著者
夏堀 摂
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.11-22, 2001-11-30 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
5 1

本研究の目的は、障害種別による母親の障害受容過程の差異を検討することである。対象者は、自閉症児の母親55名とダウン症児の母親17名。調査は質問紙法を用い、選択方式および自由記述方式で回想法により回答を求めた。その結果、以下の点が明らかになった。(1)種別によって、障害の疑い、診断、療育開始の時期、心理的混乱がもたらされる時期に有意差が認められた。(2)受容までに要する時間は、ダウン症群に比べ自閉症群の方が有意に長かった。(3)障害種別間で有意な関連が認められた7つの変数は、診断の困難さに関係している変数であった。(4)自閉症児の母親の心理的反応には、障害の疑いから診断までの第一次反応と診断後に生じる第二次反応があった。診断が確定され障害認識に至っていても新たな問題の生起によって、母親の障害受容は阻害されていた。
著者
夏堀 摂
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.42-54, 2007-05-31 (Released:2018-07-20)

本稿では,障害児者とその親がおかれた状況の一端を明らかにするために,戦後の「親による障害児者殺し」事件の推移に注目し,過去の新聞報道を基に分析を行った.その結果,(1)未成年の障害児が被害に遭う事件が1980年代以降減少しているのに対し,成年障害者の被害は1990年代以降急速に増加していること,(2)1990年代以降知的障害児者の被害が増加していること,(3)同時期に特に成人期の知的障害者が殺される事件が急増していること,(4)在宅・同居の場合に事件が起こることが圧倒的に多いが,施設に入所していたにも関わらず被害に遭うケースも散見されること,(5)1990年代以降高齢の親による加害が増加していること,が明らかとなった.以上の結果をもたらした要因を,各時代の社会的背景をも考察しつつ検討し,そこから親を中心とする家族が第一義的にケアを負担するシステムの矛盾を指摘した.
著者
夏堀 摂
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.11-22, 2001-11-30
被引用文献数
7

本研究の目的は、障害種別による母親の障害受容過程の差異を検討することである。対象者は、自閉症児の母親55名とダウン症児の母親17名。調査は質問紙法を用い、選択方式および自由記述方式で回想法により回答を求めた。その結果、以下の点が明らかになった。(1)種別によって、障害の疑い、診断、療育開始の時期、心理的混乱がもたらされる時期に有意差が認められた。(2)受容までに要する時間は、ダウン症群に比べ自閉症群の方が有意に長かった。(3)障害種別間で有意な関連が認められた7つの変数は、診断の困難さに関係している変数であった。(4)自閉症児の母親の心理的反応には、障害の疑いから診断までの第一次反応と診断後に生じる第二次反応があった。診断が確定され障害認識に至っていても新たな問題の生起によって、母親の障害受容は阻害されていた。
著者
夏堀 摂
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.23-33, 2003-07-31 (Released:2018-07-20)
被引用文献数
5

本稿では,障害児の親がになわされてきた「親役割」を明らかにし,見直すための作業の端緒として,「親の障害受容」を1つの鍵概念とし,現代日本における「障害受容」論の2つの主要な流れである「共同療育者」論と「認識変容」論について検討した.前者は親が「共同療育者」としての役割を果たすために,後者は障害児の「代弁者」となるための「認識変容」として,「受容」を位置づけるものである.これらの検討を通じて,それぞれの研究のなかに埋め込まれた「望ましい」とされる親像が専門家や研究者によって描かれ,メッセージとして発信されてきたことが明らかになった.