著者
猪野 崇 秦 光賢 本間 琢 中田 金一 谷口 由樹 折目 由紀彦 秋山 謙次 三俣 昌子 塩野 元美
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.312-319, 2013-12-01 (Released:2014-12-30)
参考文献数
28

目的: 今回我々は大動脈外科における新しい 脳保護法及び体外循環法として軽度低体温循環停止・急速冷却復温法を考案した.従来法は,20°C の超低体温とし,復温も緩徐に行うことが一般的であった.我々は 28°C の軽度低体温・循環停止からの急速な温度変化によっ ても脳に対して影響しないと推測し,実験的検討を行った.方法:体重,約 40 kg のブタを用いて完全体外循環モデルを作成し,実験モデルを以下の 3 群 (各 n = 10) に分類した.A 群:直腸温 20°C の高度低体温で 20 分間の循環停止後,直腸温と人工心肺送血温の差を 5°C 以内に保ち,緩徐に 37°C まで復温する.B 群:28°C の軽度低体温で 20 分の循環停止後 A 群と同様に復温する. C 群:28°C 軽度低体温で 20 分の循環停止度後,38°C に加温した血液を送血することにより急速に復温する.人工心肺開始前,冷却完了時,復温開始時,復温完了時の 4 時点における血液生化学検査,CK-BB, S-100 及び脳組織血流,脳酸素分圧,頸静脈酸素飽和度について比較検討し,実験終了時に大脳皮質・海馬組織を採取し,病理学的に検討した.結果: 血小板数は復温完了時において A 群 が他の 2 群に比較し有意に低値であった.各測定時において BUN, Cr は群間に有意差はなかったが,復温完了時において AST は C 群が他の 2 群に比して有意に低値であり,LDH は A 群が他の 2 群と比較して有意に高値であった.CK-BB, S-100 は血中,髄液中ともに A 群が他の 2 群と比較して有意に高値であった.脳組織血流量は冷却完了時,復温開始時,復温完了時において A 群が他の 2 群と比較して有意に低値であった.脳酸素分圧に関しては復温開始時において,A 群が他の 2 群と比較して有意に低値であった.脳組織における細胞変性数は 3 群間で有意差は認められなかった.結論:28°C の軽度低体温循環停止に続く急速復温法は脳組織に対する影響は少なく,血液凝固障害の予防のためにもより有効な方法であると考えられた.
著者
腰塚 浩三 西田 広一郎 武藤 俊治 中込 博 高野 邦夫 多田 祐輔 三俣 昌子
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.775-779, 1996-03-01
参考文献数
19
被引用文献数
3

我々は上行結腸のT細胞由来の悪性リンパ腫を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は84歳の女性.主訴は右下腹部痛,発熱.現病歴は平成3年9月主訴出現し,近医にて,右下腹部腫瘤を指摘され当科紹介入院となる.入院時現症:右下腹部に4×5cm大の弾性硬,可動性不良,表面やや不整の腫瘤を触知した.表在リンパ節は触知しなかった.注腸造影X線検査,腹部CTにて上行結腸癌と診断し,平成3年10月18日手術を施行した.手術所見は上行結腸に手拳大の腫瘍を認め,右半結腸切除術と大腸癌のD_2に準じたリンパ節郭清を行った.切除標本では腫瘍は5.0×5.5cm大で,病理組織所見では,腫瘍細胞は,UCHL-1(T)陽性,L26(B)陰性で,T細胞性悪性リンパ腫と考えた.大腸原発の悪性リンパ腫はまれで,ほとんどがB細胞由来とされておりT細胞由来のものは極めて少なく,予後も不良とされ,本例も2年後に再発死した.
著者
三俣 昌子 江角 眞理子 楠美 嘉晃 安孫子 宜光 東 浩介
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

第一に血流下における内皮の増殖と粥状硬化発症の関連を検討した。層流性ずり応力に比べ乱流性ずり応力は内皮の増殖と単球接着を増加させた。内皮の増殖を抑制するp21^<Sdi/Cip/Waf1>(p21)は乱流による単球接着増加、内皮のTXNIP,VCAM-1,CCL5,CXCL10,L-selectin発現を抑制した。血流下でp21は単独で、または内皮の増殖抑制を介して、内皮のレドックスバランスを抗酸化状態へ導き、接着や遊走因子発現を阻止し、単球接着を抑制して抗粥状硬化性に作用すると思われる。第二に、粥状硬化発症への歯周病菌(Pg)の関与を検討した。ヒト大動脈のAtheromaのマクロファージにPg由来r40kDa蛋白が存在し、Fatty streak,DIT、冠動脈のAtheromaには認めなかった。Pg由来LPSで刺激した単球の培養上清は内皮のTLR2 mRNAを発現させ好炎症性に作用した。