著者
大島 浩幸 山田 憲政
出版者
日本スポーツ心理学会
雑誌
スポーツ心理学研究 (ISSN:03887014)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.65-74, 2010

本研究の目的は,運動技術レベルと運動観察能力の関連を実験的に検証することであった.実験は,様々なスポーツにおいて一般的な運動でありながら熟練度によって優劣の差がある投球動作を試技として用いた.まず,第一の実験として40人の実験参加者を投球課題中の肘関節と手関節の時間的位相差を指標に各10人の2群に分けた.A群(上位群):肘関節の伸展角速度の増加が手関節の伸展角速度の増加より先に来る.B群(下位群):A群の関係が逆になる.次に第二の実験では,15セットのスティックピクチャーで構成される映像を,モデルとした熟練投球動作を基に時間的位相差の段階的操作により作成し,2群の各10人,計20人がモデルの実行した映像と作成した映像を観察した;それらの運動間の差異を検出したセット数を記録した.その結果,A群はB群よりも有意に早い段階で運動の差異を検出した(p<0.001).この結果は,運動技術レベルが高い実験参加者の運動観察における差異の検出精度は運動技術レベルが低い実験参加者の運動観察における差異の検出精度に比べ有意に高いということを示す.