著者
大倉 高志 Takashi Okura
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 = Hyoron Shakaikagaku (Social Science Review) (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.99, pp.97-135, 2012-03-15

本稿の目的は,警察,死体検案医,解剖担当者による自死遺族支援の可能性を検討することである.検討の結果,警察が自殺を装った殺人を疑うことが自死遺族を大きく傷つけていること,検案費用や解剖費用,検案書発行手数料の請求に明確な規定がないこと,検案医や解剖担当者が実施内容や結果について遺族への説明責任を果たしていないことなどが自死遺族の死別後の苦しみをさらに増大させている恐れがあることが分かった.警察は犯罪被害者支援の経験を活かし現場での支援実施責任者として自死遺族に特化した明確な支援を提供できること,検案医と解剖担当者は機転を利かせ積極的に警察と相談の上,遺族に結果を紳士的に説明し自死遺族に特化した支援を提供するなど,欠くことのできない重要な役回りを果たすことができることを指摘した.