著者
森本 哲司
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.70-75, 2013-04-15 (Released:2013-10-15)
参考文献数
18

腎臓は,水・電解質の調節機構の主役として,さまざまな生理的役割を果たしているが,胎生期は,その役割の多くの部分を胎盤が担っている。しかし,出生とともに著しい体外環境変化が生じるため,腎機能はこれにすばやく対応する必要がある。例えば,出生時の体表面積あたりの糸球体濾過率(GFR)は成人の20%,生後2週間で40%,生後2か月には50%となり,1~2歳ごろにほぼ成人レベルに達することが知られている。この急速なGFRの増加は1)出生後の腎血管抵抗低下,2)ネフロン数の増加,3)ネフロンサイズの増大によると考えられている。このGFRの増加に加え,離乳期にみられる尿濃縮力の成熟や水・電解質輸送の変化などが,体外環境への適応とともに成長と発達を保証するために腎臓内で起こる。本稿では,生後に起こるこれら腎機能(GFR,Na排泄能,尿濃縮機構など)の発達について概説する。
著者
石津 明洋
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.81-85, 2014 (Released:2015-05-11)
参考文献数
13

MPO-ANCA 関連血管炎(MPO-AAV)は,myeloperoxidase(MPO)を抗原とする抗好中球細胞質抗体(ANCA)の出現とともに,糸球体をはじめとする小型血管が侵される壊死性血管炎である。MPO-ANCA 自体の病原性が確認されているが,その産生機序は不明であった。我々は好中球細胞外トラップneutrophil extracellular traps(NETs)の異常がMPO-ANCA 産生の原因となることを報告した。活性化された好中球はNETs を形成する。NETs は重要な生体防御システムであるが,適切に処理されなければ,DNA とともに細胞外に放出されたMPO が自己抗原となり,MPO-ANCA 産生が誘導される。一方,MPO-ANCAにはNETs 誘導活性があるなど,MPO-AAV 患者ではNETs の過剰に陥りやすい状況があり,NETs とMPO-ANCA 介した悪循環が病態を形成している。
著者
木全 貴久 蓮井 正史 北尾 哲也 山内 壮作 下 智比古 田中 幸代 辻 章志 金子 一成
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.27-33, 2012-04-15 (Released:2012-12-22)
参考文献数
29
被引用文献数
1

近年,ステロイド依存性や頻回再発型のネフローゼ症候群に対する,リツキシマブ治療の有効性が相次いで報告され,難治性ネフローゼ症候群に対する新規治療薬として期待されているが,その投与法は確立していない。筆者らは「ネフローゼ症候群に対してリツキシマブを投与すると,末梢血B細胞は,平均100日間枯渇化するが,B細胞数の回復とともにネフローゼ症候群が再発する」との報告に基づいて,「リツキシマブ投与後3~4か月のB細胞数回復期に追加投与を行い,B細胞数を10個/μl以下に維持すれば,長期寛解を維持できるのではないか」と考え,リツキシマブ375mg/m2 (最大500mg) を3か月毎に4回反復投与する,という治療法の有効性と安全性の検討を行っている。本論文ではこのリツキシマブ反復投与法の自験例を紹介するとともに,難治性ネフローゼ症候群に対するリツキシマブ治療の文献的レビューを行う。
著者
藤村 順也 石森 真吾 神岡 一郎 沖田 空 親里 嘉展 西山 敦史 米谷 昌彦
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
pp.cr.2016.0090, (Released:2016-12-22)
参考文献数
21

インフルエンザウイルス (flu)ワクチン接種,flu 感染は小児特発性ネフローゼ症候群 (NS)再発の誘因となるがその詳細を検討した報告はない。今回,flu ワクチン接種または感染を契機としてNS 再発に至った小児6 例を報告する。flu ワクチン接種によるNS 再発が3 例 (以下,ワクチン再発例),flu 感染によるNS 再発が3 例 (以下,感染再発例)で全例が男児であった。flu ワクチン,感染後に全く再発のないNS 例を対象とし,その背景を検討した。ワクチン再発例では,ワクチン接種3 回全てをNS 初発または最終再発から6 か月未満の時期に行っており対照群 (15 回中3 回)よりも多かった。感染再発例においても,flu 感染3 回全てがNS 初発または最終再発から6 か月未満の時期で対照群 (5 回中0 回)よりも多かった。flu ワクチン,感染に伴ったNS 再発には,背景に症例毎の病勢の影響が存在するかもしれない。本検討は症例数が少なく,今後大規模な多施設共同研究が望まれる。
著者
林 麻子 早坂 格 鈴木 秀久 小林 徳雄 佐々木 聡
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.82-87, 2013-04-15 (Released:2013-10-15)
参考文献数
13

漢方薬の関与が考えられた薬剤性膀胱炎の2例を経験した。症例1は6歳女児。原因不明の肉眼的血尿と頻尿にて当科受診,検尿にて高度蛋白尿が認められた。MRIを含む画像検査にて一部隆起性の膀胱壁肥厚,粘膜肥厚がみられ腫瘍性病変との鑑別を要した。症例2は11歳女児で,2か月間続く血尿と蛋白尿,無菌性膿尿のため当科紹介受診となった。超音波検査にて膀胱壁肥厚を認めた。症例1は柴胡加竜骨牡蠣湯エキスを約3年前から,症例2は温清飲を約1年前から内服しており,両者とも薬剤中止により膀胱炎症状が徐々に改善し,画像検査所見も正常化した。薬剤性膀胱炎は多彩な臨床症状を呈し得る疾患であり,時に画像検査上,腫瘍病変と類似した膀胱の形態異常を示すことがあり,その診断,治療に際して十分に留意すべきであると思われた。
著者
井上 なつみ 山宮 麻里 田崎 優子 石川 さやか 篠崎 絵里 上野 和之 横山 忠史 前田 文恵 千田 裕美 井上 巳香 清水 正樹 前馬 秀昭 酒詰 忍 太田 和秀
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.137-140, 2014 (Released:2015-05-11)
参考文献数
10

シクロスポリンA(Cyclosporine A; CyA)の内服法の変更を徹底することで寛解維持が可能となったネフローゼ症候群(巣状糸球体硬化症)の症例を経験した。症例は12歳女児,7 歳時にネフローゼ症候群を発症し,他院でプレドニゾロン,CyA にて治療されていたが,再発を繰り返し完全寛解に至らず当院へ紹介された。CyA は,前医でも血中濃度を定期的に測定され,7.7 mg/kg 分2 でC0 70 ng/mℓ,C2 500 ng/mℓ程度であったが血中濃度は安定せず,上昇しにくいとのことであった。当院紹介後,前医での内服方法が食後投与で,食事時間や内服時間も不定であったことが判明した。そこで,当院では規則正しく食事をし,さらに食前30 分前(空腹時)の内服を徹底するよう指導した。その結果,5.5 mg/kg 分2 でC0 60~100 ng/mℓ,C2 600~1000 ng/mℓと血中濃度が上昇しCyA の投与量も減量できた。さらに,安定した血中濃度が得られ寛解を維持することも可能となった。CyA を投与する際には,定期的な血中濃度測定だけでなく,内服状況の確認とその指導が非常に大切だと思われた。
著者
灘井 雅行
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.111-123, 2006-11-15 (Released:2007-07-25)
参考文献数
8
被引用文献数
1

一般に,薬物の薬理効果および有害作用の発現強度は薬物の血中濃度によって決定されることから,十分な薬物の効果を得るためには,作用部位において適切な薬物濃度を維持することが必要である。また,個々の患者において,有効かつ安全な治療効果が期待できる血中薬物濃度に基づいて薬物投与設計を最適化することにより,有害作用発現の危険性を回避し,薬物治療の成績を向上することが可能である。しかし,生体に投与された薬物は体内で吸収,分布,代謝,排泄を受けることから血中の薬物濃度は経時的に変化する。したがって,患者における血中濃度の時間的推移(体内動態)を速度論(薬物速度論)に基づいて理解することが必要である。そこで本稿では,薬物速度論の基礎と,薬物速度論に基づいた薬物投与設計の構築,さらに治療薬物モニタリング(TDM)における個々の患者の血中薬物濃度を用いた薬物投与計画の妥当性の評価について概説する。
著者
白髪 宏司
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.129-133, 2015 (Released:2015-11-15)
参考文献数
4

要旨: 血液ガスの新しい分析方法を考案しそれについて述べた。その方法は,ペア解析法に基づく7 アクション法からなる。ペアとなる因子は血清Na とCl,血清K とpH,pHとpCO2,pCO2 とHCO3−,そしてアニオンギャップ計算に用いる因子である。7 アクション法をどのように進めるかについて詳細に述べた。ことに,血清(Na-Cl)値から酸塩基平衡異常の一部の病態が推測できる事実を強調した
著者
亀井 宏一 宮園 明典 佐藤 舞 石川 智朗 藤丸 拓也 小椋 雅夫 伊藤 秀一
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.179-186, 2011-11-15 (Released:2012-10-25)
参考文献数
34
被引用文献数
2

免疫抑制薬内服患者への生ワクチン接種は添付文書上では禁忌とされている。しかしながら,免疫抑制薬内服患者はウイルス感染症で致命的となるリスクが高く,接種が望ましいという意見もあり,予防接種ガイドラインでは禁忌にはなっていない。今回われわれは,免疫抑制薬内服中で,麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜについて酵素抗体法で (-) か (±) を示した腎疾患または膠原病患者に,当院倫理委員会承認後に患者毎に十分な説明を行い,生ワクチン接種を行い,抗体獲得率と有害事象について前向きに検討した。40名 (1~24歳) に,55接種 (MRワクチン22接種,水痘ワクチン18接種,おたふくかぜワクチン15接種) 施行した。抗体獲得率は,麻疹 (90%) と風疹 (93%) は高く,水痘 (44%) およびおたふくかぜ (43%) は低かった。2名に発熱,1名に発疹,1名にネフローゼの再発を認めたが,重篤な有害事象はなかった。免疫抑制薬内服中でも生ワクチン接種が有効である可能性が示唆された。
著者
底田 辰之 澤井 俊宏 岩井 勝 野村 康之 竹内 義博
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.55-59, 2007-04-15 (Released:2007-11-15)
参考文献数
10

症例は8歳,男児。3歳時に自閉症と診断され,養護学校に通学中である。平成17年11月16日,生来初めてのインフルエンザHAワクチンの接種を受けた。接種3日後より発熱があり,近医にて解熱剤,抗生剤を処方されていた。改善がないため再診したところ,強い炎症反応がみられたため入院となった。熱源不明のまま抗生剤投与を続けられたが,発熱の持続とともに急激な腎機能低下が判明したため当科に紹介入院となった。軽度の尿異常および尿中β2ミクログロブリンの著明な高値などから急性尿細管間質性腎炎を疑い,持続血液濾過透析を行いながらステロイドパルス療法を実施したところ,透析開始後6日目で利尿が得られ,以後順調に回復した。腎生検の結果から急性尿細管間質性腎炎であることを確認した。患児に投与された種々の薬剤を抗原としてリンパ球幼若化試験を実施したところ,インフルエンザHAワクチンの関与が疑われた。
著者
元吉 八重子 市川 家國
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.166-171, 2009-11-15 (Released:2010-05-31)
参考文献数
28

糸球体疾患において,高分子蛋白尿の量が多いほど末期腎不全へと移行するリスクが高く,蛋白尿は腎疾患の指標であるのみでなく,さらなる腎傷害の原因となる可能性がある。 糸球体から漏出した様々な蛋白質は,主にmegalinというレセプターを介したエンドサイトーシスにより管腔側から近位尿細管細胞へと取り込まれ,ライソソームへと運ばれて分解されるか,そのまま基底膜側へと運ばれる。それにともなって,MCP-1やRANTESなどの炎症に関わるメディエーターや,TGF-βなどの線維化に関わるメディエーターが尿細管間質に放出される。また,近位尿細管のアポトーシスも惹き起こされる。このように,漏出した蛋白質が直接的な尿細管傷害の起因となることによって悪循環を形成し,慢性腎不全を進行させている可能性がある。
著者
松村 千恵子 倉山 英昭 安齋 未知子 金本 勝義 伊藤 秀和 久野 正貴 長 雄一 本間 澄恵 石川 信泰 金澤 正樹 重田 みどり 窪田 和子 山口 淳一 池上 宏
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.194-203, 2014 (Released:2014-06-14)
参考文献数
30

千葉市3 歳児検尿システムでは,蛋白・潜血±以上,糖・白血球・亜硝酸塩+以上の1 次検尿陽性者に,2 次検尿と腎エコーを施行。1991~2011 年度154,456 名の精査陽性率は1.5%で,膀胱尿管逆流(VUR)16 名(血尿5,細菌尿11,尿単独3),アルポート症候群,ネフローゼ症候群,巣状分節状糸球体硬化症(FSGS),糸球体腎炎等が診断された。11,346 名の腎エコーで,先天性腎尿路奇形(CAKUT)92(0.8%),うちVUR 24 名(エコー単独11),両側低形成腎2,手術施行17 であった。VUR 全27 名中,VUR III 度以上の頻度は細菌尿例において非細菌尿例より有意に高かった(各々10/11,7/16,p<0.05)。10 名(7 名両側IV 度以上)は多発腎瘢痕を有し,うち7 名はエコー上腎サイズ異常を認めた。FSGS 1 名が末期腎不全に至った。千葉市3 歳児検尿システムはCAKUT 発見に有用と考えられた。
著者
小野 敦史 細矢 光亮 鈴木 奈緒子 木下 英俊 村井 弘通 前田 亮 菅野 修人 大原 信一郎 陶山 和秀 川崎 幸彦
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.159-163, 2017

<p>前立腺囊胞性疾患は,外表奇形の合併がない場合,幼少期に発見されることは稀な疾患である。今回我々は,尿路感染症を契機に画像検査で偶発的に発見された前立腺小室囊胞の1 例を経験した。症例は1 歳男児。発熱と排尿時の啼泣,異常な尿臭を主訴に当科を受診した。膿尿の他,腹部の造影CT 検査と造影MRI 検査で膀胱と直腸の間に長径約40 mm の囊胞性病変を認めた。抗菌薬による治療で尿路感染症は改善し,その後の膀胱尿道鏡検査で前立腺小室囊胞と診断された。抗菌薬の予防投与で経時的に囊胞は縮小し,画像検査で確認できなくなったため,外科的切除は行っていない。現在,予防内服中止から1 年以上経過したが,再発は認めていない。小児の尿路感染症では,しばしば尿路異常を合併する例があるため,発症時には腎尿路系の精査を行うことも多い。自験例のように,前立腺小室囊胞が尿路感染症の合併症の1 つとして関与することを念頭に置く必要がある。</p>
著者
中西 浩一
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.109-113, 2018

<p>WHO の「糸球体疾患の臨床分類」は,腎疾患管理において有用である。1) 急性腎炎症候群,2) 急速進行性腎炎症候群,3) 反復性または持続性血尿,4) 慢性腎炎症候群,5) ネフローゼ症候群の5 つのカテゴリーからなる分類である。本分類を使用するうえで最も重要なことの一つとして,それぞれのカテゴリーは病態であり,病名ではないことに留意する必要がある。特に,「急性腎炎症候群」と「急性腎炎」を混同してはいけない。本邦ではしばしば「急性糸球体腎炎」の「糸球体」がなく「急性腎炎」となっており,この言葉が日常の診療で「急性糸球体腎炎」として頻用されているため「急性腎炎症候群」と混同しやすく注意が必要である。すなわち,「急性腎炎症候群」は「急激に発症する肉眼的血尿,タンパク尿,高血圧,糸球体濾過値の低下,ナトリウムと水の貯留を特徴とする」病態であり,「急性腎炎」は「急性糸球体腎炎」を示す病名である。</p>
著者
石川 真紀子 清水 順也 金谷 誠久 白神 浩史 久保 俊英 中原 康雄 後藤 隆文
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.224-229, 2011-11-15 (Released:2012-10-25)
参考文献数
15

シスチン尿症は腎尿細管,小腸上皮におけるシスチンと二塩基性アミノ酸の吸収障害を本態とする疾患であり,尿路結石の頻回再発やそれに伴う腎不全への進展が問題となる。症例は,結石分析,尿中アミノ酸分析にてシスチン尿症と診断し,重曹による尿アルカリ化治療を行っていた2歳男児である。定期受診時に,顕微鏡的血尿と,超音波および腹部CTにて左水腎水尿管と左膀胱尿管移行部に巨大結石を認めた。体外衝撃波結石破砕術は適応外と判断し,開腹にて尿路結石除去術を施行し,術後は十分な尿量確保と尿アルカリ化の継続,シスチン易溶化薬剤の内服を開始した。シスチン尿症の管理においては尿路結石の再発予防が最も重要となるが,乳幼児期での十分な尿量確保や蛋白制限は困難なことが多い。本症例を通してシスチン尿症の適切な管理法について考察し報告する。
著者
小川 哲史 新井 英夫 渡部 登志雄 小林 靖子 森川 昭廣 丸山 健一 服部 浩明 江頭 徹
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.171-175, 1998

我々は,血漿アポEの高値および特徴的な腎組織像からリポ蛋白糸球体症と診断した4歳発症の女児例を経験した。本例は検索した範囲では世界最年少例と思われた。<br> 本症の病因の一つとしてリポ蛋白代謝異常が示唆されているため,患児のアポEの検索を行った。表現型と遺伝子型に不一致がみられたことより,さらに検索を進めたところ,アポE遺伝子exon 4において9塩基の欠失 (480-488nt) が認められた。これによって合成される患児のアポEは,3個のアミノ酸 (Arginine,Lysine,Leucine) が欠け,296個のアミノ酸から成る変異体であると推測された。また,現在無症状である母親および弟にも同遺伝子変異が確認された。この変異はアポEにおいてレセプターとの結合領域と考えられている部分に存在しており,これによって生じる変異体はリポ蛋白代謝異常さらには本症の発症に何らかの形で関与している可能性が示唆された。
著者
武輪 鈴子 谷口 奈穂 田中 幸代 中野 崇秀 蓮井 正史 金子 一成 野津 寛大
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.147-151, 2009-11-15 (Released:2010-05-31)
参考文献数
14

腎性低尿酸血症は,human urate transporter1の異常により低尿酸血症をきたす疾患で,運動後急性腎不全の合併が多い。その発症機序について二つの仮説,すなわち「急性尿酸腎症説」および「活性酸素関与説」が提唱されているが,詳細は不明である。 本論文では,腎性低尿酸血症の患者において運動後急性腎不全の合併しやすい理由を過去の文献を参考に考察するとともに,筆者らが経験した腎性低尿酸血症患児において,運動負荷の上で酸化ストレス度と抗酸化力を測定した結果を紹介した。患児は対照成人と同様,運動負荷直後から酸化ストレス度の上昇を示したが,抗酸化力は対照成人と異なり,運動負荷後,急激に低下した。すなわち対照に比して運動負荷時の酸化ストレス増大に見合う抗酸化力を有していないことが示唆された。以上より,酸化ストレス急増時の抗酸化力の相対的不足が腎性低尿酸血症における運動後急性腎不全発症に関与しているものと思われた。
著者
里村 憲一
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.250-255, 2014 (Released:2014-06-14)
参考文献数
41

成人期発症の非感染性慢性疾患の発症リスクは,遺伝的素因や成人における生活習慣だけでなく,胎児期や乳児期の環境に影響されるというDevelopmental Origins of Health and Disease(DOHaD)仮説は,多くの疫学調査や動物実験で支持されている。慢性腎臓病発症の危険性もまた,胎児期や乳児期の成育環境に影響される。胎児期・乳児期の成育環境が悪いとネフロン数が減少し,糸球体の高血圧や過ろ過が起こり,全身の高血圧,蛋白尿や腎機能障害を来すと考えられている。これまで,DOHaD仮説に関連する慢性腎臓病は成人期に発症すると考えられていた。しかし,我々は極~超低出生体重で出生した児では,小児期からDOHaD 仮説に基づく慢性腎臓病発症リスクが高いことを報告した。小児の慢性腎臓病においても,正確な診断や早期治療のために,胎児・乳幼時期の生育環境を詳しく聴取することが必要である。本邦での平均出生体重は減少を続け,2.5 kg 未満の低出生体重児が増加している。DOHaD 仮説に関連する疾患の増加が予想され,そのことは医学的のみならず,社会経済的にも大きな問題が近い将来起こることを意味している。国民に対してライフサイクルの視点を踏まえた健康教育を行うことが重要と思われる。
著者
上村 治
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.76-80, 2014 (Released:2015-05-11)
参考文献数
8
被引用文献数
2

1.腎機能が正常な人は,原尿量は体表面積×100 ℓ/日程度,尿量は体表面積ℓ/日程度が目安となる。2.クレアチニン(Cr)排泄は,約70%が糸球体濾過,約30%が尿細管分泌によって起こる。同時に測定したクレアチニンクリアランス(Ccr)はイヌリンクリアランス(Cin)の1.4 倍程度になる。3.Cr 測定がJaffe 法であった時代にCin とCcr が近かった理由は,血清Cr は酵素法のそれよりかなり高値であったが,尿Cr はあまり違わなかったからである。4.急性腎不全時に腎機能マーカーが腎機能に見合った値に安定するのにかかる日数は,その物質の分布容積で決まる。5.日本人小児の3 つの推算GFR を作成,簡易にGFRが判定できる。日本人小児のGFR 基準値も作成した。6.同じ腎機能を持った低年齢児と高年齢児の尿Cr 濃度が大きく異なるのは尿濃縮力の違いではなく血清Cr 濃度の違いによる。
著者
辻 祐一郎 阿部 祥英 三川 武志 板橋 家頭夫 酒井 糾
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.105-110, 2007-11-15 (Released:2008-05-12)
参考文献数
10

A群β溶血性連鎖球菌 (以下,溶連菌) 感染症は,小児科診療上最もよく接する細菌感染症である。その感染後に伴う合併症として,急性糸球体腎炎は,頻度も高く非常に重要な疾患である。しかし,臨床現場では,溶連菌感染後にどのように急性糸球体腎炎を検索し,診断するかは,個々の医師の判断に任されており,種々の方法がみられる。患児側からすると,診断した医師によって検尿の施行時期や回数,診断基準が異なることは混乱をきたす。今回は,小児腎臓病を専門としている医師のみでなく,小児一般臨床を行っている小児科医に対しアンケートを行い,検尿の施行時期,回数,診断基準などについて回答を得た。その回答から,多くの溶連菌感染後急性糸球体腎炎にたいする捉え方があることがわかった。今後,小児における分かりやすい溶連菌感染後急性糸球体腎炎の診断基準の作成や溶連菌感染後急性糸球体腎炎の発症予防を考慮した治療指針などの作成が望まれると思われた。