著者
松崎 哲也 安田 幸雄 野中 衆一
出版者
Japanese Association for Laboratory Animal Science
雑誌
Experimental Animals (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.337-341, 1989-10-01 (Released:2010-08-25)
参考文献数
6
被引用文献数
5 8

スナネズミの毛色に関する遺伝学的研究を行った。まず, 白色について遺伝分析を行うために, 白色と野生色とを交配しF1, F2およびバッククロス個体を得た。その結果, F1はすべて野生色, F2では野生色と白色が3: 1に, またバッククロスでは1: 1に分離した。次に, 本研究で発見された黒色 (非野生色) の個体をもちいて野生色の遺伝分析を行った。野生色と黒色との交配でF1およびF2を得た。F1はすべて野生色を, またF2では野生色と黒色が3: 1に分離した。なお, 交配実験で得られた各世代における毛色の性比を調べたが偏りはなかった。以上の結果は, 白色は常染色体性の劣性遺伝子支配を, また野生色は非野生色に対して優性で常染色体性の遺伝子支配を受けることを示した。また, 黒色個体の出現によって, brown遺伝子座の存在が示唆された。以上を総合すると, スナネズミの毛色はマウス・ラットと同様に3種類の基本遺伝子座, a (non-agouti/agouti) , b (brown/black) およびc (albino/colored) で説明できることを強く示唆した。
著者
安田 幸雄 黒田 尚宏 堀 有行 相野田 紀子 大原 義朗 鈴木 孝治
出版者
金沢医科大学
雑誌
金沢医科大学雑誌 (ISSN:03855759)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.408-412, 2005-12
被引用文献数
1

医学教育評価には客観試験が多用されている。中でも多肢選択問題(MCQ)は単位時間当たり多くの問題を出題できるため,信頼性が高い。また事前に合格ラインを決定できること,事後に問題の良否を検討できることも優れた特徴である。しかし,臨床能力の評価法としての妥当性はやや劣る。医師国家試験(国試)にはMCQが使用されており,信頼性の高さは認められている。また近年の出題基準の改訂により妥当性も向上していると考えられる。国試にはAタイプ,Kタイプ,Xタイプの3種類が使用されているが,Aタイプが最も知識レベルを正しく反映し,Kタイプが多くなるほど正答率は上がり,Xタイプが多くなるほど正答率は大きく下がると推測される。共用試験のコンピュータ試験(CBT)トライアルにはMCQのうち,AタイプとRタイプが使用されている。Rタイプは臨床問題解決能力を評価するのにより適した方法と考えられている。CBTはいつでもどこでもテストが受けられることを目指している。この条件を満たすためには,膨大な数の問題をプールしておくだけでなく,異なる問題セットで受験者を適正に評価する方法論が必要となる。項目反応理論(IRT)はこの目的で開発された新しいテスト理論で,受験者の絶対評価を目指している。このテストが実施されるようになると,医学教育は変貌を余儀なくされるものと予想される。