著者
大原 信一郎 川崎 幸彦 陶山 和秀 小野 敦史 菅野 修人 鈴木 重雄 鈴木 順造 細矢 光亮
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.55-59, 2015 (Released:2015-10-15)
参考文献数
12

要旨 Wunderlich 症候群は重複子宮,片側子宮膣部閉鎖,同側の腎無形成を伴う稀な疾患である。患側子宮膣内に経血が貯留する月経困難症を契機として,10代前半以降に診断されることが多い。症例は11歳,女児。日齢3,初期嘔吐症の診断で近医に入院した際の腹部超音波検査(ultrasonography: US)で右腎無形成を指摘され,定期的にフォローされた。3 歳時の腹部US にて膀胱背部に囊胞性病変が確認されていた。11 歳時に腎機能および腎尿路・生殖器の形態評価目的に当科受診した。MRI 画像で右腎無形成,重複子宮,右側子宮頸部の囊胞状拡張を認め,膣鏡診にて右膣の閉鎖を確認し,Wunderlich 症候群と診断した。自覚症状は認めなかったが,月経発来後の12歳時,待機的に膣中隔切除・開窓術を施行した。自験例は,片側腎無形成に合併するWunderlich症候群を念頭におき,二次性徴発来時期にMRI による合併奇形の評価を行うことで早期診断し,待機的に手術し得た貴重な症例であると思われた。
著者
小野 敦史 細矢 光亮 鈴木 奈緒子 木下 英俊 村井 弘通 前田 亮 菅野 修人 大原 信一郎 陶山 和秀 川崎 幸彦
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.159-163, 2017

<p>前立腺囊胞性疾患は,外表奇形の合併がない場合,幼少期に発見されることは稀な疾患である。今回我々は,尿路感染症を契機に画像検査で偶発的に発見された前立腺小室囊胞の1 例を経験した。症例は1 歳男児。発熱と排尿時の啼泣,異常な尿臭を主訴に当科を受診した。膿尿の他,腹部の造影CT 検査と造影MRI 検査で膀胱と直腸の間に長径約40 mm の囊胞性病変を認めた。抗菌薬による治療で尿路感染症は改善し,その後の膀胱尿道鏡検査で前立腺小室囊胞と診断された。抗菌薬の予防投与で経時的に囊胞は縮小し,画像検査で確認できなくなったため,外科的切除は行っていない。現在,予防内服中止から1 年以上経過したが,再発は認めていない。小児の尿路感染症では,しばしば尿路異常を合併する例があるため,発症時には腎尿路系の精査を行うことも多い。自験例のように,前立腺小室囊胞が尿路感染症の合併症の1 つとして関与することを念頭に置く必要がある。</p>