著者
大場 美和子 中井 陽子 寅丸 真澄
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.159, pp.46-60, 2014 (Released:2017-03-21)
参考文献数
48

本研究では,会話データを対象とした多様な研究を「会話データ分析」という包括的な概念で捉え直し,学会誌『日本語教育』創刊号から153号で会話データ分析を行う研究論文170本を対象に,その研究の動向を年代別に分析した。まず,『日本語教育』中の(1)会話データ分析論文数の比率,(2)分析データ場面の傾向(母語場面,接触場面,両場面),(3)会話データの種類の傾向について年代別に集計した。次に,この集計結果に加え,各論文が分析項目として設定している項目も詳細に見つつ,当時の日本語教育の歴史的・社会的状況をふまえた総合的な分析を行った。この結果,80年代から会話データ分析の論文が増加し,分析も専門化・詳細化し,会話データ分析の研究成果を教育現場で活用することを主張する論文が増加していることが明らかとなった。今後は,より専門化・詳細化していく研究成果を多様化する教育現場で活用できるよう,会話データ分析の知見を多分野で共有し,連携していく重要性を主張する。
著者
大場 美和子 中井 陽子 土井 眞美
出版者
筑波大学留学生センター
雑誌
筑波大学留学生センター日本語教育論集 (ISSN:13481363)
巻号頁・発行日
no.18, pp.33-58, 2003

本研究は、会話への積極的な参加を示す方法の1つとして「残念ですね」を例にとり、日本人との接触場面において許容される、「あいづち+a[?]」としての使用条件の分析を行い、会話指導へつなげる方法を考察するものである。なお、本稿では、使用条件の分析結果について報告する。分析では、まず、①誰が「残念」か、②「残念」の感情を引き起こした原因の領域、③誰の行為/状況か、④人間関係という項目から、どのような状況で「残念ですね」が使用できるのかを分析した。この結果、①②の組み合わせから「残念ですね」が使用可能となる3つの型と③④との関係から、1)③誰の行為/状況か、2)④人間関係、3)「ね」の使用、に制限がみられた。次に、「残念ですね」が何に対して使用できるのかについても分析し、SL-SL、S-Lの場合は、ある「行為の不実現」、「行為の絡んでいない何かを失う/失った状況」の2つに対して、自分の感情として「残念ですね」を発話するのに対し、L-LはLのある「行為の不実現」に対してのみ、Lへの同情の気持ちとして「残念ですね」を発話できるということが明らかになった。