著者
井上 秀範 吉井 新平 高橋 渉 喜納 五月 多田 祐輔
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.237-242, 2001-06-20 (Released:2011-08-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

症例は70歳男性. 平成12年2月, 胸部不快感および持続する右胸部痛を認めたため近医を受診し右肺梗塞の診断で線溶療法を中心とする加療するも軽快せず, 精査加療目的にて当院に紹介された. CTおよびMRIにて一部肺動脈壁外に浸潤する右主肺動脈をほぼ完全に占拠した陰影を認め, Gaシンチグラフィーでは右肺門部に集積像を認めた. 肺動脈造影では右主肺動脈をほぼ閉塞する球状かつ辺縁平滑な腫瘤影を認め, 右内胸動脈および右気管支動脈造影では, 腫瘍の部位に一致して腫瘍濃染像を認めた. 肺動脈造影時に施行した吸引組織診で血管肉腫と診断された. 他の全身検索では転移巣を認めず, 胸骨正中切開によるアプローチで右肺全摘術及び縦隔リンパ節隔清術を施行した. 術後病理組織所見では肺動脈原発のintimal sarcomaと診断され, 右下葉に肺内転移を認めた. 現在術後10ケ月経過するが, 再発の徴候はない.以上, きわめて稀な右主肺動脈原発肉腫を経験した. 文献上術前に診断しえた本邦5例目の症例であるので報告した.
著者
腰塚 浩三 西田 広一郎 武藤 俊治 中込 博 高野 邦夫 多田 祐輔 三俣 昌子
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.775-779, 1996-03-01
参考文献数
19
被引用文献数
3

我々は上行結腸のT細胞由来の悪性リンパ腫を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は84歳の女性.主訴は右下腹部痛,発熱.現病歴は平成3年9月主訴出現し,近医にて,右下腹部腫瘤を指摘され当科紹介入院となる.入院時現症:右下腹部に4×5cm大の弾性硬,可動性不良,表面やや不整の腫瘤を触知した.表在リンパ節は触知しなかった.注腸造影X線検査,腹部CTにて上行結腸癌と診断し,平成3年10月18日手術を施行した.手術所見は上行結腸に手拳大の腫瘍を認め,右半結腸切除術と大腸癌のD_2に準じたリンパ節郭清を行った.切除標本では腫瘍は5.0×5.5cm大で,病理組織所見では,腫瘍細胞は,UCHL-1(T)陽性,L26(B)陰性で,T細胞性悪性リンパ腫と考えた.大腸原発の悪性リンパ腫はまれで,ほとんどがB細胞由来とされておりT細胞由来のものは極めて少なく,予後も不良とされ,本例も2年後に再発死した.