著者
安田 幸雄 黒田 尚宏 堀 有行 相野田 紀子 大原 義朗 鈴木 孝治
出版者
金沢医科大学
雑誌
金沢医科大学雑誌 (ISSN:03855759)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.408-412, 2005-12
被引用文献数
1

医学教育評価には客観試験が多用されている。中でも多肢選択問題(MCQ)は単位時間当たり多くの問題を出題できるため,信頼性が高い。また事前に合格ラインを決定できること,事後に問題の良否を検討できることも優れた特徴である。しかし,臨床能力の評価法としての妥当性はやや劣る。医師国家試験(国試)にはMCQが使用されており,信頼性の高さは認められている。また近年の出題基準の改訂により妥当性も向上していると考えられる。国試にはAタイプ,Kタイプ,Xタイプの3種類が使用されているが,Aタイプが最も知識レベルを正しく反映し,Kタイプが多くなるほど正答率は上がり,Xタイプが多くなるほど正答率は大きく下がると推測される。共用試験のコンピュータ試験(CBT)トライアルにはMCQのうち,AタイプとRタイプが使用されている。Rタイプは臨床問題解決能力を評価するのにより適した方法と考えられている。CBTはいつでもどこでもテストが受けられることを目指している。この条件を満たすためには,膨大な数の問題をプールしておくだけでなく,異なる問題セットで受験者を適正に評価する方法論が必要となる。項目反応理論(IRT)はこの目的で開発された新しいテスト理論で,受験者の絶対評価を目指している。このテストが実施されるようになると,医学教育は変貌を余儀なくされるものと予想される。