著者
久保 秀文 中須賀 千代 多田 耕輔 宮原 誠 長谷川 博康 小野寺 学
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.161-164, 2013-08-01
参考文献数
9

われわれは急性の閉塞に対してステント留置を行い一期的な切除手術が可能であったS状結腸癌の1例を経験したので報告する.症例は71歳,男性.北海道を旅行中に突然の腹痛を来して地域の病院へ入院となった.検査でS状結腸に腫瘤を診断されたが,患者が地元(山口県)での手術を希望したため閉塞に対して金属ステントが留置された.ただちに腹痛は消失し多量の排便を認め,その後当院へ紹介入院となった.S状結腸切除術が施行されたが術後経過は良好であり術後第10病日目に軽快退院した.患者は現在も再発徴候なく健在である.急性の大腸閉塞に対して術前の金属ステント留置は侵襲が少なく複数回の手術を回避することができ有用な方法と考えられる.
著者
宮原 誠 西山 光郎 吉田 久美子 一宮 正道 多田 耕輔 藤田 雄司 秋山 紀雄 久保 秀文 長谷川 博康 宮下 洋
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1+2, pp.29-34, 2011-04-30 (Released:2011-07-01)
参考文献数
36
被引用文献数
1

症例は37歳,男性.トラックの荷台から飛び降りた際,立てかけてあった熊手の柄が肛門より刺入した.柄を自己抜去した後,肛門出血および疼痛が出現し当院救急搬送された.受診時,下腹部に軽度圧痛があり,肛門の5時から8時の方向にかけ挫傷を認めた.腹部CTで右傍直腸腔内に血腫および遊離ガスを認め,注腸造影で造影剤の腸管外への漏出を認めた.以上より,杙創による直腸穿孔と診断し緊急手術を施行した.開腹時,右傍直腸腔内に血腫,体毛,衣服の断片が存在し,直腸Rb部右壁に1.8cm大の穿孔を認めた.穿孔部を縫合閉鎖し,S状結腸を用いた人工肛門を作成した.また経肛門的に裂創部粘膜を縫合した.経過は良好で術後25日目に退院,8ヵ月後に人工肛門を閉鎖し完治した.杙創において,会陰部や肛門周囲から刺入した場合には骨盤内臓器や腹腔内臓器を損傷する危険性があり,受傷早期に臓器損傷の有無とその程度を把握し,これに応じた治療を迅速に行う必要がある.また体腔内に異物が存在することもあり注意すべきであると思われた.