著者
小形 岳三郎 堀口 尚 松井 三和 大坪 理恵子
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
茨城県立医療大学紀要 (ISSN:13420038)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.89-99, 2001-03

茨城県民を対象にHelicobacter pylori (H.pylori)感染に起因する胃炎のプロフイルを知る目的で, 県内の広域中小医療機関にて施行された胃炎1291例, 胃びらんまたは胃潰瘍365例の生検材料を対象に, 病理形態的に細分類し, H.pylori菌の検出率を検討した。菌検出率は胃炎が54%,胃びらん(活動期)が87, %胃潰瘍(活動期)が65%であった。胃炎各型の菌検出率は, 軽度胃炎0%, 単純性胃炎17%, 表層性胃炎54%, 活動性胃炎98%, びらん性活動胃炎96%, 再生性胃炎52%, 化生胃炎17%, 萎縮性胃炎18%であった。この菌検出率の結果と年齢的発症率から検討した結果, 胃炎は次の3グループに分けられた。第一のグループ(軽度, 単純性胃炎)は,H.pylori感染とは無関係な胃炎で, 発症頻度は少く, 年齢とは無関係に一定の頻度にみられた。第二のグループ(表層性, 活動性, びらん性, 再生性胃炎)は, H.pylori感染と密接に関係する胃炎で, 20才以後年齢とともに増加し, 50才以降では胃炎の過半数を占めた。第三グループ(化生性, 萎縮性胃炎)は, H.pylori菌検出は低率であったが, その大部分が第ニグループの胃炎の終末像を示唆する病理像を示し, 第二のグループの増加とはやヽ遅れて年齢とともに増加した。以上, 茨城県民の壮年期以降にみられる胃炎の大部分はH.pylori感染に基づくことが示唆された。