著者
藤枝 繁 小島 あずさ 大倉 よし子
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

太平洋を漂流する海洋ごみの流出地を明らかにするため,2010 年 4月から黒潮流域の伊豆諸島,小笠原諸島,北太平洋海流流域のミッドウェー環礁,ハワイ諸島,米国西海岸,黒潮上流域の台湾ののべ 307 海岸等において,14,647 本のディスポーザブルライターを採取した。ライターに記載された店舗名等から流出地を判別した結果,伊豆・小笠原諸島,ミッドウェー環礁,ハワイ諸島では,日本の太平洋沿岸を含む東アジアを流出地したものがほとんどを占めたが,台湾では日本からの漂着は見られなかった。
著者
Bryan Brett Carey Jan 大倉 よし子
出版者
オーストラリア学会
雑誌
オーストラリア研究 (ISSN:09198911)
巻号頁・発行日
no.10, pp.50-70, 1998-06-25

オーストラリアにおける生物多様性の保全は、多くの問題を抱えている。特に、土地固有種の個体数を管理しようとする野生生物管理計画は、極端に個体が増えすぎた場合駆除することを認めることから、論争の的となっている。ここではコアラを例にとり、問題点を探った。コアラの個体数は一部で深刻な減少を招いているが、他方南部の生息域では個体数が増えすぎ、土地特産のユーカリの群落の多くが消滅しつつあるケースも起こっている。コアラは選り好みが激しく、このユーカリ種を彼等がもっとも好むことから、将来的には食糧不足による個体数の激減が心配される。このためエコロジストや環境保護者の一部からは、適正な規模の個体数にとどめるため、駆除、すなわち銃による猟が提案された。しかし、コアラ保護団体やマスコミはコアラに対する同情心に訴えて運動を展開している。またほとんどのオーストラリア人はこうした駆除策には一線を引いていることもあって、コアラ管理の問題は政治化してしまった。オーストラリアの自然な生物相を守るためには、かわいい、抱きしめたくなるといった感情から離れて、生態系全体の中でのひとつの要素としてのコアラという、全体論的な視野が必要であり、一般の認識を変えるための教育が必要であろう。こうした考え方こそが、コアラ管理という問題から政治を引き離し、コアラの好む生息地の保全と個体数の維持を可能にするであろう。