著者
トンプソン 美恵子 木下 直子 尹 智鉉 寅丸 真澄 毛利 貴美
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.174, pp.16-30, 2019-12-25 (Released:2021-12-26)
参考文献数
14

本研究は,日本語教育副専攻科目における日本語学習アドバイザー育成を目的とした授業の可能性と課題を明らかにするため,受講生たちが何を学び,彼らの認識がどのように変容していったのかをインタビュー調査し,M-GTAの手法で分析した。分析の結果,受講生は自律学習,傾聴,ラポール形成などの日本語学習アドバイジングの理論を意義付けていたが,留学生を助けることと自律学習を促すことの間でジレンマを感じる,留学生の相談に実際に応じる場面で理論の応用に困難を覚え,一定の正しい解決方法を求めるなど,理論に見る日本語学習支援の理想と留学生と向き合う実践の場での現実に葛藤していた。一方,授業で自らの自律学習を内省したり,ピアで議論したりすることを通じて,受講生は自身の自律学習を意識化し,長期的な視点で日本語学習支援を捉えるようになり,さらには授業で学んだことを日常生活と有機的に結び付け,応用への意欲を醸成していた。
著者
大場 美和子 中井 陽子 寅丸 真澄
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.159, pp.46-60, 2014 (Released:2017-03-21)
参考文献数
48

本研究では,会話データを対象とした多様な研究を「会話データ分析」という包括的な概念で捉え直し,学会誌『日本語教育』創刊号から153号で会話データ分析を行う研究論文170本を対象に,その研究の動向を年代別に分析した。まず,『日本語教育』中の(1)会話データ分析論文数の比率,(2)分析データ場面の傾向(母語場面,接触場面,両場面),(3)会話データの種類の傾向について年代別に集計した。次に,この集計結果に加え,各論文が分析項目として設定している項目も詳細に見つつ,当時の日本語教育の歴史的・社会的状況をふまえた総合的な分析を行った。この結果,80年代から会話データ分析の論文が増加し,分析も専門化・詳細化し,会話データ分析の研究成果を教育現場で活用することを主張する論文が増加していることが明らかとなった。今後は,より専門化・詳細化していく研究成果を多様化する教育現場で活用できるよう,会話データ分析の知見を多分野で共有し,連携していく重要性を主張する。
著者
寅丸 真澄 江森 悦子 佐藤 正則 重信 三和子 松本 明香 家根橋 伸子
出版者
言語文化教育研究学会:ALCE
雑誌
言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.240-248, 2018-12-31 (Released:2019-05-12)

本稿では,言語文化教育研究学会第 4回年次大会(2018年 3月)において筆者らが企画したパネル「留学生のキャリア意識とキャリア支援の『ずれ』を考える ―日本語学校・短大・大学(首都圏・地方)の留学生の語りから」における発表とディスカッションの内容を踏まえ,言語教育者の視点から,日本語学校,短期大学,四年制大学(首都圏・地方)における留学生のキャリア意識と現行のキャリア支援の「ずれ」のありようを報告し,その問題点を指摘する。まず,留学生の語りの事例から,各機関の留学生がどのようにキャリアを捉え行動しているのかを紹介し,言語教育の観点から留学生に必要とされるキャリア支援と実際に提供されているものとの「ずれ」を報告する。次に,「ずれ」の改善のため,言語教育者は留学生と教育機関の双方にどのように関わり,働きかけていけばよいのか,パネルで議論した内容を共有する。最後に,これらを踏まえ,「ずれ」を改善するための今後の課題を指摘する。