著者
大内 政嗣 井上 修平 尾崎 良智 藤田 琢也 上田 桂子 花岡 淳
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.170-176, 2014-03-15 (Released:2014-04-28)
参考文献数
18
被引用文献数
1 4

シカ生肉が感染源と考えられたウエステルマン肺吸虫症の1例を経験したので報告する.症例は49歳,男性.腹部不快感に続く気胸,胸水のため当科紹介となった.発症2週間前にシカ生肉の摂食歴があり,末梢血と胸水の好酸球増多から肺吸虫症を疑った.胸水が高度に混濁しており,膿胸を合併した自然気胸の可能性を否定できず,胸腔鏡下手術を施行した.横隔膜と壁側胸膜に多数の膿苔が認められ,下葉の臓側胸膜にも膿苔が存在していたため,胸膜生検と下葉部分切除術を行った.血清学的診断で肺吸虫症と診断,プラジカンテルにより治療し,好酸球増多は改善した.術後13ヵ月を経過し再発を認めていない.肺吸虫症例を疑う症例では早期に血清学的診断を行い,迅速にドレナージと薬物療法を行うことが重要である.また,肺吸虫症における胸腔内病変の存在部位はメタセルカリアの移動経路に一致しているものと考えられた.
著者
花岡 淳 井上 修平 大内 政嗣 五十嵐 知之 手塚 則明 北村 将司
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.606-612, 2009-05-15 (Released:2009-12-14)
参考文献数
8

症例1は85歳男性.20歳時に胸囲結核に対して手術療法を施行された既往があった.症例2は49歳男性.8ヵ月前まで肺結核に対して抗結核化学療法を施行されていた.両症例とも膿瘍内に腐骨を伴っており,抗結核化学療法開始1ヵ月後でも増大傾向を示した.そのため,注入したインジゴカルミン液をガイドに膿瘍郭清術および肋骨切除術を施行した.術後も抗結核化学療法を継続して行い,現在も再発を認めていない.胸囲結核症例に遭遇する機会は減少したが,胸壁腫瘤の鑑別診断にあげられることに留意しておく必要がある.治療には充分な抗結核薬の投与と適切な時期に徹底した膿瘍郭清を行うことが重要である.