丸」の修理計画・工事に関して、石巻市近代建築修理活用調査研究委員会委員長として、修理計画と工事手法などをとりまとめた。3)気仙沼市内湾地区の登録文化財6棟の修理工事監修に関して、小野健商店土蔵は修理計画作成から工事監修まで行い、2015年度で修理工事を完了させた。角星酒造店舗は2016年半ばに完成予定である。第二は歴史的住環境の調査と修理修復再生手法の提案であり、1)石巻市長面浦の神山家修理と尾崎集落の再生のために、実測調査と修理計画作成を行った。2016年度は、この漁村の再生と一緒に事業構想を練らなければならない。2)気仙沼市旧市街地の歴史的建造物の調査に関して、三陸沿岸の歴史的都市の中で、気仙沼市の旧市街地は内湾地区を除くと津波被害から唯一よく残ったところで、現存建物の調査を行った。第三は歴史文化的資源の調査に関して、1)壁材としての凝灰岩と屋根葺き材としての天然スレートの調査を行った。仙台湾沿岸に産する凝灰岩を使った建築物の構造と設計手法に関して考察を行った。引き続き、天然スレートの使用例、施工方法などの調査を行った。2)気仙大工と左官の技術の解明に関して、石巻市の遠藤家の実測調査を通して、建築技術と設計手法に関する視点を明らかにした。柱寸法が1本1本異なり、他の建具が流用できないことは驚きであった。気仙大工が活躍した場所にはすぐれた意匠の土蔵が見られることから、気仙の大工と左官は密接な関係があったと考えられる。所属大学からの支援が得られないことから本研究事業の継続は断念するが、2年間でやり残した課題は退職後も継続していく。
著者
吉田 祥子 穂積 直裕 福田 敦夫
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

自家開発した酵素光学デバイスにより培養初期のグリア細胞からGABA放出が観察され、一方培養後期のグリア細胞でGABA放出が著しく減弱した。インピーダンス顕微鏡を用い細胞膜直下のアクチン線維の安定性によるインピーダンスの変化を非接触で観察した。抗てんかん薬バルプロ酸の投与は、初期のグリア細胞からのGABA放出を増大し、早いATP放出を示し、プルキンエ細胞樹状突起の伸長を早めた。GABA-トランスポータ系が小脳発達を制御する可能性を示唆した。バルプロ酸の作用機序とHDAC阻害剤の関係は未だ不明だが、胎生期の特定時期での遺伝子発現への介入が、GABA放出と小脳発達に影響することが強く示唆された。
著者
三浦 均也 前田 健一 窪内 篤 菅野 高弘 大塚 夏彦
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、港湾地域における岸壁等の施設の耐震性能を高度化することであり、地震時における地震時土圧の特性を明らかにし、より合理的で経済的な地震時土圧の評価法および耐震設計法を開発することである。この目的を達成するために、北海道釧路港で実施していた「実大重力式岸壁の地震時挙動観測」で得られるデータの収集、分析・評価を進め、地盤の液状化に関連した岸壁の被害メカニズムを明らかにするとともに耐震設計の提案を行った。研究成果の概要および特徴は以下の通りである。「研究の独創性」 阪神淡路大震災で生じた港湾施設の甚大な被害に対して、これまでの耐震設計の枠組みの中で設計地震衝撃力を増大させ構造物が長大化させる考え方が主流であった。しかし、本研究ではこれまでの震度法にとらわれない。構造物の振動特性と液状化対策の効果を適切に反映できる独創的な地震時土圧評価法および耐震設計法を提案し、その検証を観測結果に基づいて検証することができた。「研究の実用化の可能性」 2003年十勝沖地震における観測結果を解析することによって、地震時における岸壁の挙動メカニズムが明らかになり、提案していた地震時土圧の評価法も検証することができた。現在をこの評価法を取り入れた耐震設計法の開発を終え、1年以内に行われる港湾構造物の耐震設計法の改訂という形で研究の成果が実用化されることになった。また、試験岸壁の建設時や建設後長期間に渡る観測においても岸壁挙動の重要な知見が得られ、これらは岸壁の施工管理や維持管理において今後実用化される予定である。「研究の達成度」 当初予定していた現地観測と耐震設計法の開発を予定通り達成することができた。2004年9月26日には十勝沖地震が発生し試験岸壁は震度5強の衝撃力を受けた。試験岸壁の背後地盤は液状化し、岸壁には地震時特有の変形が生じ機能が深刻な損傷を受けた。地震衝撃力による液状化を伴う岸壁の被害を観測によって捕らえることに成功したため、観測結果の解析と耐震設計法の検証は説得力を持って予定通り達成することができた。「研究の学問的発展への貢献度」 このような実大岸壁の背後地盤の液状化を伴う地震時挙動を得たのは世界的にも初めてである。地震時挙動の観測によって得られたデータは、2005年1月17日から1年間インターネットで世界の研究者に公開している。このデータを用いた研究成果を持ち寄り2005年9月には国際会議を開催する予定であり、この分野の学問的発展に大きく寄与するものと期待している。また、このような前例のない観測を通じて観測方法や試験方法についても重要な知見を得ることができた。
著者
山本 眞司 江崎 修央 清田 公保
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は,視覚障害者,特に文字を覚えている中途失明者のための日本語入力システムに関する研究である.タブレットペンによりオンライン手書き入力をし,認識結果を音声で返して編集作業を行う形式であり,このシステムにより晴眼者との電子メールのやり取りを可能にすることをめざした.本研究期間中に取り上げた主な研究項目と結果は以下の通りである.(1)視覚障害者が書く漢字のデータベース作り.視覚障害を持つ人から大量の文字サンプルを入手することは困難を伴うので,晴眼者の目隠し状態での疑似データを含めることとし,最終的に3216文字種,約10万文字のデータを収集,蓄積した.(2)オンライン文字認識アルゴリズム(1文字単位)の高度化.教育漢字1000字程度を対象とした基礎的なアルゴリズムの開発をさらに発展させ,JIS第1水準漢字,ひらがな,カタカナ,記号,アルファベットなど3216字の文字種に拡大し,この文字種拡大に伴う文字認識精度の低下を補うためにアルゴリズムの一層の高度化をはかった.(3)単語単位,文節単位の認識文字修正アルゴリズムの開発1文字単位の文字認識に失敗した場合の単語単位ないし文節単位の認識文字修正アルゴリズムを2種類追加開発し,全体としての精度改善を果たした.(4)視覚障害者用の文字入力・計算機制御用(マンマシンインタフェース)デバイスの開発.視覚障害者にとって利用しやすいデバイスとして,右手にペン入力デバイス,左手に5本の指に対応したボタン操作を基本とした構造を試作し,複数の視覚障害者に実際に試用して貰うことによりシステムの最適化を図った.(5)文書処理全般に対する視覚障害者用の計算機制御方式の開発.ファイルの管理,文章修正,既存データの利用など日本語入力システムとして障害者と計算機との対話をどのような構造で実現するかが問題であり,(4)項の入力,計算機制御デバイスとも関連して視覚障害者がもっとも利用しやすいシステム構成を検討した.特に視覚障害者が電子メールを自由に取り扱うことが出来ることを目的としたメール送受信、ファイリング関係の充実を重点的に図った.
著者
和泉 司
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究計画は、戦前の総合雑誌『改造』が昭和初期から企画した〈文学懸賞〉である『改造』懸賞創作が、日本の近代文学の展開に与えた影響と意義について調査・分析したものである。有名雑誌の『改造』が新人の純文学テクストを定期的に募集し、それを誌上に掲載したことは、日本の〈文壇〉を大きく変容させた。一方で、授賞作家たちは〈懸賞作家〉と呼ばれ、コネクションや閥の力が強い〈文壇〉の中で活動するための十分な環境を得られず、数作で消えていったり、戦争協力に積極的になる者も多かった。本計画を通して、現在の〈文学賞〉中心の日本近現代文学の状況を、『改造』懸賞創作の生滅が象徴していることを示した。
著者
吉田 祥子 穂積 直裕
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

自閉症または神経変性誘発が疑われる化学物質である、バルプロ酸(VPA)、トリコスタチンA(TSA)、クロルピリホス(CPF)、リポポリサッカライド(LPS)、グリホサート (GLY)を胎生期ラットに曝露し、VPA、TSAで神経死の過剰抑制、CPF、LPS、GLYで過剰神経死を観察した。神経死は炎症性サイトカイン発現と相関があり、特にGLYでは発達依存的にサイトカインの上昇が見られた。同時に現れる小脳褶曲の変化は別の機序を持つことが示唆された。VPA曝露動物の行動はADHD様、GLY曝露動物はASD様を示した。VPA曝露へのオキシトシンの投与、GLY曝露への酪酸投与で神経発達異常が軽減した。
著者
松本 博 増田 幸宏 源城 かほり 近藤 恵美
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,観葉植物のもつグリーンアメニティ効果に着目し,植物の熱・湿気環境調整効果及び化学物質除去効果を定量的に評価し,模擬オフィスと実オフィスを対象とした被験者実験により,観葉植物がオフィスワーカーの心理・生理反応及びプロフダクティビティに及ぼす影響を定量的に解明し,その経済性評価法及び室内環境デザイン手法の開発を行った。その結果,室内植物の種類や量がオフィスワーカーのメンタルストレスの軽減やプロダクティビティの向上に与える影響を明らかにし,また,その経済性評価モデル及び室内環境デザイン手法の妥当性を検証した。
著者
櫻井 庸司
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究において,カルシウムイオン電池用材料候補として数多くの1D,2D,3D構造化合物を合成・評価した。これら材料の物理化学特性ならびに電気化学特性評価により,Ca0.5CoO2およびNiFe-PBAはともに,Ca2+イオンの挿入・脱離反応を伴って充放電可能であることが初めて明らかとなり,カルシウムイオン電池用正極材料として有望であることがわかった。
著者
今井 正治
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1985

今年度は、ゲーム木探索の並列化に関する研究を中心に行った。その結果、次のような成果が得られた。チェス、将棋、囲碁等の完全情報2人零和ゲームはminimaxゲーム木で表現され、ゲーム木を解くことで両者が最適な手を選んだ場合の結果を知ることができる。この目的のためにα-β法、SSS*法などの探索法が提案されている。これらの探索法を用いても、ゲーム木探索に要する計算量は、ゲーム木の高さに応じて急速に増加することは避けられない。そこで、複数の処理装置を持つ並列計算機を用いることにより、探索時間を減少させる方法が考えられる。本研究では、それらをm台の処理装置を持つ並列計算機上で実行することを考え、並列計算機向きの5種類の並列探索法を提案した。また、これらの探索法の計算時間が処理装置の台数mとともにどのように変化するかを理論的に調べた。その結果、1台の処理装置の場合に対する速度向上比がmより大(加速異常)になり得ること、および1より小(減速異常)になり得ることが知られた。また、本論文で考察した5種類の探索法では減速異常は生じないことを証明した。次に、探索法の全般的な挙動をシミュレーション実験によって評価した。その結果、処理装置の台数mの増加に伴い、計算時間が常に減少することは確認できたが、速度向上比はmよりかなり小さくなることも明らかになった。しかし、探索法によって、速度向上比にかなり変動がみられるので、並列化により適した探索法を工夫することで、速度向上比をさらに改善し得る可能性がある。本研究で試みた探索法の中では、有資格探索が探索時間の大きさと速度向上比の両方の観点から、他に比べ良い結果を与えることが知られた。
著者
柴富 一孝
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

トリフルオロメチル基は医農薬品の機能向上のために汎用される置換基である。今回我々はβ-フルオロメチルアクリル酸エステルの不斉Diels-Alder反応により,不斉炭素上にフルオロメチル基を持つシクロヘキセン類を高エナンチオ選択的に合成することに成功した。さらに,4,4,4-トリフルオロクロトンアルデヒドへの不斉マイケル付加反応にも成功した。得られたトリフルオロメチル化合物は医薬品候補分子の有用な中間体となる。