著者
大上 麻由里 大上 研二 西尾 信哉 宇佐美 真一
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.148-154, 2021 (Released:2021-11-25)
参考文献数
14

次世代シーケンサー時代になり,稀な症候群性難聴の正確な診断ができるようになった.今回我々は,信州大学との共同研究にて行われた難聴の遺伝子解析研究により,症候群性難聴の原因遺伝子変異が同定された症例から,特に症候群性難聴の早期診断意義について考察した.遺伝学的検査により症候群性難聴を早期に診断することは,随伴症候の早期治療開始を可能にするだけではなく,手術など難聴治療にも必要な情報を提供することが可能になるなど早期介入に有用であった.また,随伴症状による問題を発症前に理解することで,サポート体制や療育の見直しにつながる場合もあった.次世代シーケンサーを用いた網羅的解析により症候群性難聴が随伴症候発現前など,より早期に遺伝学的に診断可能となってきたが,予測される随伴症状への早期からの対応も可能となり,部分的にしか症候を有さない非典型例の確定診断,随伴症状への早期からの対応や,将来を見据えた治療法の選択など様々なメリットがあることが明らかとなった.