著者
田村 悦代 山田 千積 飯田 政弘 大上 研二
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.9, pp.1175-1182, 2020-09-20 (Released:2020-10-01)
参考文献数
22
被引用文献数
1 2

健診受診者で音声に対する明らかな症状を訴えていない健常な中高年齢者の音声機能を測定, 加齢による変化を検討し, 音声治療への対応について言及した. 対象は, 2016年9月~2018年9月までの抗加齢ドック受診者302名で, 3つの年代群に分けて検討した. 発声機能検査装置を用いて, 5種類の発声 (楽な声, 最も強い声・最も弱い声, 最も高い声・最も低い声) における基本周波数, 音圧, 呼気流率および最長発声持続時間を測定した. さらに, 基本周波数, 音圧, 呼気流率について, それぞれ2者の関連を検討し, 発声調節の変化についても考察した. 加齢と共に, 声域は狭くなり, 基本周波数では, 男性では, 楽な声や最も低い声で上昇し, 最も高い声では低下していたが, 女性では全体的に低下していた. また, 呼気流率では, 男性では加齢とともに4種類の声で増加していたが, 女性では年代ごとの有意差は見られなかった. 各パラメータ相互の関連から最も強い声は, 呼気流率との関連が男女共通して認められたが, 最も弱い声では, 性や年齢により基本周波数や呼気流率と音圧の関連が異なっていた. 以上の結果により, 加齢による音声機能の変化が男女で異なることが推測され, 音声治療施行に際して, 男性では, 過緊張発声状態を緩和するリラクゼーションを主体とした音声治療を, 女性では, 基本周波数の調節を主体とした包括的音声治療などが推奨される.
著者
大上 研二 戎本 浩史 槇 大輔 酒井 昭博 飯島 宏章 山内 麻由
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.81-85, 2019 (Released:2020-06-10)
参考文献数
22

頭頸部癌の発がん因子として新たに注目されているヒト乳頭腫ウイルス(HPV)は,国内外でHPV癌の関連中咽頭癌の頻度は急増している.治療法にかかわらず予後良好であるため,TNM分類もHPV関連の有無で分けられている.本稿では外科的治療を中心に治療法の低侵襲化と予後について,現在進行中の観察試験や臨床試験を踏まえて概説する.
著者
大上 麻由里 大上 研二 西尾 信哉 宇佐美 真一
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.148-154, 2021 (Released:2021-11-25)
参考文献数
14

次世代シーケンサー時代になり,稀な症候群性難聴の正確な診断ができるようになった.今回我々は,信州大学との共同研究にて行われた難聴の遺伝子解析研究により,症候群性難聴の原因遺伝子変異が同定された症例から,特に症候群性難聴の早期診断意義について考察した.遺伝学的検査により症候群性難聴を早期に診断することは,随伴症候の早期治療開始を可能にするだけではなく,手術など難聴治療にも必要な情報を提供することが可能になるなど早期介入に有用であった.また,随伴症状による問題を発症前に理解することで,サポート体制や療育の見直しにつながる場合もあった.次世代シーケンサーを用いた網羅的解析により症候群性難聴が随伴症候発現前など,より早期に遺伝学的に診断可能となってきたが,予測される随伴症状への早期からの対応も可能となり,部分的にしか症候を有さない非典型例の確定診断,随伴症状への早期からの対応や,将来を見据えた治療法の選択など様々なメリットがあることが明らかとなった.
著者
鈴本 典子 五島 史行 齋藤 弘亮 金田 将治 関根 基樹 大上 研二 飯田 政弘
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.541-548, 2020
被引用文献数
1

<p> Dizziness can arise from diverse causes. According to reports, 20%-80% of patients presenting with vertigo have psychogenic vertigo. Diagnosis of psychogenic vertigo is not always easy. Until date, there is no objective examination tool for the diagnosis of psychogenic vertigo. Therefore, it is important for physicians to evaluate patients presenting with vertigo both physically and psychologically in order to make a definitive diagnosis of psychogenic vertigo. Posturography is the conventional method for evaluating the postural perturbation in patients with vertigo or dizziness, and there are many ways of analyzing the results of posturography. One such method is with the use of the "gravichart," and a characteristic finding in patients with psychogenic vertigo is a teardrop-shaped "gravichart." However, the detailed characteristics of patients showing the teardrop-type "gravichart" are still unknown. In this study, we attempted to identify the clinical importance of the teardrop-shaped "gravichart" in patients with psychogenic vertigo. While many patients with a teardrop-shaped "gravichart" are diagnosed as having psychogenic vertigo, not all patients with psychogenic vertigo show a teardrop-shaped "gravichart". Thus, while a teardrop-shaped "gravichart" may be useful for the diagnosis of psychogenic vertigo, it is necessary to clarify what types of patients with psychogenic vertigo show a teardrop-shaped "gravichart" in a future study.</p>
著者
槇 大輔 大上 研二 戎本 浩史 酒井 昭博
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.8-11, 2019 (Released:2019-06-29)
参考文献数
7

頭頸部癌治療が完了し癌を克服した患者(Cancer survivor)においては,癌治療後のQOLすなわちQuality of Survival (QOS) が重要となる。当院で取り組んでいる頭頸部癌支持療法のうち,嚥下機能評価と肩関節リハビリテーションについて紹介する。 当院では頭頸部癌再建手術において医師だけではなく摂食・嚥下障害認定看護師を中心としたスタッフが術後の摂食状況の確認や食形態の調整を行っている。周術期の嚥下機能評価や摂食機能療法に関するケア基準の導入によって術後経口摂取までの期間短縮や段階的な食事形態のアップが可能となった。 また,頸部郭清術後のshoulder syndromeを軽減するために,術直後の肩関節の機能や術式に合わせてエクササイズの方法と強度を設定し,セルフトレーニングを自宅でも継続できるよう取り組んでいる。予防的頸部郭清においてLevelⅡB領域の郭清を省略することによって,術直後の肩関節機能とQOLが改善した。