著者
山村 りつ
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.99-111, 2015-07-25 (Released:2018-02-01)

本稿は2014年6月に行われた社会政策学会保健医療福祉部会のテーマ別分科会のなかで行った発表を元に作成されたものである。当初の発表では,合理的配慮の規定についての基本的部分を確認しつつ,実際に障害者と雇用主の間でどのように合理的配慮を形成していくのかという点について,実務的な観点から整理し,その課題を明らかにしていった。本稿では,その内容を踏まえた上で,分科会において示されたいくつかの質問,特に労働能力と賃金と配慮の関係性について焦点を移している。そして,合理的配慮の規定において重要な鍵となる,しかしこれまで日本においてあまり議論されてこなかった基幹的能力の概念を軸に,この問いに対する一つの答えを示すことを試みている。
著者
山村 りつ
出版者
同志社大学社会学会
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
no.91, pp.75-106, 2010-03

本稿では,ジョブコーチ型支援に関する日米の先行研究の比較研究から,わが国における研究の特徴と課題を明らかにすることを目的とし,論文検索データベースを用いて抽出した239件(日本85件,米国154件)について,その内容から7タイプに分類を行った.その結果,各タイプの分布状況における日・米の研究の特徴を示すのと同時に,縦断的な視点から,両国における時間的経過に伴う研究動向の変化に共通性があることを示した上で,わが国の研究における課題を示している.論文(Article)
著者
山村 りつ
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.116-126, 2012-01-20 (Released:2018-02-01)

障害権利条約への署名以降,わが国でもその批准に向けた議論が活発になり,それに伴って同条約に規定される「合理的配慮:Reasonable Accommodation」に注目が集まっている。条約の批准のためには,この合理的配慮について,何が(どこまでが)合理的な配慮であるのかという基準を示すことが不可欠となる。また,合理的とされる配慮が障害特性によって異なると考えられることから,その基準の設定には障害への特性を考慮することが求められる。そこで本稿では,合理的配慮の課題が表出される場であり,また判例の積み重ねによって合理的配慮の基準を構築していく手段でもある,アメリカの合理的配慮に関する裁判事例のレビューと分析から,精神障害特性のためにどのような合理的配慮が必要であり,その規定の実効力をもった運用においてどのような課題があるのかを明らかにしている。
著者
山村 りつ
出版者
同志社大学
雑誌
評論・社会科学 (ISSN:02862840)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.81-96, 2010-09

論文(Article)障害者自立支援法や障害者雇用率への算定など、精神障害者の就労と就労支援を取り巻く環境が大きく変化している。これらの制度上の改革は、多くの課題をもつ一方で、精神障害者の就労支援実践におけるさまざまな変化や活発化の一つのきっかけとなっている。それでは実際の精神障害者の就労・雇用の状況には、どのような変化が起きているのであろうか、実際に精神障害者の就労は増えているのか。本稿ではそれを明らかにするために政府統計を中心とした統計データの検討と考察を行っている。Employment of parson with psychiatric disabilities and its environment have changed recently, for example, the enforcement of "Services and Supports for Persons with Disabilities Act" or the start of applying the employment rate rule to person with psychiatric disabilities. Those changes have some problems, however, it trigger to gather attention for job support for person with disabilities, and to lead the changes and activation in that field. And then, what kinds of changes have been occurred in actual status of employment of person with psychiatric disabilities? As the most direct interest, have the number of employment of them increased? This question is the background of this study, and this article describes that investigation and consideration of government statistics about employment of parson with disabilities.