著者
守本 典子
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.8, pp.26, 2007

<br>【目的】網膜色素変性(RP)児の親(以下、親)に対し、当ロービジョンクリニックでは疾患の説明、関連情報の提供、視覚障害者の交流会の案内などを行ってきたが、なかなか積極的な姿勢が見られず、親子の心を支えきれていない。そこで、親を対象とする交流会(以下、「親の集い」)を試み、より効果的な支援を模索する。<br><br>【方法】岡山大学病院眼科外来で2回、「親の集い」を開催した。体験談と助言を得るため、参加予定者の状況から適切と思われる大人のRP患者(以下、RP成人)を毎回3名ずつ招待し、参考資料も配付した。その後、参加した親5名(延べ6名)から、電子メールで感想と要望をもらった。<br><br>【結果】病名告知から間のない親は、同じ立場の親と自立したRP成人に会って思考が前向きになり、気持ちを聞いてもらって楽になったと言う。告知後、長く経過していた親は、子どもの将来を考える手がかりが得られ、思いを語ることで気持ちの整理ができたと答えた。「子への告知」の問題は永遠のテーマとなったが、参加者全員が「親の集い」を有意義だったと評価し、RP成人を招く現在の形での継続を希望した。<br><br>【結論】今回は、人選されたRP成人が同席したことで、病名告知から間もない親の悲嘆と孤立の時期がより短くなり、告知後の経過が長い親には次の段階へ進む絶好の機会となった。伝言でない生の声には説得力がある上、1対1では自分への気遣いから加減しているかもしれないと疑いがちだが、皆の前で語られる言葉は真実として吸収しやすいものと思われた。眼科医は患者の個人情報と患者およびその家族からの信頼を得やすいため、個別性と共通性に配慮した企画を実現しやすい立場にある。今後も、ロービジョンクリニックや視覚障害者の交流会を通して築いた人脈を生かし、「親の集い」を発展させていくことで、親、ひいてはRP児の幸福につなげたい。
著者
守本 典子 松尾 俊彦 大月 洋
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集 第7回日本ロービジョン学会学術総会・第15回視覚障害リハビリテーション研究発表大会合同会議 プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
pp.70, 2006 (Released:2007-05-09)

目的:網膜色素変性の白内障手術の有効性と危険性、および患者のQOLの変化と満足度を調べること。 方法:岡山大学医学部・歯学部附属病院眼科にて、平成16年6月から18年3月までに白内障手術(無着色眼内レンズ挿入)を施行した12人21眼について、受診経過、手術合併症、視力変化などを診療録から検索し、術前の情報、見え方の変化、生活の変化、期待との乖離、手術して良かったか、などを患者から聞き取った。 結果:ロービジョン外来で初めて白内障手術を勧められたものが4人あった。難しいから、改善が期待できないからと、手術を保留にされていたものが1人ずつあった。同病の仲間からネガティブな情報を得ていたものが2人あった。しかし、全員が病態をよく理解し、主治医を信頼して手術を受けていた。矯正視力は改善17眼、不変2眼、低下2眼であった。自覚的変化は、視力の改善10人、不変2人、羞明の改善4人、悪化8人であった。また、読み能力は改善8人、不変4人、移動能力は改善6人、不変6人、日常生活全般では改善10人、不変2人であった。合併症は、後発白内障(レーザー治療)が7眼に生じ、一過性高眼圧(薬物治療)が1眼、前嚢収縮(レーザー治療)が1眼あったが、治療が奏効した。期待との乖離は、期待以上7人、期待通り2人、期待以下3人であった。全員が「手術して良かった」と回答した。 結論:1)8割以上で日常生活が改善し、悪化したものはなかった。2)後発白内障以外の合併症は少なく、重篤なものはなかった。3)羞明の増強が多かったため、今後は着色眼内レンズに変更する。4)「期待通り」より「期待以上」が多かった背景に、手術に消極的な医師と過度に不安を抱く患者の問題があると思われ、予後推定の手がかりを得るための検査法の探求と定期受診の徹底が望まれる。5)インフォームド・コンセントができていれば、結果に関係なく、満足が得られる。