著者
渡辺 栄 合田 邦雄 谷 勝英 八木 正 大川 健嗣 羽田 新
出版者
明治学院大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

最近のわが国における出稼ぎ労働の動向にみられる特徴の1つは、供給地が次第に特定の地域に集約されつつあるということであり、そしてこれらの地域は、その多くが“辺地"としての性格を強く有しているということである。これらの地域では、その地域経済の虚弱性の故に出稼ぎ以外に生業の方法が稀少なところから、出稼ぎ労働の主要な供給地となりながら、自らの辺地性は依然として脱却しえないでいるのが現状である。わが国における出稼ぎ労働問題がこうした地域に集約化されてきている以上、地域の辺地性と出稼ぎとの関係を究明することは極めて重要な課題であるといえよう。そこでわれわれは、北海道と沖縄とを対象にして、この問題に対する実証的な研究を試みたのである。北海道では、恵山町御崎地区および椴法華村銚子地区を対象に調査票による面接調査を実施し、沖縄では、沖縄本島および宮古島を中心に関係機関や出稼ぎ労働者に対し面接聴取調査を実施した。北海道における出稼ぎ多発地は日本海側と渡島半島に集中しているが、いずれも漁業を生業とする町村が多い。対家地も同様であるが、地形的に平坦地が多くないため、零細な漁家においては漁閑期を出稼ぎに頼らざるをえない。うにとこんぶの採取期を除いて出稼ぎというかたちが多く、又、出稼ぎの専業化も進行している。沖縄の場合、全体的に地場産業の育成が十分に図れていないため、出稼ぎは必要不可欠のものとなっており、最近では実数も増加している。沖縄からの出稼ぎは若年層が多く、目的意識をいだいて出る者が多いといわれるものの、本土に定着することは少ない。その主な要因としては、本土との賃金格差と風土のちがいを指摘することができよう。