著者
大内 憲昭
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
vol.117, pp.189-231,

朝鮮民主主義人民共和国は2009年4月に1998年憲法を修正補充した。しかし最高人民会議で承認された憲法は公表されなかった。筆者が2009年9月に訪朝し、政府の関係機関から憲法テキストを入手し、朝鮮の憲法学者から改正内容に関して詳細な説明を受け、かつ質疑をすることができた。改正憲法は今日の朝鮮の政治状況を反映し、新たに「先軍思想」を規定し、国防委員会委員長を国の「最高指導者」とした。これにより1998年憲法以来「空席」であった「元首」の役割を国防委員会委員長が担うことになった。本稿では、朝鮮の憲法学者の講義を踏まえながら、憲法の改正点と特徴を明らかにしたいと思う。なお、2009年改正憲法全文を翻訳した。
著者
大内 憲昭
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.95-113,

本稿は、2002年に制定された朝鮮民主主義人民共和国の相続法に関する概説および条文の翻訳である。朝鮮における相続制度の規制は、建国時期から1980年代までは民法、1990年に家族法が制定されて以降、民法から家族法に変わった。2002年相続法の制定は、家族法からも分離されたことになる。朝鮮の相続制度が、財産的関係あるいは人格的(身分的)関係を主たる規制対象としているのかが問題となる。また2002年相続法は、これまで民法あるいは家族法で規制されていた内容を詳細なものとした。とくに法定相続、遺言相続に関しては詳細な規定を置いている。本稿では、民法、家族法、相続法における規制内容を比較することにより、2002年相続法の特徴を考察した。
著者
大内 憲昭
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.109, pp.1-55, 2006

本稿は、2004年朝鮮民主主義人民共和国刑法の概説および条文の翻訳である。社会主義朝鮮の刑法は、1950年に初めて制定されている。刑法、刑事訴訟法という刑事法関係は民事法に比べて建国初期には整備されている。刑法は、その後大きくは3度、全面改正されており、最新の改正法が2004年刑法である。2004年刑法は、1990年代から現在までの朝鮮国内外の政治、経済、文化状況を反映している。また従来の刑法とは異なり、近代刑法の基本原則である「罪刑法定主義」が規定されることにより、「類推解釈」等の50年刑法以来の朝鮮刑法を特徴付ける規定が削除されている。また厳罰化傾向も現れている。本稿では、2004年刑法の特質を従来の刑法との比較において考察するとともに、2004年刑法の構造自体の特質も検討している。