著者
長谷部 佳世子 長谷川 明子 井口 敏子 大月 洋 渡邊 好政
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.115-118, 1994-12-31 (Released:2009-10-29)
参考文献数
3

眼精疲労の治療予後を左右すると思われる要因について検討するために,1990年1月から1992年12月の3年間に眼精疲労症状を主訴として当科を受診した215例を対象に,眼位ずれの有無で2群に分類し,初診時の年齢と他科領域の疾患を合併する割合を比較した.さらに,アンケートによる治療予後の追跡調査をおこなった.その結果,1.眼位ずれのない群では,眼位ずれのある群に比べて,40歳以上の者が有意に多く,他科領域の疾患を有する者も有意に多かった.2.眼位ずれのある群の方が,治療予後が良好であった.3.予後不良例では,肉体的・精神的ストレスを感じている例や,体調と眼の調子が関係あると感じている例が多かった.以上のことより,眼精疲労患者の治療においては,個々の症例の環境や他科領域の疾患に注意を払う必要があると思われる.
著者
野中 文貴 永山 幹夫 松尾 俊彦 白神 史雄 大月 洋
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.158-162, 2001-02-15

シートベルト着用下でのエアバッグ作動による眼外傷を2例経験した。症例1は助手席にいた62歳の男性。左眼は角膜内皮障害,虹彩離断,水晶体脱臼,硝子体出血,外傷性黄斑円孔を生じており緊急に手術した。術後,矯正視力は右眼1.2,左眼0.05であった。症例2は運転手の62歳,男性。左眼の角膜びらん,角膜内皮障害,網膜振盪,黄斑浮腫を認めた。受傷後1か月の左眼矯正視力は0.9であった。2例とも左眼のほうが右眼より障害が高度であり,また角膜内皮障害が強かった。エアバッグ眼外傷の予後は比較的に良好のことが多いが,症例1のように視力改善が不十分となる場合もある。今後,衝突安全装置のさらなる改善が望まれる。
著者
守本 典子 松尾 俊彦 大月 洋
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集 第7回日本ロービジョン学会学術総会・第15回視覚障害リハビリテーション研究発表大会合同会議 プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
pp.70, 2006 (Released:2007-05-09)

目的:網膜色素変性の白内障手術の有効性と危険性、および患者のQOLの変化と満足度を調べること。 方法:岡山大学医学部・歯学部附属病院眼科にて、平成16年6月から18年3月までに白内障手術(無着色眼内レンズ挿入)を施行した12人21眼について、受診経過、手術合併症、視力変化などを診療録から検索し、術前の情報、見え方の変化、生活の変化、期待との乖離、手術して良かったか、などを患者から聞き取った。 結果:ロービジョン外来で初めて白内障手術を勧められたものが4人あった。難しいから、改善が期待できないからと、手術を保留にされていたものが1人ずつあった。同病の仲間からネガティブな情報を得ていたものが2人あった。しかし、全員が病態をよく理解し、主治医を信頼して手術を受けていた。矯正視力は改善17眼、不変2眼、低下2眼であった。自覚的変化は、視力の改善10人、不変2人、羞明の改善4人、悪化8人であった。また、読み能力は改善8人、不変4人、移動能力は改善6人、不変6人、日常生活全般では改善10人、不変2人であった。合併症は、後発白内障(レーザー治療)が7眼に生じ、一過性高眼圧(薬物治療)が1眼、前嚢収縮(レーザー治療)が1眼あったが、治療が奏効した。期待との乖離は、期待以上7人、期待通り2人、期待以下3人であった。全員が「手術して良かった」と回答した。 結論:1)8割以上で日常生活が改善し、悪化したものはなかった。2)後発白内障以外の合併症は少なく、重篤なものはなかった。3)羞明の増強が多かったため、今後は着色眼内レンズに変更する。4)「期待通り」より「期待以上」が多かった背景に、手術に消極的な医師と過度に不安を抱く患者の問題があると思われ、予後推定の手がかりを得るための検査法の探求と定期受診の徹底が望まれる。5)インフォームド・コンセントができていれば、結果に関係なく、満足が得られる。