著者
大塩 猛人 日野 昌雄 大下 正晃 檜 友也 後藤 隆文 秋山 卓士
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.768-774, 2002
参考文献数
36
被引用文献数
4

【目的】乳児の臍ヘルニアに対する治療方針は論議の多いところである.自然経過観察と絆創膏固定を施行した場合の治癒結果について比較検討し報告する.【対象と方法】臍ヘルニアで受診した乳児を対象とし, 経過観察(A施設)と絆創膏固定(B施設)を別個に施行し, prospectiveに1998年1月から1999年12月までの2年間の治癒結果を調べた.なお, 出生体重1, 500g以上で生後6カ月までの初診例に限った.有意差検定はχ^2およびStudent's testで行い, p<0.05を有意とした.【結果】A施設 : 36例が受診し, 24例において2000年末まで経過が観察された.自然治癒が19例にみられ, その時期は生後2カ月から2歳3カ月(平均7.6±5.3月)であった.なお, 11例(45.8%)は生後6カ月末までに, 6例(25%)は12カ月までに治癒した.B施設 : 115例が受診し, 102例において最終結果が判定できた.治療開始は日齢25日から4カ月4日(平均59.9±18.9日)で, 生後54日から209日(平均107.9±29.6日)に固定を終了した.生後6カ月末までに全例が治癒した.生後6カ月末までの治癒率では, 経過観察群と絆創膏固定群との間に有意差を認めた(p<0.01).【結論】乳児の臍ヘルニア治療法としての絆創膏固定はその早期治癒に有効であり, ヘルニア根治術を必要とする症例数を減少させるか, 手術そのものを避けることができる.