著者
Marita S. PINILI Dewa Nyoman NYANA Gede SUASTIKA 夏秋啓子
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.125-134, 2011-09-30
被引用文献数
1

バナナ(Musa spp.)はインドネシアのバリ島において果物としてだけでなく調理用としても重要であり,また,宗教儀式でも多用される。4年ほど前までバリ島においてバナナバンチートップウイルス(Banana bunchy top virus ; BBTV)による被害はほとんど認められなかったが,近年,急速に被害が広がったことを観察した。そこで,バリ島のバナナにおいて,BBTVと,同じくバナナの重要ウイルスであるBanana bract mosaic virus(BBtMV)の検出を血清学および分子生物学的技術で実施した。その結果,2種のバナナ品種Pisang Sari(AAB)とPisang Susu(AAA)からBBTVが検出され,そのDNA-Rの 全塩基配列を解析したところ,アジアグループに属し,また,ジャワ株,フィリピン株などとの類縁度が高いことが明らかになった。しかし,BBrMVは検 出されなかった。多くのバナナがジャワ島からバリ島に移入されており,また,病害に対する特段の防除が行われておらず,さらにBBTVの媒介虫 (Pentalonia nigronervosa)の存在が,BBTVの侵入と拡大に寄与したと考えられた。
著者
Sankari Shadi Chikh Ali Mohamad 片山 克己 三木 信雄 Said Omar Abdul Mohasen Sawas Ahmad Bahij 夏秋啓子
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.109-114, 2007-09-20
被引用文献数
1

ジャガイモYウイルス(PVY)はシリアのジャガイモ生産における主要ウイルスの一つとされ,ジャガイモ生産の阻害要因となっている。PVY感染の無い種イモの生産と供給が主要な防除手段であるが,そのためには,効果的なウイルス検査法が必要である。酵素結合抗体法(ELISA)は複数種類のジャガイモウイルス検出には最も一般的な技術であるが,それぞれのウイルスに対して特異的な抗血清が利用できることが必須条件となる。本研究では,シリアに発生したPVY分離株を純化し,ウサギに免疫することにより抗血清をはじめて作製した。この抗血清を利用し多くのシリア産PVYを用いたELISAによる検討では,市販の抗血清と同等の検出能力を有し,両抗血清間に結果の相違は認められなかった。また,非特異的反応も生じなかった。さらに,検出限界は高かった。以上より,本研究ではシリアで分離されたPVYに対して初めてシリア国産抗血清を得ることができ,抗血清の恒常的輸入を不要にしたことに大きな意義があると考えられる。