著者
三木 信雄 久保村 安衛
出版者
農林水産省農業生物資源研究所
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-29, 1993 (Released:2012-09-24)

微生物遺伝資源事業における糸状菌の安定的長期保存を順調に進めるため,液体窒素保存法について2,3の実験を行い次の結果を得た.1)凍結保存前に5~10℃の低温に処理した菌株は解凍後の菌糸の伸長が良好であった.2)凍結保存1月後の167属371種915菌株の生残率は95.6%,凍結保存1年後における120属287種722菌株の生残率は97.1%を示し,多数の菌種において,凍結速度を制御しない簡便な方法で凍結保存できることがわかった.3)Coprinus,Diaporthe,Fomilopsis,Fusarium,Phaeolus,Pyricularia,Rhizoctonia,Sclerotium,Selenophoma,Waiteaの各属に属する糸状菌には生残率が低い菌種が含まれており,凍結方法の検討が必要である.4)上記以外の多数の菌種,菌株は液体窒素気相中で凍結保存できることが明らかになった.
著者
Sankari Shadi Chikh Ali Mohamad 片山 克己 三木 信雄 Said Omar Abdul Mohasen Sawas Ahmad Bahij 夏秋啓子
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.109-114, 2007-09-20
被引用文献数
1

ジャガイモYウイルス(PVY)はシリアのジャガイモ生産における主要ウイルスの一つとされ,ジャガイモ生産の阻害要因となっている。PVY感染の無い種イモの生産と供給が主要な防除手段であるが,そのためには,効果的なウイルス検査法が必要である。酵素結合抗体法(ELISA)は複数種類のジャガイモウイルス検出には最も一般的な技術であるが,それぞれのウイルスに対して特異的な抗血清が利用できることが必須条件となる。本研究では,シリアに発生したPVY分離株を純化し,ウサギに免疫することにより抗血清をはじめて作製した。この抗血清を利用し多くのシリア産PVYを用いたELISAによる検討では,市販の抗血清と同等の検出能力を有し,両抗血清間に結果の相違は認められなかった。また,非特異的反応も生じなかった。さらに,検出限界は高かった。以上より,本研究ではシリアで分離されたPVYに対して初めてシリア国産抗血清を得ることができ,抗血清の恒常的輸入を不要にしたことに大きな意義があると考えられる。